糖質制限の理解を深めるために読んでみた

糖質制限を始めて2ヶ月近く経ちました。

糖質制限をすると、体重がみるみる減っていくので、ダイエットをしたい方にはおすすめの食事方法と言えます。でも、私は体重を落とそうと思っているわけではなく、もともと痩せ型なので、糖質制限を継続することで、体重が減っていくのは困りものなんですけどね。

糖質制限は、普段からたくさん糖質を摂りすぎていることが、体に良くないのではないかと思って始めたわけですが、やはり、継続するにあたっては理論的なことも知っておいた方が良いだろうと思い、糖質制限のことが書かれた1冊の本を読むことにしました。

もともとは糖尿病の治療法

私が読んだ糖質制限の本は、京都の高雄病院の医師である江部康二先生の著書「糖質オフ!健康法」です。

糖質制限は、高雄病院で1999年から開始した食事療法で、糖尿病や肥満などの生活習慣病の改善のために行われています。この食事療法は、生活習慣病の改善に効果があり、その後、現在にいたるまで続けられています。

江部先生自身も最初は、糖質制限に懐疑的だったそうですが、糖質制限を行った患者さんの健康状態が良くなったことから、その効果を実感したそうです。

現在、江部先生自身も10年以上糖質制限を続けているとのこと。江部先生が糖質制限を始めたのは、ご自身も糖尿病になったことが理由です。

江部先生は、普段から健康に注意して、食事は玄米魚菜食で、脂質が多いものを控えていました。運動に関しては、週に2回から3回のテニスに加えてジム通いもしていたそうです。

この生活をみると、現代人にとって理想的なものと思えますし、健康意識が高い方は、こういった生活を送っているのではないでしょうか。でも、江部先生は現代でいう健康的な生活をしていたにも関わらず40歳を過ぎたあたりから太り出し、52歳で糖尿病になっていることに気付いたそうです。

とは言え、江部先生は、ご飯をおかわりしたり、テニス後にビールや日本酒を飲まれており、これが肥満と糖尿病の原因だったと振り返っています。

それでも、このくらいなら普通の人でもやっていることでしょうし、そもそも米をちょっと多く食べたくらいで健康を害すなんてことは思わないでしょう。

糖質の摂取と糖尿病の関係

そして、自身が糖尿病であることを知った江部先生は、糖質制限を始めます。

糖質を多く摂取すると、血糖値が急上昇します。血糖値が上がると、血管の内側の壁が傷つき、血液もドロドロになってしまいます。そこで、体は、膵臓からインスリンを分泌して糖を脂肪に変えて体に溜め込みます。こうすることで、血糖値が下がり、糖というエネルギーを体内に保存できるわけですね。

しかし、頻繁に血糖値が急上昇するような食事を続けていると、膵臓が疲れてしまい、やがてはインスリンが出なくなったり、体がインスリンに慣れてしまって効き目が弱くなったりします。こうなると、高血糖の状態が続き、血液はドロドロのまま。これが糖尿病です。

糖尿病は、様々な合併症を引き起こします。失明、足の指が壊疽(えそ)して切断しなければならない、腎不全になるといったことが合併症の主な例です。

糖尿病が、糖質を多く摂取することで起こるわけですから、普段から糖質の摂取を控えれば、糖尿病のリスクを下げることができ、また、糖尿病になっても糖質制限をすることで悪化を食い止めることが期待できるわけですね。

アメリカの貧困層の肥満は糖質過剰摂取が原因?

「糖質オフ!健康法」の中にニューヨークでソーダ戦争なるものが起こったことが紹介されていました。

ニューヨークでは、2010年に増え続ける医療費を抑えるために肥満の原因となる砂糖入り炭酸飲料の消費を少なくしようと試みました。アメリカでは、貧しい家庭に食品の購入に使えるクーポンが支給されるのですが、このクーポンで砂糖入り炭酸飲料を買えないようにしようとニューヨーク市長が提案したわけです。

アメリカでは、貧困層の糖尿病患者の数が富裕層の4倍にもなるので、これを抑えようというのがそのねらいです。

しかし、当然ながら飲料業界から強い反発があり、その議論がまるで戦争のような状況だったことからソーダ戦争と呼ばれているそうです。

アメリカの貧しい家庭の子供たちに肥満が多いということは、堤未果さんの著書「ルポ 貧困大国アメリカ」でも指摘されています。貧しい家庭では、クーポンを使って、できるだけ安く多くの食料を求めるため、どうしてもポテトチップスやピザなどを選ぶ傾向があるそうです。また、貧しい家庭の子供たちは、チョコレート入りの飲料もよく飲むことから太りやすいとも述べられていました。

この本は、数年前に読んだので、内容は忘れているところもありますが、当時は、ポテトチップスやピザには油が多く使われているから、それで太るのだろうと思っていたのですが、よくよく考えると、どちらも糖質がたっぷり入った食べ物なんですよね。

脂質にばかり意識が行ってしまって、糖質の過剰摂取になっていることに気づきませんでした。

脂肪が燃えて痩せやすい体へ

糖質制限は血糖値の急上昇を抑える食事療法ですが、他にもいろいろと建康にとって良い副次的な効果があります。

そのひとつが、脂肪が燃えて痩せやすい体になるということです。

人間は、ブドウ糖(糖質)と脂肪をエネルギーとして使います。普段から大量に糖質を摂取している現代人は、ブドウ糖を優先的に消費する体となってしまっているので、脂肪を効率的に使うことが難しくなっています。

しかし、糖質制限をすると、脂肪を優先的に消費するようになります。これが痩せやすい体になるということです。

以前に1日1食で有名な医師の南雲吉則先生がテレビ番組で、「人間の体はハイブリッドカーのようなもので、糖質を摂取すると糖質をエネルギーとして優先的に消費し、糖質を摂取しなければ、体内の脂肪をエネルギーとして消費する」といったことをおっしゃっていました。

つまり、消費する順番は、ブドウ糖が先で脂肪は後ということですね。そうすると、どんなに脂質の摂取を控えても、糖質を多く摂取してしまっては、脂肪をエネルギーとして使うことはなく、体内に溜め続けることになるわけです。そればかりか、血糖値を急激に上げると、糖質がインスリンによって脂肪に変えられてしまいますし、糖質を多く摂りすぎた場合も脂肪として蓄えられてしまいます。

人間の本来のエネルギーは脂肪であり、ブドウ糖は予備のエネルギーです。普段から、人間本来のエネルギーである脂肪を使うようにしておけば、自然と痩せやすい体へと変わります。

その状態を維持するのが糖質制限なわけです。

糖質制限は、人体にエネルギー革命を起こす食事療法と言えますね。

糖質制限は各人によっていろいろとやり方がある

江部先生および高雄病院がすすめる糖質制限には、スーパー、スタンダード、プチの3段階あります。

スーパーは、全ての食事から糖質を多く含む米、パン、麺類、イモ類を省く本格的な糖質制限です。スタンダードは、3食のうち1食だけ米やパンといった主食を摂取する方法で、プチは1食だけ糖質制限を行う方法です。

もちろん効果は、スーパーが最も高いわけですが、プチでも従来の食生活と比較すると、血糖値の急上昇の回数を減らすことができるので、体への負担が少なくなります。まずは、プチから始めてスタンダード、スーパーと移行するのも良いですし、ダイエット目的なら最初にスーパーで目標体重まで落とし、その後、スタンダードやプチに変えて、体型を維持するというのもありです。

これもテレビ番組の内容なのですが、ロングブレスダイエットで知られる俳優の美木良介さんが、3食のうち夕食だけは炭水化物を抜き、普段の食事の中で良質なタンパク質を摂取すると良いといったことをおっしゃっていました。

炭水化物は糖質と食物繊維の総称なので、夕食だけ炭水化物を抜くのはプチ糖質制限と同じですね。また、良質なタンパク質を摂取することも糖質制限と共通します。

糖質制限の場合、糖質以外は特に食事制限はありません、なので、タンパク質や脂質は気にせずに食べることができます。ただし、食べ過ぎにならないようにすることは言うまでもありません。

美木さんがいう良質なタンパク質とは何なのか、具体的には語られていませんでしたが、プロテインスコアという指標からは、卵、サンマ、イワシ、鶏肉、豚肉が必須アミノ酸がバランスよく含まれた良質なタンパク質ということになります。

江部先生の著書の中では、他にも納豆、チーズ、ナッツ類を活用するのも良いと述べられていますね。

スロトレと糖質制限の親和性

先ほども述べましたが、糖質制限は、エネルギーをブドウ糖から脂肪に変える食事法です。糖質制限を続けていると、自然と脂肪を燃焼しやすい体に変わっていきます。

これってスロトレのダイエット効果に似ていますよね?

スロトレは、筋肉を付けて基礎代謝を高め、それにより脂肪が燃焼しやすい体を作ることができるといわれています。スロトレだけでなく、どの筋トレでも筋肉量が増えるので、太りにくい体になります。

特にスロトレは、ゆっくりと筋トレを行うことで、脂肪の分解に効果的な成長ホルモンの分泌を促しますので、糖質制限と組み合わせることで、より高いダイエット効果を得ることができるのではないかと思います。

これは、私がそう思うだけなので、実際のところはどうなのかわかりませんが、糖質制限もスロトレも脂肪の燃焼に効果的なのは事実のようです。

糖質制限を阻害するもの

さて、糖質制限を続けていると、甘いものや炭水化物を食べたくなることがあります。

私自身は今のところ、そういった誘惑に惑わされないのですが、もともと甘いものが好きな人、パンや麺類が好きな人にとっては糖質制限が苦になることもあるでしょう。

「糖質オフ!健康法」の中に炭水化物依存症なる言葉が出てきます。無性に甘いものや糖質が多く含まれた食べ物を食べたくなる場合は、炭水化物依存症になっているのかもしれません。とは言え、こういった衝動に駆られたときは、血糖値をほとんど上げない人工甘味料や糖質を抑えたパンなどもあるようなので、そういったものを利用すると良いでしょう。

また、最初からスーパー糖質制限をしなくても、スタンダードでもプチでも、できる範囲で糖質を抑えれば問題ないと思います。

茶わん1杯のご飯を150gとすると、その3分の1、つまり、50gも糖質を摂取したことになります。例え1回の食事だけでもご飯を抜けば、糖質の摂取を50g抑えられるわけですから、コーヒーや紅茶に5g程度の砂糖を入れて飲んだとしても、全体で45gの糖質摂取を抑えることができます。

なので、絶対に糖質を摂取したらダメなんだと固く考える必要はなく、今までの食生活と比較して、糖質摂取量を減らせれば、それで問題ないくらいの気持ちで始めても良いのではないでしょうか。

こういった自分自身の誘惑よりも、糖質制限を阻害するものが他にあります。

それは、家族の理解を得られないことです。

私の場合、糖質を抜いて体重が減ってきているのですから、これ以上減らさないためにタンパク質や脂質を多めに摂取しようと思っているのですが、家族には、こういった食事は体に悪いという先入観があるので、なかなか理解してもらえません。

特に脂質は悪だという固定観念は、変えることができないようです。

そのため、野菜を多く食べているのですが、それでは体重を維持するのが難しいですね。脂質も以前よりかは多めに摂っているのですが、少しずつ体重が減っています。

目の前で痩せていってる人間がいるという事実を見ているのに、脂質は太るからダメだという固定観念がなくならないのですから、詰め込み教育の弊害は大きいなと感じますね。

なお、江部先生はブログも書いています。

糖質制限のことが詳しく書かれているので、参考になりますよ。

ただ、ブログなので、日付順に記事が並んでおり、知りたいことがなかなか見つからないということがあります。そういう場合は、ブログに設置されている検索窓にキーワードを入れると簡単に探すことができますよ。

参考文献