理想的な食事のタイミングは筋トレの前?それとも後?

筋トレを続けていると、食事に関して疑問を持つことがよくあります。

私が特に疑問に思っていることは、食事のタイミングは筋トレの前が良いのか、それとも後が良いのかということです。体を動かす前にはエネルギーを補給すべきだとも思いますし、トレーニングで疲れた筋肉を修復するためには、運動後の食事の方が効果的とも思います。

筋力アップにとって、食事のタイミングは、いつが良いのでしょうか?

筋トレの専門家はエクササイズ前の食事を推奨

筋トレの専門家は、食事は筋トレの前の方が良いと述べています。すべての人がそういう見解ではないと思いますが、筋トレ前のエネルギー補給が大切と考えている方が多いようです。

例えば、プロのトレーナーの山本ケイイチさんは、著書の「仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか」で、以下のように述べています。

まず、筋肉をつくる目的でトレーニングする場合、トレーニング前にはごはんやパンなどの炭水化物を食べて、エネルギー源を補給しておくことだ。空腹でトレーニングをすると集中力が低下するし、場合によっては筋肉の分解がかえって早まってしまう。
食事をして5時間も6時間もたったところでトレーニングをするのは、時間が空きすぎだ。トレーニングの前にはアミノ酸を摂るとよいとよく言われれるが、それだけでは筋肉の分解を抑えられない。(132ページ)

エネルギー補給を事前にしておかないと集中力が低下し、空腹状態だと筋肉が分解されてしまうというのが、筋トレ前の食事を推奨する理由ですね。

また、筋トレの前に食事をするべきという言い方ではないですが、空腹時間が長くなるのは筋力アップに好ましくないという見解なのが、坂詰真二さんです。著書の「やってはいけない筋トレ」で以下のように述べています。

食事回数が少ないと空腹時間、つまり血糖値が下がった時間が長くなります。すると血糖値を上げるために複数のホルモンが分泌されますが、その一つ(糖質コルチコイド)が筋肉になるはずのタンパク質を分解して糖に変えてしまう(170~171ページ)

このような理由から、坂詰さんは、筋トレをする人は1日3回に分けて食事を摂るようにすすめています。

食事のタイミングとは少し違うのですが、関係する内容として、スロトレの考案者の石井直方先生は、糖質(炭水化物)を制限すると、筋肉が分解されるので問題だと「スロトレ完全版」の中で述べています。

炭水化物を制限して血糖値が下がったときに出る「グルカゴン」には筋肉を分解する作用があるのが問題です。(27ページ)

上の御三方が述べている内容は異なっていますが、空腹が続いている状態では、特に糖質を摂取してから時間が空くと、筋トレの筋力アップ効果が減少してしまうという点で共通しています。

細胞生物学から考えてみる

以前までは、私も上記の考え方に賛成だったのですが、糖質制限を始めてからは、考え方が変わっています。

空腹状態で筋トレをしたからと言って、筋肉が分解されるということは、そうそう起こらないように思います。また、筋トレ前に糖質を摂取しなければ、筋力アップの効果が得られないということもないと思います。

「カラー図解アメリカ版大学生物学の教科書第1巻細胞生物学」で、糖新生について解説されています。

糖質(グルコース)は、エネルギーとして使われますが、エネルギーとして使われるのは糖質だけではありません。脂質もタンパク質も分解されてエネルギーを供給することができます。タンパク質はグルコース合成の材料になります。だから、糖質を摂取しなくてもタンパク質があれば糖質を造りだせるんですね。これが糖新生です。

また、脂質もエネルギーとして利用されるので、わざわざ筋トレ前に糖質を摂取しなくても良いと思うんですよね。

空腹時に筋トレをすると、筋肉が減ってしまうという考え方に対しては、同書の中で、以下のような記述があるので、そういったことはないと思われます。

この糖新生という経路は、ほとんどの場合、タンパク質を分解して得られたアミノ酸を原料とする。十分な食料が得られなければ、タンパク質(糖新生の材料として)および脂肪(エネルギー源として)使わざるを得なくなる。こうした飢餓状態が数週間に及ぶと、貯蔵脂肪は底をつき、残された唯一のエネルギー源はタンパク質だけとなる。この時点で、筋肉のタンパク質や感染と戦うために用いられる抗体などの重要なタンパク質が分解され始める。(247ページ)

細胞生物学の立場から見れば、数時間、食事をしなかったからといって、筋肉が分解されるということはないということです。筋肉をエネルギーとして使うのは飢餓状態が長期間続き、貯蔵脂肪が枯渇した時なので、普段、1日に1回以上の食事をしている限りは、筋肉の分解は起こらないでしょう。

で、食事のタイミングは筋トレ前と後のどちらが効果的かということですが、やはり、よくわかりませんね。

ただ、言えることは、筋トレ前に食事をしなくても、筋肉が分解されて細くなるということは、細胞生物学の見地からはあり得ないということです。

なお、最初に紹介した御三方の著書は、筋トレについては参考になる部分がとても多いです。食事に関する部分は、また別の書籍を探してきて、参考になりそうだったら、このブログで紹介します。

参考文献