人間は野菜から栄養を補給できるのか?

野菜にはビタミンなどの栄養が豊富に含まれているから健康に良いと言われます。でも、野菜は9割くらいは水分なので、正味の栄養は1割程度しかありません。だから、お世辞にも栄養満点とは言えないと思うんですよね。

しかも、その1割程度しかない栄養だって人間はしっかりと吸収できているのか疑問です。

人間は植物が持つ細胞壁を壊せない

なぜ、このような疑問を感じるかというと、植物の細胞が細胞壁に覆われているからです。

細胞壁はセルロースという硬い物質でできています。このセルロースを人間は食べても胃腸で壊すことができません。ということは、野菜を食べたところで、その細胞に含まれている栄養を人間は摂取できないはずなんですよね。特に生野菜からの栄養補給はかなり難しいのではないでしょうか?これについては、マエダ薬品商事株式会社のホームページにも掲載されています。

  • マエダ薬品商事株式会社-四季の健康-『生野菜=健康』神話の崩壊 左記ページは閉鎖しています。

生で野菜を食べても栄養を補給できないのなら加熱して食べた方が良いということになります。

しかし、Wikipediaによれば、セルロースは冷水にも熱水にも溶けないし、25MPaの圧力のもと、結晶性のセルロースを水の中で320度まで加熱しないと無定形へと転移しないそうです。

このように見ていくと、野菜が栄養豊富だったとしても、人間は大して栄養を補給できないのではないでしょうか?もちろん、野菜の汁や果物の果汁にも栄養が含まれているので、それらを吸収はできるのでしょうが、重要な栄養は細胞内にある事を考えると、栄養学の本などに記載されている量の栄養を補給できないと思いますね。

草食動物も自力では植物から栄養を補給できない

興味深いのは、草食動物も自分たちの力では、植物から栄養を補給できないということです。牛や馬は、草ばかりを食べて生きているので、そこから栄養を補給しているはずなのですが、彼らもセルロースを分解する能力を持っていません。

では、どうやって草食動物は、植物から栄養を補給しているのでしょうか?

彼らの胃や腸にはセルロース分解菌という微生物が棲んでいます。トリディスニウムやチクロボスティウムと呼ばれる細菌が、そのセルロース分解菌です。つまり、草食動物はセルロース分解菌を体内で飼うことで牧草などの植物から栄養を吸収できているんですね。

しかし、セルロース分解菌は生まれた時から体内にいるわけではありません。例えば、馬の場合だと「馬の科学サラブレッドはなぜ速いか」という書籍で、以下のようにしてセルロース分解菌を体内に入れると述べられています。

これらの微生物は最初から馬の腸内に生息しているのではない。子馬が生後二週間ぐらいから母馬の新鮮な糞を少しずつ食べ始めるのをご存知だろうか。これは子馬が自身の体内に有用な微生物を少しずつ取りこんでいる姿なのである。(144ページ)

すなわち、人間が植物から栄養を補給しようと思えば、何らかの形で草食動物の糞からセルロース分解菌を体内に入れる必要があるということです。

また、加熱によってセルロースを破壊して栄養を補給する方法も考えられますが、ビタミンCは熱に弱いと言われているので、やはり植物からの栄養補給は難しいのではないでしょうか?

昔の日本人にはセルロース分解菌がいた?

しかし、江戸時代以前の日本人は、野菜中心の生活をしていたことから、野菜から栄養を補給していたと思うんですよね。

おそらく、昔の日本人の腸内にはセルロース分解菌がいたのではないかと思います。では、どうやってセルロース分解菌を体内に入れたのでしょうか?

考えられるのは、農耕用に飼育していた牛馬の糞尿を堆肥として畑にまき、そこに含まれているセルロース分解菌が野菜に付着していたということ。その野菜を毎日食べているうちに少しずつ腸内のセルロース分解菌の数が増えていき、次第に野菜から栄養を補給できる体質に変化したのではないかと想像します。

現代でも、青汁だけで生活している人がいます。そういった人たちも、何らかの形でセルロース分解菌を体内に入れることができたから、青汁から必要な栄養を補給できるようになったと考えられています。

私が、こんなことをなぜ考えるようになったかというと、前回の記事で書いたように割れていた卵を食べて食中毒になったからです。3日間ほど、食事は1食程度に抑え、野菜もほとんど食べていません。ビタミンCは貯蔵ができないからこまめに補給しないといけないと言われますが、3日間で補給したビタミンCなんてないに等しいんですよね。

それなのに体調が回復し、今では何の問題もありません。

そして、この機会にもう一度、細菌の本を読んでいろいろと勉強していたら、ふとセルロースを分解できない人間は野菜から栄養を補給できないのではないかと疑問に思った次第です。子供の頃から、野菜は健康に良いとか野菜には栄養が豊富だから、しっかりと食べないといけないと刷り込まれてきましたが、どうもこれは怪しいですね。

理系の大学生も、生物学の講義で植物細胞のことを習い、セルロースでできた細胞壁を動物は分解できないと教わっているはずです。それなのに講義が終わった後は、学食で野菜炒めや八宝菜なんかを食べているわけです。何の疑問も持たず。

これは、きっと幼いころから野菜を食べなければだめだと言われ続けてきたことで、講義で習った内容と普段の食事の関係を結びつけて考えられなくなっているのではないでしょうか?

論理的に物事を考えることができる理系の大学生でもそうなのですから、一般人や文系の学生だと、なかなか野菜を食べることは無意味かもしれないとは思いつかないはず。理屈に合わないことでも、しつこく言い聞かせられると、人はそれに何の疑問も持たなくなるのでしょう。

これが真のマインドコントロールなのかもしれません。

参考文献