脂質のカロリーとATPを計算してみる

前回の記事では、糖質のカロリーとアデノシン三リン酸(ATP)の産生量を計算してみました。

では、脂質のカロリーとATPはどのように計算するのか、それを知りたい方もいらっしゃるでしょう。ということで、今回の記事では、脂質のカロリーとATPの計算に挑戦してみます。

脂質は9.45kcal

脂質の物理的燃焼値は1グラム当たり9.45kcalとされています。

しかし、体への吸収率や体内での燃焼効率を考慮して、栄養学では脂質1グラムのカロリーを9kcalとしています。

脂質には種類がいろいろとありますが、ここではお腹周りや内臓にたくさん付いている中性脂肪(トリアシルグリセロール)のカロリーとATPを計算します。ちなみにATPとは、人間が運動や体温維持のために利用するエネルギーのことです。

中性脂肪は、グリセロールが1分子と脂肪酸が3分子くっついた物質です。そして、脂肪酸には、パルミチン酸やステアリン酸などたくさんあります。今回、計算の対象とするのは、グリセロール1分子とパルミチン酸3分子が結合したトリパルミチンです。

トリパルミチンのモル質量

トリパルミチンの1molのモル質量は、Wikipediaのトリパルミチンのページによると807.32グラムとなっています。

mol(モル)とは、原子の粒を「6.02×10²³」個集めた単位のことです。この「6.02×10²³」はアボガドロ定数といいます。

ちなみにモル質量は、元素周期表を見れば、化学式から計算できます。トリパルミチンの化学式は以下です。

  • C₅₁H₉₈O₆

この化学式は、炭素(C)が51個、水素(H)が98個、酸素(O)が6個くっついていることを表しています。

そして、元素周期表では、各原子1個当たりの原子量が記載されているので、それを使えばトリパルミチンのモル質量を計算できます。それぞれの原子量は以下のとおりです。

  • 炭素(C)=12.01
  • 水素(H)=1.008
  • 酸素(O)=16.00

この原子量に各原子の個数を乗じて合計すれば、トリパルミチンのモル質量が導き出せます。

  • 51個の炭素(C)=12.01×51=612.51
  • 98個の水素(H)=1.008×98=98.784
  • 6個の酸素(O)=16.00×6=96
  • 合計=807.294グラム

Wikipediaの807.32グラムと若干異なっていますが、これは元素周期表の端数処理の問題でしょうね。とりあえず、ここではモル質量の計算の仕方をさらっと説明しただけですので、無視しても構いません。モル質量はWikipediaを見れば載っていますから。

グリセロールとパルミチン酸のATP量

次にトリパルミチンを材料にして、どれだけのATPが作り出されるのかを見ていきます。

トリパルミチン1分子は、グリセロール1分子とパルミチン酸3分子からなります。

グリセロールは糖新生によってブドウ糖になります。ブドウ糖からは、解糖系で2分子、ミトコンドリアで26分子の合計38分子のATPが作り出されます。なお、ブドウ糖のATP産生量は32分子という説もありますが、ここでは38分子を採用します。

糖新生には6分子のATPを投入しなければならないので、グリセロールからは正味32分子のATPが作り出されます。

一方、パルミチン酸1分子からは、ミトコンドリアで129分子のATPが作り出されます。トリパルミチンはパルミチン酸が3分子くっついているので、3倍の387分子のATP産生量となります。

したがって、グリセロール1分子とパルミチン酸3分子から作り出されるATPの合計は419分子です。

トリパルミチン1グラムのATP量とカロリー

トリパルミチン1molの質量が807.32グラムで、ここから419分子のATPが作り出されるということは、トリパルミチン1グラム当たりのATP産生量は、0.519分子となります。

  • 419分子/807.32g=0.519分子

そして、ATP1分子のカロリーは7.3kcalなので、トリパルミチン1グラムから作り出されるATPのカロリーは3.79kcalとなります。

  • 0.519分子×7.3kcal=3.79kcal/g

脂質1グラムの物理的燃焼値9.45kcalと異なっていますね。

これも、糖質のカロリーとATPを計算した時と同じようにエネルギー効率が100%ではないという理由なのでしょう。本当にエネルギー効率が悪いのかどうかは、もっと調べてみないことにはわかりませんが。

参考文献