鉄分は体内でのエネルギー産生に重要な栄養素

人間に限らず多くの生物が、アデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれるエネルギーを体内で作り出して活動しています。

ATPは、糖質、脂質、タンパク質のいわゆる三大栄養素を主原料として作り出されますが、その他にビタミンB群などの細々とした材料もなければなりません。また、ATPを大量に作り出すためには、細胞内にあるミトコンドリアに酸素が供給されなければなりません。

普段、意識しなくても酸素を吸って二酸化炭素を吐き出していますから、多くの人が、生きていくために必要な酸素を体内に取り込めていると思っていることでしょう。でも、体の隅々に酸素を送るためには、ただ酸素を吸っているだけではダメで、食事からしっかりと鉄分を補給する必要があります。

鉄が不足すると酸欠になる

体内の酸素運搬を担っているのはヘモグロビンで、赤血球に含まれています。そして、ヘモグロビンを構成するヘムの中心部分に鉄があり酸素と結合しています。

もしも、鉄が不足していたら、各細胞への酸素供給ができなくなり、ミトコンドリアがATPを作り出せません。つまり、細胞がエネルギー不足に陥るわけです。鉄が不足して起こる代表的な病気に鉄欠乏性貧血があります。他に肩こりも鉄の不足が原因とされています。脳が酸欠状態となれば、めまいや立ちくらみも起こします。また、鉄が不足している人は、倦怠感を生じやすいともされています。

どんなに糖質、脂質、タンパク質をしっかりと食べていても、鉄が不足していては細胞が酸欠状態になるのでエネルギーを生み出せません。だから、日頃から意識的に鉄分が多い食品を食べるように心掛ける必要があります。

赤血球は酸素運搬に特化した細胞

先ほど、赤血球が酸素運搬に関わる細胞だと述べましたが、この赤血球は他の細胞と比べると、核がなかったり、ミトコンドリアが無かったりと変わった特徴を持っています。

最近、医師の山本佳奈先生の著書「貧血大国・日本」を読みました。その中に赤血球についての記述があったので引用します。

赤血球は極めて特殊な細胞で、核がありません。核には染色体があり、そこに含まれる遺伝子を発現させることで、さまざまなタンパク質をつくります。これがいわゆる「細胞の代謝活動」です。
赤血球には核がないので、タンパク質を自主的に合成することができません(これは、赤血球が代謝を抑制していることを意味しています)。さらに細胞質内にも、他の多くの細胞にはある器官が存在しません。
その代り、ヘモグロビンが細胞質の大部分を占めています。
これらの特性を考え合わせると、次のように言えるのではないでしょうか。
「赤血球は、普通の細胞が持つ機能を極端に抑えることで、ヘモグロビンをできるだけ多く抱え込もうとしている、つまり、酸素の運搬に特化した細胞である」と。(32~33ページ)

このブログの以下の過去記事で、赤血球は自分で酸素を消費してしまわないようにミトコンドリアを持っていないのではないかと書きましたが、山本先生の上の記述からすると、あながち間違ってはなさそうです。

「貧血大国・日本」では、我が国は鉄不足対策を行っていないことが述べられています。その結果、多くの女性が鉄不足に陥り、健康を害しているとのこと。女性は、月経や妊娠出産で多くの鉄を失いますから、意識的に鉄を補給しなければ、必ずと言っていいくらい鉄不足になります。

赤身の肉や青のりに多くの鉄が含まれている

肉や魚には、多くの鉄が含まれています。特に赤身の肉や魚に鉄がたくさん含まれている傾向があります。

鉄と言っても、ヘム鉄と非ヘム鉄があり、両者では吸収率に大きな差があります。ヘム鉄だと10~20%、非ヘム鉄だと1~6%程度の吸収率とされています。なので、積極的に摂取したいのはヘム鉄です。

ヘム鉄を多く含んでいるのは動物性食品で、非ヘム鉄を多く含んでいるのは植物性食品です。なので、鉄をしっかり補給するのなら、肉や魚から、それも赤身のものの方が良いでしょう。ただし、卵や乳製品は非ヘム鉄が多いので注意してください。

また、山本先生は、非ヘム鉄ではあるものの、青のりに多くの鉄が含まれているので、普段の食事で利用することをすすめています。鉄は、1日に1mg消費されますから、それを補おうと思うと、ヘム鉄で5~10mg、非ヘム鉄で17~100mgの摂取が必要です。青のりは、100グラム当たり70mg以上の鉄が含まれていますから、おかずにちょっと振り掛けるだけで、気軽に鉄を補給できます。

以下に青のりとアオサのビタミンとミネラルの含有量を示します。参考にしたのは、カロリーSlismです。推奨量は「カラー図解 栄養学の基本がわかる事典」の30歳から49歳の女性の推奨量を用いています。推奨量が記載されていなかった栄養素については、推定平均必要量や目安量を記載しています。

青のりとアオサのビタミンとミネラル
ビタミン 推奨量 青のり(2.5g) アオサ(3.0g)
A(ug) 700 35 6.6
D(ug) 5.5
E(mg) 6.0 0.06 0.03
K(ug) 150 0.08 0.15
B1(mg) 1.1 0.02 0
B2(mg) 1.2 0.04 0.01
ナイアシン(mg) 12 0.15 0.3
B6(mg) 1.2 0.01 0
B12(ug) 2.4 0.8 0.04
葉酸(ug) 240 6.5 5.4
パントテン酸(mg) 4 0.01 0.01
ビオチン(ug) 50 1.84
C(mg) 100 1 0.3
ミネラル 推奨量 青のり(2.5g) アオサ(3.0g)
ナトリウム(mg) 600 85 117
カリウム(mg) 2,000 19.25 96
カルシウム(mg) 650 18 14.7
マグネシウム(mg) 290 32.5 96
リン(mg) 800 9.5 4.8
鉄(mg) 6.5 1.87 0.16
亜鉛(mg) 8 0.07 0.04
銅(mg) 0.8 0.02 0.02
マンガン(mg) 3.5 0.33 0.51
ヨウ素(ug) 130 70
セレン(ug) 25 0.18
クロム(ug) 10 1.03
モリブデン(ug) 25 0.48
食物繊維(g)  0.96  0.87
糖質(g)  0.44  0.38

青のりは、たったの2.5グラム振り掛けるだけで、1.87mgの鉄を摂取できますから優秀ですね。似たような食材のアオサだと3グラム食べても、0.16mgしか鉄を摂取できません。

この表で、なぜアオサの成分も記載したかと言うと、この前、スーパーで青のりと間違えてアオサを買ったからです。

青のりが5グラムで約200円だったのに対して、アオサは15グラムで約100円と6分の1の値段でした。アオサには「青粉」と書いてあり、これを「青のり」と読み間違えたんですね。

でも、アオサも3グラム食べると、マグネシウムが96mg摂取できるので、この点では優秀な食材です。

それにしても、青のりは結構なお値段しますね。お好み焼き屋さんで、ドサッと青のりを振り掛けている方がいますが、あれをやられると、お店の利益を相当削られそうです。

鉄分を補給するなら、ヘム鉄のサプリメントの方が経済的じゃないですか。でも、サプリメントに頼りたくないという方なら、肉や魚に青のりを振り掛けて食べると良いでしょうね。

ちなみに非ヘム鉄は、動物性タンパク質やビタミンCと一緒に食べると吸収率が良くなります。焼き鳥などに青のりとレモン汁を振り掛けて食べると良さそうです。

参考文献