レバーを食べると痛風になるのか?プリン体も尿酸も体内で多く合成される。

私の家族の一人が痛風と診断されました。もともと肥満で、健康診断で尿酸値も高いと指摘されていたので、いずれは痛風になるかもしれないとは思っていたのですが。

私自身は痛風ではないのですが、家族で痛風になった者が出てくると、家庭内が、やたらと食事に注意するようになって困ります。

痛風は、尿酸が結晶化して足の指などに激しい痛みが出る病気です。尿酸はプリン体から合成されるので、普段の食事ではプリン体が多く含まれている食品を控えなければならないというのが、予防や治療には大切だとされています。特に鶏レバーや豚レバーには100グラム当たりで約300グラムのプリン体が含まれており、プリン体が極めて多い食品に分類されています。だから、鶏レバーを食べるのは禁止だと言うのですが、私は納得できません。

痛風にはビタミンA

痛風について、あれこれとネットで調べてみると、プリン体は、食事から吸収されるよりも体内で作られる量が多いようです。尿酸はプリン体からできますが、その8割が体内で作られるというのですから、食事の影響は、たったの2割でしかありません。

しかも、食品に含まれるプリン体は、腸で分解されて排泄されるというではないですか。

このようにちょっとネットで調べた情報だけでも、食事由来のプリン体が痛風の原因という理論は怪しくなってきます。

でも、ネットの情報が正しいとは限りませんから、もう少し調べる必要があります。ということで、いつものように三石巌先生にお伺いすることにしました。

三石先生の著書「医学常識はウソだらけ」を開くと、痛風についての記載がありました。三石先生によると、尿酸値が高いことは痛風の必要条件であっても十分条件ではないとのこと。そして、尿酸は体内の有害物質を除去する働きをするので、尿酸値を薬で下げると逆に健康を損ねるそうです。ちなみに活性酸素などの有害物質を除去するものを三石先生はスカベンジャーと呼んでいます。

尿酸値が高くても、痛風にならない人はいます。痛風が起こる仕組みさえ知っていれば、その答えは自ずとわかるとのこと。

血中の尿酸値が高くなると、尿酸がナトリウムと結合して針状の結晶になる。これが周囲の組織を傷つけて、その部分が炎症を起こすのである。逆に言えば、この針状血症ができなければ、尿酸値が高くても痛風にはならないことになる。そこでカギを握っているのが、糖タンパク(糖とタンパク質の複合体)だ。近くに糖タンパクがあると、尿酸はそちらと結合する。そのためナトリウムとは結晶化せず、痛風にならないのである。
ならば、痛風の予防策は尿酸値を下げることではない。尿酸値はそのままでも、体内で十分に糖タンパクを作れるようにしてやればいいわけである。そこで必要なのは、まず例によってタンパク質、さらに糖を作るためにビタミンAが欠かせない。この二つを食事から摂取することで、痛風は自力で克服できるのである。(76~77ページ)

この文章を読めば一目瞭然。痛風にならないためには、糖タンパクの合成に欠かせないタンパク質とビタミンAの摂取が大切だということです。

レバーにはビタミンAが大量に含まれている

レバーには、プリン体が多く含まれています。だから、レバーは痛風の原因になると言われます。しかし。レバーには、他の食品と比較にならないほど多くのビタミンAが含まれています。鶏レバーなんて、100グラム食べれば20日くらいはビタミンAを摂取しなくてもいいくらい、大量のビタミンAが含まれています。

他の食品では、卵もビタミンAが豊富なのですが、私の家族は卵はコレステロールが多いから食べるなと制限します。しかし、レバー制限や卵制限をすると、食事からのビタミンA摂取量が少なくなるので、体内で糖タンパクが作れなくなり、尿酸がナトリウムと結合して結晶ができやすくなるはずです。

私の家族の中で、レバーを食べるのは私だけ。そして痛風にもなってません。一方、痛風になった家族はレバーを一切食べません。レバーは冤罪じゃないですか?

三石先生は、こうもおっしゃってます。

尿酸値が高くなる人には、体内で尿酸を過剰に作ってしまうタイプと、余った尿酸を腎臓から排泄できないタイプとがある。いずれにしても一時的なものではなく、体質的な問題だ。したがって、薬で尿酸値を下げても根本的な解決にはならない。いつまでも薬の世話になりたくなかったら、体が持っている本来の機能を活かすような栄養を摂取する以外にないのである。(77ページ)

尿酸値が高くなるのは体質的な問題なのだから、その体質に合わせた栄養補給、つまり、高タンパクかつ高ビタミンAの食品を食べることが重要ということですね。

現代栄養学的には痛風対策はどうなるか

では、現代栄養学的には、痛風にならないためにどのような食事をすべきとなっているでしょうか?

川島由起子先生監修の「カラー図解 栄養学の基本がわかる事典」では、摂取エネルギーの適正化、プリン体を多く含む食品の制限、飲酒の適正化、尿のアルカリ化の促進、水分の十分な摂取、塩分を控える、栄養バランスの良い食事の7点が挙げられています。ここで、尿のアルカリ化は、野菜やいも類、海藻類をたくさん摂取して尿酸が尿に溶けやすくするようにすることです。

ここでも、プリン体が多く含まれる食品の摂取を控えることが挙げられていますが、それよりも大切なのは摂取エネルギーの適正化だそうです。

ここで気をつけたいのは、プリン体の摂取制限よりむしろ摂取エネルギーの適正化のほうが大切だということです。とりわけ肥満傾向にある人は、糖尿病治療に準じた摂取エネルギーの適正化が食生活の見直しの第一歩といえます。(197ページ)

現代栄養学的にも、まずは肥満の解消が重要となっていて、プリン体摂取はそれよりも優先度が落ちます。レバーのような高プリン体食は控えた方が良いとされてますけどね。

肥満解消に効果的なのは、米、パン、麺類、イモ類、甘い物を控える糖質制限です。カロリー制限ではありません。

糖質制限的にはどうか

糖尿病治療に糖質制限食を採用している医師の江部康二先生の著書「『糖質オフ!』健康法」にも、痛風についての記述があります。

尿酸値を上昇させる原因として、従来は肉の食べ過ぎやビールの飲み過ぎが挙げられていました。これらにはプリン体が多く含まれるからです。しかし最近の研究では、食事からとり込まれるプリン体よりも、体内で生産されるプリン体のほうが多いことがわかっています。
では、何が尿酸値を押し上げる原因となるのでしょう?痛風専門医であり、自らも痛風患者である鹿児島大学病院内科元教授の納光弘先生は、尿酸値を上げる原因として「ストレス・肥満・大量の飲酒・激しい運動・プリン体のとり過ぎ」の5つを挙げておられます。(192~193ページ)

この5つの原因は重要度の高い順に並んでいます。なんとプリン体のとり過ぎは重要度では5番目で、他に優先すべきものが4つもあるのです。

重要度の高いストレスは、職場や家庭環境をなかなか変えれない人もいて対策が難しいかもしれません。でも、2つ目の肥満は糖質制限で解消可能です。江部先生によると、糖質制限を始めると、尿酸値は、下がる人もいれば上がる人もおり、まったく変わらない人もいるそうです。でも、尿酸値が上がった人でも、半年から1年で落ち着くケースが多いようです。

家族の中で糖質制限をしてるのは私だけ。当然、肥満ではありません。お酒も最近は飲みませんし、スポーツ選手ではないので激しい運動もしてません。ストレスはどうでしょうね。自分ではよくわかりません。レバーを食べてプリン体を多く摂取していても、肥満や飲酒がなければ特に問題ないとなりそうなのですが、「プリン体が痛風の原因だ」という固定観念があると、どうしてもプリン体制限をしたくなるようです。

痛風になった本人も、糖質制限をするつもりはないみたいですから肥満の解消は難しいでしょうね。

そんなことより、私のスタミナ食である鶏レバーを制限するのは止めて欲しいです。

参考文献