栄養をバランスよく摂取するために1日30品目食べましょう。
こういう言葉を耳にしたことがあるという方は多いことでしょう。
確かに牛肉だけしか食べないよりも、野菜や果物なども含め30品目以上食べた方が、いろいろな栄養素を補給できるに違いありません。30品目以上食べれば、特定の栄養素だけが全く補給できていないということもなさそうです。
上のような言葉を解説しているホームページでも、大体、このようなことが書かれていますね。
でも、1日30品目というのは、栄養をバランスよく摂取するために提唱されたものではないと聞くと、驚きませんか。
1日30品目はリスク分散が目的
まず、最初に書いておきますが、1日30品目の「30」という数字には、深い意味はありません。おおよその目安という意味で使われていますので、1日29品目しか食べていないからといって悩む必要はありません。いや、この記事を読んだ後だと、食品の数に神経質になることはないということがわかることでしょう。
1日30品目という指標は、1985年に厚生省(現在の厚生労働省)が提唱したものです。
でも、1日30品目食べれば、栄養をバランスよく補給できるはずだという意味で提唱したものではありません。
実は、1日30品目というのは、ガンになるリスクを下げることが理由だったのです。これは結構驚きです。食品数を増やすとがんのリスクが下がるなんて知りませんでしたからね。
ところで、30品目とガンの間にいったいどのような因果関係があるのでしょうか。
これについては、分子栄養学を創設した三石巌先生の著書「医学常識はウソだらけ」の中に記述があります。
そもそも、厚生省が「一日三〇品目を」と提唱しはじめたのは、栄養のバランスを取ることを目指したものではなかった。偏った食生活をしていると、いつも食べている食品に発ガン物質のような体に悪い成分が含まれていた場合、それがどんどん蓄積されてしまう。逆に、食品の種類が多ければ、それだけリスクを分散できる。だから、なるべく数多くの食品を食べるべきだ、と考えたわけである。(205-206ページ)
ある食品に発ガン物質が多く含まれていて、それを知らずに食べ続ければガンにかかるリスクが高まってしまうから、そのリスクを下げましょうというのが1日30品目という指標だったわけですね。
もしも今は健康に問題のない食品とされているものでも、今後、研究が進んで、実はガンの原因になる食品だったということがわかるかもしれません。それがわかった時に、今まで毎日たくさんその食品を食べていたら、手遅れになってしまうことも考えられます。
さらに同書では、栄養のバランスは栄養学のカロリー計算からきたものではないかと述べています。
栄養学では、1日のカロリーは、50%を糖質、30%を脂質、20%をタンパク質という割合で摂取するのが望ましいとされています。このカロリーのバランスと栄養のバランスは似て非なるものなので、1日30品目を食べたからといって必要な栄養を補給できるとは限りません。むしろタンパク質が不足する危険が高まるとも述べられています。
リスク分散がリスクテイクになってしまうことも
1日30品目が、リスク分散のために提唱されたものだということは、三石先生だけでなく医師の帯津良一先生も述べられています。
作家の五木寛之さんとの対談集である「建康問答」の中では、以下のように記述されています。
国立がんセンターがすすめる、ガンを予防する食事は、三十品目くらい食べろというものです。そうすると発ガン性のあるものが混じっていても、薄まると考えたわけです。(中略)
だけど、考えようによっては、発ガン性のあるものが増える可能性もありますよね。(50ページ)
30品目の中の1品目に危険な食品があったとしても、食べた物全体に占める割合は少ないのでリスクを軽減できると考えられます。しかし、もしも今まで10品目しか食べておらず、その中に危険な食品が含まれていなければ、30品目食べることで危険な食品を摂取することになってしまいます。それは逆に率先してリスクを負っていることになるわけですね。
毎日30品目食べることは、多種多様な栄養を補給できるけれども、不足している栄養を十分に補給できるというわけではありません。また、発ガン物質の摂取割合を減らすことができる反面、多種の食品を口にすることで、少ない食品数を口にする場合と比較して、発ガン物質を体内に取り込んでしまう危険が高まります。
結局、1日30品目とか多種多様な食品を食べることと、健康な食生活とはあまり関係がなさそうですね。