40歳以上の方で、特定健診の案内が送られてきている方がいらっしゃるかと思います。
私のところに送られてきた案内には、30代後半から肥満と判定され、その後、何も健康に気を使わなかった男性が、高血圧、高中性脂肪、高血糖、心筋梗塞などの生活習慣病が次々と発覚し、60歳目前で体がぼろぼろになっている例が紹介されていました。
そして、こうならないように普段から健康に気をつかい、1年に1回は健康診断を受けましょうといったことが書かれています。確かにその通りだなと思います。でも、特定健診の案内に書かれている生活習慣の見直しの内容が、全然、生活習慣病の予防に役立たないことばかりなんですよね。
肥満を予防、改善するために
まず、生活習慣病を予防するためには、肥満にならないこと、肥満の方はそれを改善しなければなりません。
特定健診の案内に記載されている肥満の予防、改善のためのポイントを要約すると以下の3点です。
- バランスのよい食事を心がけ、1日3食、規則正しく食べる。
- 食事は八分目。
- 運動量を増やす
1日3食や規則正しく食べるという点を除いては、その通りでしょう。
しかし、案内に示されている食事の内容が、いわゆる一汁三菜で、主食、主菜、2つの副菜、汁物といったもの。主食のイラストが茶碗に入った白米なので、この時点で、一汁三菜では、肥満予防や改善は無理でしょうね。
正しい肥満の予防と改善は、米や小麦を常食しないこと。
これを指導しないことには、生活習慣病を予防することはできません。
脂質異常症を予防、改善するために
生活習慣病の原因としてやり玉にあげられるのが脂質です。
脂質異常症という言葉を見るだけで、脂質が体に悪いイメージを抱いてしまいますが、脂質には人間が絶対に食べ物から補給しなければならない必須脂肪酸が含まれているので、悪と決めつけるのはよくないですね。
案内で紹介されていた脂質異常症を予防し改善するポイントは以下の3点です。
- コレステロールを控え食物繊維を多く摂る
- 中性脂肪を減らすDHA、EPAが豊富な青魚を食べる
- 蒸したり煮たりして食品に含まれる脂を落とす
人間は必要なコレステロールの8割を体内で作り、2割を食品で賄っています、そして、余分なコレステロールは体外に排泄されるので、健常者がコレステロールを控える必要はありません。
また、中性脂肪を減らすのなら、米や小麦などに多く含まれる糖質の摂取を控える方が効果的です。糖質を摂取すればインスリンが追加分泌され、糖質を脂肪に変えて体に蓄えます、しかも、インスリンが追加分泌されている間は脂肪がエネルギーとして使われません。
脂質を摂取することが悪いのではなく、糖質を頻繁に摂取することが脂質異常症の原因なのです。
高血圧を予防、改善するために
高血圧も生活習慣病の原因となりますから、予防や改善が必要です。特定健診の案内では以下のような高血圧の予防法と改善法が紹介されています。
- 減塩
- 薄味
- 調味料は食品にかけずに、お皿に入れて「つけて」食べる
余分に摂取したナトリウム(塩分)は、体外に排泄される仕組みになっているので、細かく意識する必要はありません。また、高血圧はカリウムの摂取不足も指摘されているので、カリウムを多く含む食品を食べることも重要となってきます。
薄味や調味料の量を減らすという点は、効果があるのかどうか知りません。
ちなみに私は、肉を食べるときもお造りを食べるときも何もかけません。おかずを米と一緒に食べなければ、食材が持っている味をしっかりと感じることができるからです。米でおかずの味を薄めておいて、調味料をかけて味を濃くするのは変ですよね。
米やパンをおかずと一緒に食べなければ、自然と減塩、薄味になっていきます。
高血糖を予防、改善するために
この項目が、最もおかしいんですよね。案内では、以下の習慣を提案していますが、どれも高血糖の予防には役に立たないものばかりです。
- 毎日、有酸素運動をする
- 食事は野菜や海草など食物繊維が豊富なものから食べる
- 1口30回噛むことを目標にゆっくり食べる
そもそも高血糖の原因は、糖質が多く含まれている食品を食べること。
米や小麦といった糖質が多いものを食べた後にウォーキングやジョギングなどの有酸素運動をしても、一度、体内に入った糖質は血糖に変わるのですから、血糖値は上昇します。わざわざ、有酸素運動で血糖を代謝するよりも、最初から食べない方が高血糖の予防や改善には効果的です。
また、血糖値を上げるのは、基本的に糖質だけなのですから、食物繊維を食べるとか1口30回噛むとかは、高血糖の予防には直接関係がありません。
こうやって特定健診の案内を見ていくと、国は本気で国民の生活習慣病を予防したり改善したりする気があるようには思えませんね。
2035年には世界の糖尿病人口は約6億人になる
先日、国際糖尿病連合(IDF)が、2013年の世界の糖尿病人口が3億8200万人だったことを報告し、このままだと2035年には5億9200万人に達する見込みだということがニュースになりました。
世界保健機関(WHO)は、ジャンクフードを控えるように呼びかけていましたが、これだけでは糖尿病の増加を食い止めることはできないでしょう。
糖尿病の根本的な原因は、高糖質の食事を続けることなのですから、米、小麦、イモ、果物、砂糖の常食をやめるように勧告するべきです。もちろん、ジャンクフードもジャガイモを使ったものが多いので、これらの摂取を控えることで糖尿病の発症を遅らすことはできるのかもしれません。でも、糖質過剰摂取という根本的な原因を取り除かなければ、糖尿病患者は増え続けることでしょう。
おそらく、WHOもそれは知っているはずです。
でも、世界の食糧需給を考えると、直ちに米や小麦などの穀物を食べるなと警告すると、世界的な食糧危機を招く危険があるので、まずはジャンクフードから警告をしたんだと思うんですよね。
アメリカのカリフォルニア州では、糖分を多く含んだ飲料に肥満、糖尿病、虫歯の原因になることを記載すべきだという法案が提出されましたが否決されています。これが可決されていれば、日本でも、糖質過剰摂取に危機感を覚える人が出てきて、生活習慣病の予防につながっていたかもしれません。
飲料といえば、最近、某飲料メーカーから発売された缶コーヒーが、ブドウ糖詐欺そのものなんですよね。
モーニングコーヒーのような眠気をすっきりとさせるというのが売り文句なのですが、缶には、ブドウ糖1000mg配合といった文言が記載されています。
1g程度のブドウ糖を摂取しても体には大した影響を与えません。しかし、糖質を大量に摂取すると、反応性低血糖症になり逆に眠たくなる危険があるのですから、このような記載は、いかがなものかと思いますね。
最近、飲料メーカーは、糖質オフのものを売り出していますが、この缶コーヒーのメーカーは、その波に乗り遅れている感があります。糖質オフの飲料は主にお酒が多いのですが、このメーカーは清涼飲料水だけをつくっているので、どうしても、消費者の甘味料離れを防ぎたいのかもしれませんね。
ダイエットのために日々スロートレーニングに励んでいても、糖質を常食していると、その効果が減ってしまいますのでご注意を。
また、生活習慣の改善で、まず最初に取り組むべきは糖質制限です。肥満の予防や改善のためにスロトレを始めようと思っている方は、糖質制限も同時に行うと良いでしょう。