最近テレビの健康番組を見ていたら、頻尿予防には減塩が効果的だと解説していました。
塩分を摂りすぎると、のどが渇いて水をたくさん飲んでしまいます。そして、水分とともに塩分も過剰な分は尿として排泄されます。これが頻尿の理由だとのこと。
納得したようなしないような、モヤモヤとした感覚が残る説明です。
体液の塩分濃度は0.9%
人間の体液の塩分(ナトリウムや塩素などのミネラル)濃度は、0.9%で維持されています。
塩分濃度が高くなれば、腎臓で塩分濃度の濃い尿を作って排泄します。反対に塩分濃度が低い時には、水分が過剰なので、腎臓では塩分濃度の低い尿を作って排泄します。
つまり、腎臓がしっかりと機能していれば、塩分濃度が0.9%になるように調節するわけですから、体液の塩分濃度に応じた尿を作って水分を外に出すわけです。そう考えれば、塩分の摂り過ぎでも控え過ぎでも、水分の排泄が行われるので、減塩が必ずしも頻尿予防になるとは言えないのではないでしょうか?
このあたりのことについては、以前に下の記事で紹介しましたので、ご覧になってください。
インターネットで検索したところ、尿中のナトリウム濃度は、0.092%から0.506%程度のようです。しかし、これだと体液の塩分濃度が0.9%だから、0.9%以上の塩分濃度の尿を作れないので、上がった体液の塩分濃度を下げることができません。
体液は塩分濃度、尿に関してはナトリウム濃度で調べたので辻褄が合わないのかもしれません。尿についても、ナトリウム以外のミネラルを含んだ塩分濃度を調べる必要がありますが、検索してもわからなかったので、この記事では無視することにします。
尿の塩分濃度を簡単に計算してみる
例えば、体液が1,000mlで、その中に塩分が10g含まれていたとします。ここで1ml=1gと仮定すると、体液の塩分濃度は1.0%ですね。
ここで、体液を0.9%に調節するには、塩分濃度が1.0%より高い尿を作って外に出さなければなりません。もしも、塩分濃度2.0%の尿を作れるとしたら、排尿量は以下の計算式から約91mlとなるはずです。この時に排泄した尿の中には約1.8gの塩分が含まれることになります。そして残った体液909.1mlには、約8.18gの塩分が含まれているので、塩分濃度は0.9%となります。
- 排尿量=(1,000ml×(1.0%-0.9%)/(2.0%-0.9%))=90.9ml
- 排尿中の塩分量=90.9ml×2.0%=1.82g
- 残った体液の塩分量=909.1ml×0.9%=10.00g-1.82g=約8.18g
また、体液が1,000mlで、その中に塩分が8gしか含まれていなかった時には、排尿中の塩分濃度を0.1%とすると、以下の計算式から、排尿量125mlは、尿中の塩分量は0.13g、残った体液875mlの塩分量は約7.9gとなり、塩分濃度は0.9%に調節されます。
- 排尿量=(1,000ml×(0.8%-0.9%)/(0.1%-0.9%))=125ml
- 排尿中の塩分量=125ml×0.1%=0.13g
- 残った体液の塩分量=875ml×0.9%=8.00g-0.13g=約7.87g
上の計算は仮定の話なので、実際の尿中の塩分濃度とは異なります。でも、こうやって計算してみると、塩分を摂りすぎようが控えようが、塩分濃度が0.9%に保たれていない限りは、体外に水分と塩分が排泄されるということが分かります。
なので、減塩が必ずしも頻尿予防になるとは言えないと思うのですが。それよりも、塩分を控えすぎて熱中症になる方が困ります。塩分は摂りすぎると体外に排泄されるのですから、摂取量は少ないよりも多い方が健康には良いと思うんですよね。
それにしても、塩分を摂りすぎると、のどが渇くから水を飲みすぎて頻尿になるというのは、こじつけでしょう。
塩分と排尿の関係については、もっと調べてみる必要がありそうです。