大人が摂取すべき必須アミノ酸の1日当たりの必要量はどれくらい?

人間はタンパク質を食事から摂取しなければ生きていけません。タンパク質は20種類のアミノ酸から合成されており、そのうちのロイシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン(トレオニン)、トリプトファン、バリン、ヒスチジンの9種類が食事から必ず摂取しなければならない必須アミノ酸(不可欠アミノ酸)とされています。

なので、普段の食事では、これら9種類の必須アミノ酸を体が求める必要な量食べなければなりません。必須アミノ酸がバランス良く含まれている代表的な食品は卵です。だから、卵は必須アミノ酸摂取のために毎日でも食べたいですね。

必須アミノ酸の必要量と卵に含まれる必須アミノ酸

成人の1日に必要な必須アミノ酸の量が、分子栄養学を専門とする三石巌先生の著書「からだの中から健康になる長寿の秘密」の51ページに記載されていたので、以下に卵の必須アミノ酸含有量と一緒に表にしました。ついでに最近購入したオリヒロから出ている大豆プロテインのアクティブプロテイン100の20グラム当たりの必須アミノ酸含有量も記載しておきます。購入理由は他のプロテインよりも安かったからです。

成人の1日当たりの必須アミノ酸の必要量
種類 必要量(g) 生卵(1個60g) 生卵(3個180g) アクティブプロテイン100(20g)
ロイシン 2.20 0.60 1.80 1.29
イソロイシン 1.40 0.37 1.10 0.75
リジン 1.60 0.53 1.60 1.02
メチオニン 2.20 0.23  0.70 0.21
フェニルアラニン 2.20 0.38 1.13 0.85
スレオニン 1.00 0.35 1.04 0.64
トリプトファン 0.50 0.11 0.32 0.23
バリン 1.60 0.46 1.37 0.78
ヒスチジン 0.19 0.56 0.43
アルギニン 0.46 1.40 1.25

生卵のアミノ酸含有量は文部科学省の「日本食品標準成分表2015年版(七訂) アミノ酸成分表編」を参考にしています。

ヒスチジンの必要量は、前掲書に記載されていませんでした。また、アルギニンは小児で必須アミノ酸とされているので、参考に記載しています。

メチオニンの摂取が難しい

上の表で見ると、プロテインスコアもアミノ酸スコアも100点満点の生卵を3個食べても、メチオニンとフェニルアラニンの1日の必要量に不足します。フェニルアラニンはアクティブプロテイン100の力を借りれば必要量に近い量を補給できますが、メチオニンに関してはアクティブプロテインを使っても必要量に達しません。どうやら、メチオニンの摂取は意外と難しいようです。

メチオニンは、オーソモレキュラー.jpというサイトの以下のページによると、タンパク質を作る時に最初に必要なアミノ酸なので不足するとタンパク質合成に支障が出るとのこと。また、脂肪をエネルギーに変える時に必要なカルニチンを作るのにも必要だそうです。

また、上記ウェブサイトにメチオニンを多く含む食品が紹介されていました。それぞれ100グラム当たりのメチオニン含有量は以下の通りです。

  1. クロマグロ(赤身)=760mg
  2. 鶏むね肉(生、皮なし)=640mg
  3. 豚ロース赤身(生)=620mg

メチオニンは肉類に豊富に含まれていますから動物性食品中心の食事をしていれば、1日に2.2グラムは補給できそうですが、米やパンなど炭水化物が多く含まれている食品中心だと慢性的に不足しそうですね。野菜類にもメチオニンはほとんど含まれていませんから動物性食品をしっかりと食べましょう。

WHOの必須アミノ酸の推奨摂取量

必須アミノ酸の推奨摂取量は、世界保健機関(WHO)も公表しています。WHOが公表している成人の必須アミノ酸の推奨摂取量はWikipediaに掲載されています。

上記ページによると成人の体重1グラム当たりの必須アミノ酸の必要量は以下の通りです。

WHOの成人の1日当たりの必須アミノ酸の推奨摂取量
種類 体重1g当たり(mg) 体重40kg(g) 体重50kg(g) 体重60kg(g) 体重70kg(g)
ロイシン 39 1.56 1.95 2.34 2.73
イソロイシン 20 0.80 1.00 1.20 1.40
リジン 30 1.20 1.50 1.80 2.10
メチオニン+システイン 10.4+4.1(合計15) 0.60 0.75 0.90 1.05
フェニルアラニン+チロシン 合計25 1.00 1.25 1.50 1.75
スレオニン 15 0.60 0.75 0.90 1.05
トリプトファン 4 0.16 0.20 0.24 0.28
バリン 26 1.04 1.30 1.56 1.82
ヒスチジン 10 0.40 0.50 0.60 0.70

WHOの推奨摂取量であれば、メチオニンもフェニルアラニンも、かなり摂取量が少なくて済みますね。おまけにメチオニンはシステインとの合計で摂取すれば良いし、フェニルアラニンはチロシンとの合計で摂取すれば良いのですから、生卵3個食べれば推奨摂取量の補給は容易です。

ちなみに生卵1個のメチオニンとシステインの合計、フェニルアラニンとチロシンの合計は以下の通りです。

  • メチオニン+システイン=0.23g+0.18g=0.41g
  • フェニルアラニン+チロシン=0.38+0.33=0.71g

WHOの推奨摂取量であれば、卵を1個食べるだけでメチオニンもフェニルアラニンも大部分を満たせますね。

三石先生の必須アミノ酸の必要量とWHOの必須アミノ酸の推奨摂取量との間には違いがあります。では、どちらを重視するのが良いのでしょうか?

私は、個々の必須アミノ酸を三石先生とWHOで比較し、基準の厳しい方を採用すれば良いと考えています。例えば体重が50kgの人であれば、全ての必須アミノ酸が三石先生の基準の方が厳しくなっているのでこちらを採用します。体重70kgの人であれば、ロイシンやリジンはWHOの方が厳しいですが、メチオニンやフェニルアラニンは三石先生の方が厳しいので、両者の厳しい方を採用しておけば必須アミノ酸の不足を防げると思います。

なお、タンパク質は、体重に1グラムを乗じた量を摂取する必要があると言われています。プロテインスコアもアミノ酸スコアも100点満点の卵だと、1個に7グラムちょっとのタンパク質が含まれているので、体重が50kgの人だと7個、70kgの人だと10個食べればタンパク質の必要量を満たせる計算になります。

ちなみに卵を10個食べた時、メチオニンは2.34グラム、フェニルアラニンは3.78グラム摂取できます。どちらも三石先生の厳しい基準をクリアできる量なので、いかに卵のタンパク質が良質であるかがわかりますね。

以下の記事でメチオニンとフェニルアラニンが多く含まれている食品を調べて一覧にしました。気になる方はご覧になってください。

参考文献