代謝の同化と異化の意味を知っておこう

代謝という言葉がありますよね。

「あの人は代謝が良いから太らない」とか、「新陳代謝が活発だから肌がきれい」とか、代謝という言葉を耳にすることがあります。

では、上記のように使われる代謝という言葉を説明できるでしょうか?

代謝という言葉は、ダイエットや健康を扱っているテレビ番組でよく使われていますが、どことなく曖昧に使っているように思います。また、テレビを見ている人も、何となくわかっているような気がするけど、詳しくは説明できないという人が大多数だと思います。

同化と異化

代謝という言葉を説明する際は、同化異化をまず説明しなければなりません。

同化も異化も、これまたなんとなく理解しているような言葉ですよね。

「同化は、物質と物質がくっつくんでしょ。そして、異化は、物質から物質が離れることでしょ」

多くの人は、こんな感じで同化と異化を説明するのではないでしょうか?

しかし、これだと同化と異化の説明には不十分です。どちらの場合も、エネルギーという言葉も用いて説明しなければなりません。

さて、代謝という言葉は、生化学の本の一番始めに出てくる言葉です。したがって、代謝を説明できない人は、まず生化学の本を読んでいないとわかります。

代謝を一言で説明すると、以下のようになります。

生体を構成する高分子を構築したり分解する反応系の総称

ちょっと難しい文章ですが、要するに体を組み立てる反応と体を壊す反応を代謝というわけです。すなわち、体の構成要素であるタンパク質、脂質、核酸、糖質といった高分子を組み立てる反応が同化、これらの高分子をアミノ酸、脂肪酸、ヌクレオチド、糖に分解するのが異化です。

エネルギーを作り出すのは異化

先ほど、同化と異化を説明する際、エネルギーという言葉を使わなければならないと述べました。

エネルギーを生み出したり、使ったりするのも代謝に含まれます。

では、生体がエネルギーを生み出すにはどうすれば良いでしょうか?

その答えは、異化です。

つまり、我々の体の中で生み出されるエネルギーは、タンパク質、脂質、糖質といった高分子を分解した時に放出されており、この放出されたエネルギーをアデノシン三リン酸(ATP)、NADHやFADH₂といった還元当量の形にするのが異化です。

そう、生体内でエネルギーを作り出す反応は、異化、すなわち体を壊す反応と表裏一体なのです。

体を壊してエネルギーを生み出し、我々は活動しているというのは変な感じがしますよね。異化が進めば、やがて、体は砂のようになって崩れてしまいそうです。

しかし、そうならないのは、同化という反応も生体で行われているからです。同化では、ATPや他の還元当量を用いて、異化でできた部品からタンパク質、脂質、核酸、糖質などの高分子を構築します。

この異化と同化の関係は、とても興味深いですね。

同化のためには、エネルギーが必要になりますが、そのエネルギーは体を壊す異化から入手するのですから。

冒頭の「あの人は代謝が良いから太らない」というのは、脂質を分解して脂肪酸を作り出し、脂肪酸からATPを産生している異化の反応が進んでいる状態です。

一方の「新陳代謝が活発だから肌がきれい」というのは、タンパク質や脂質といった高分子を構築する同化が繰り返し行われている状態だと言えます。

これで代謝の基本的な説明は終わりです。

生体を維持するためには、食事からタンパク質や脂質などの栄養素を体内に取りいれなくてはなりません。これらの栄養素は、同化のための部品として使われるでしょう。そして、同化のために必要なエネルギーは、体を壊す異化から得られます。

同化には異化が必要です。また、体を壊してエネルギーを得る異化には、その前に高分子を構築する同化が行われている必要があります。

同化も異化も生体を維持するためには、欠かすことのできない反応であり、これを代謝というのです。

参考文献