ダイエットの基本は、カロリーコントロールとよく言われます。
私は、カロリー理論を信じていないので、カロリーなんて計算しても無駄だと思っているのですが、それでも、多くの方がカロリーコントロールがダイエットには大切だと信じています。確かに摂取カロリーが多く、消費カロリーが少ないと太ってしまう傾向があります。だから、カロリーを計算して、摂取カロリーを少な目に消費カロリーを多めにすることで痩せようという試みは、それなりに効果があります。
カロリー計算の対象となるのは、糖質、脂質、タンパク質の3つです。なので、これらの摂取カロリーの合計が消費カロリーを上回らないようにすれば、痩せていくという理屈なのですが、そもそも摂取カロリーの計算が、かなり厄介なんですよね。
糖質、脂質、タンパク質の1グラムあたりのカロリー
まず、基本中の基本として、糖質、脂質、タンパク質の1gあたりのカロリーがいくらなのかを知っておかなければ、カロリー制限によるダイエットはできません。これら三大栄養素の1gあたりのカロリーは以下の通りです。
- 糖質=4kcal
- 脂質=9kcal
- タンパク質=4kcal
これをみるとわかりますが、脂質が他の2つと比較して1gあたりのカロリーが高いです。2倍以上も開きがあるので、脂質は、カロリー制限によるダイエットのターゲットになりやすく、指導を受ける側も脂質は糖質やタンパク質よりも高カロリーなので、摂取量を少なくしましょうと言われると、もっともなことだと思って、すぐに受け入れてしまいます。
初めて本格的にダイエットをしようと思って、ジムに通ったり、ダイエットの専門家のところに行ったりして、このような指導を受ければ、まず、この言葉を信じてしまうことでしょう。でも、このような指導をするトレーナーやダイエットの専門家、医師、栄養士は、基本的なことを忘れています。もしかしたら、その基本を知らない場合もあります。
糖質を4kcalで計算するだけでは無意味
糖質、脂質、タンパク質の中で、カロリーが最も高いのは脂質ですが、実は、最も計算するのが厄介なのが糖質です。
糖質は4kcalだから、摂取量に4kcalを乗じたらいいだけと思うでしょうが、そうではないんですね。例えば、糖質を100g摂取した場合の摂取カロリーは400kcalになります。
- 糖質100g×4kcal=400kcal
ここまでは、小学生の算数の計算なので誰でも理解できます。でも、糖質は、体の中に入っても、常に糖質であり続けるわけではありません。
人間は、糖質が血液中に入ると、血糖値が上がります。そして、高血糖の状態から正常な血糖値に戻すためにすい臓からインスリンを分泌して血糖を下げます。
人の体は、筋肉に糖質をグリコーゲンとして貯蔵します。グリコーゲンは、筋肉が瞬発力を発揮するときに使われます。具体的には、筋トレや全速力で走るときにグリコーゲンがエネルギーになるわけです。
もしも、筋肉にグリコーゲンを貯蔵する空き容量が残っていれば、血液中の余分な糖質は、筋肉に蓄えられます。この時、筋肉に蓄えられたグリコーゲンは、1gあたり4kcalです。摂取した糖質がすべて筋肉に蓄えられれば、摂取量に4kcalを乗じた数字が、摂取カロリーとなります。
しかし、筋肉に空き容量が残っていない場合、血糖は筋肉に取り込まれません。この場合、インスリンが血糖を脂肪に変えて、体内に貯蔵しようとします。お腹周り、太もも、顎の下など。この体に蓄積された脂肪を1g減らそうとすると、9kcalを消費するための運動が必要になります。脂質のカロリーは1gあたり9kcalですからね。ダイエット関連の書籍や家庭医学書にもそのように記載されています。
このように糖質は、摂取した時は4kcalだったとしても、体内で脂肪として蓄えられると9kcalになるのです。摂取した糖質のどれだけが脂肪になるのか事前に分かれば、摂取カロリーを計算できるでしょうが、そのようなことを知るのは、一般人には不可能です。そもそも、筋肉にグリコーゲンの空き容量がどれくらいあるのかを正確に答えることができる人はいないでしょう。
コントロールが難しいものは排除に限る
このように糖質のカロリーは、4kcalなのか9kcalなのか、よくわかりません。「糖質は4kcal」だと断定する人は、ちょっと怪しいと思った方がいいでしょう。
カロリー制限がダイエットに重要だと言うのであれば、摂取カロリーと消費カロリーを正しく計算する必要があります。しかし、摂取カロリーの大部分を糖質が占めている場合、本当の摂取カロリーを計算するのは難しいです。現代の栄養学では、1日の摂取カロリーの割合を以下のように推奨しています。
- 糖質:脂質:タンパク質=6:2:2
そして、1日に2,000kcalを摂取した場合、糖質、脂質、タンパク質の摂取量をグラムに直すと以下のようになります。
- 糖質=300g
- 脂質=44g
- タンパク質=100g
これで、計算上は2,000kcalの摂取カロリーとなるわけですが、しかし、先ほども述べましたが、糖質のうちどれだけが体内で中性脂肪に変わってしまうのかわかりません。最悪300g全てが脂肪に変換されたとすると、1日の摂取カロリーは以下のようになります。
- 糖質300g×9kcal+脂質44g×4kcal×タンパク質100g×4kcal=3,276kcal≒3,300kcal
摂取カロリーを2,000kcalにコントロールしているつもりが、実は3,300kcalも摂取していたということだって起こるわけです。
計算上、これだけ大きな差が出る摂取カロリーをダイエットの指標とすることにそもそも問題があると思いませんか?仮にカロリーコントロールをダイエットの手段として用いるとしても、糖質の摂取割合が60%もあれば、ブレ幅が大きくなるので、これを下げる必要があります。例えば、1日の摂取カロリーは2,000kcalで同じとしても、摂取割合を以下のように変えれば、ブレ幅が小さくなります。
- 糖質:脂質:タンパク質=2:6:2
この場合の糖質、脂質、タンパク質の重量は以下の通りです。
- 糖質=100g
- 脂質=133g
- タンパク質=100g
仮に摂取した糖質のすべてが中性脂肪に変わったとしても、摂取カロリーは2,497kcalとなります。1日の糖質摂取割合を10%まで下げ脂質摂取割合を70%まで上げた場合、摂取カロリーの上限は2,250kcalです。
このように考えれば、カロリー制限によるダイエットで、もっともコントロールしなければならないのは糖質だとわかります。
本当のカロリーコントロールは、実は糖質摂取量を減らす糖質制限なんですね。