糖質、脂質、タンパク質の三大栄養素は、体内でアデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれるエネルギーを作る材料となります。
そして、糖質、脂質、タンパク質から得られるエネルギー量はカロリーで表されます。
ところで、三大栄養素から作り出されたATPのカロリーは一体どの程度なのでしょうか?
三大栄養素のカロリー
まず、三大栄養素の1グラム当たりのカロリーは以下のとおりです。
- 糖質=4.10kcal
- 脂質=9.45kcal
- タンパク質=5.65kcal
しかし、三大栄養素を食品から摂取しても、全てが吸収されませんし、栄養素を完全に燃焼できるわけでもないので、一般的なカロリー計算では、エネルギー量は少なめに見積もられています。
- 糖質=4kcal
- 脂質=9kcal
- タンパク質=4kcal
ちなみに実際に食品のカロリー表示で使われているのは後者です。
糖質から生み出されるATP量
人間がエネルギーとして利用するのはATPです。
三大栄養素が分解され、酸化される過程で化学エネルギーが発生します。この化学エネルギーを貯蔵するのがATPです。化学エネルギーは、体温維持には熱エネルギーに変換されますし、筋肉を収縮させる時には運動エネルギーに変換されます。
糖質1分子から得られるATP量は38分子とされています。32分子という説もありますが、ここでは38分子を採用します。
糖質(ブドウ糖)は、解糖系で2分子、ミトコンドリアで36分子のATPが作られます。
では、糖質から作り出されるATPのカロリーは、糖質1グラム当たり4kcalになるのでしょうか?
実際に計算してみましょう。
ATPは7.3kcal/molのエネルギーを放出する
ATPには3つのリン酸がくっついていますが、リン酸が1つ切り離されると7.3kcal/molのエネルギーが放出されます。そして、リン酸をひとつ失ったATPは、アデノシン2リン酸(ADP)になります。
ここでmol(モル)とは、分子の量を表す単位で、「6.02×10²³」個集めた単位を意味します。
このmolというのが、なかなか面倒で、質量(グラム)にどう変換したら良いのかなやむところです。こういう時は、Wikipediaが便利です。
例えば、ブドウ糖であればWikipediaのグルコースのページにモル質量が「180.16 g/mol」となっていますから、ブドウ糖1molは180.16グラムであることが分かります。
次に38molのATPからは、277.4kcalのエネルギー量だということが以下の計算式でわかります。
- 7.3kcal/mol×38mol=277.4kcal
したがって、ブドウ糖1molが180.16グラムなので、ブドウ糖1グラムから得られるエネルギー量は以下の計算式から1.54kcalと計算できます。
- 277.4kcal/180.16g=1.54kcal/g
糖質1グラムのカロリーは4.10kcalのはずですが一致しませんね。
これに関してYahoo!知恵袋で同じような質問があり、その回答では、ブドウ糖が持つすべてのエネルギーがATPに変換されるのではないといったものでした。つまり、糖質1グラムが持つ4.10kcalのうち1.54kcal分しかATPに貯蔵できないのだということです。
ブドウ糖は、ATPが作り出されるだけでなく、他に二酸化炭素と水にも分解されます。なので、ブドウ糖が持つ4.10kcalのうちATPに貯蔵されなかったエネルギーは、二酸化炭素や水とともに体外に排出されるということになるのでしょうね。
でも、これって本当なのでしょうか?
そもそも栄養学で、糖質1グラムのカロリーが4kcalとされているのは、糖質の吸収率や燃焼効率も考慮したからです。本来なら物理的燃焼値である4.10kcalが糖質のカロリーとすべきところ、上記の理由から0.10kcalだけ少なく見積もった4kcalを採用しているのです。
なんとなく、糖質が4kcalで計算されているのは怪しく感じませんか?
ついでに脂質についても、カロリーとATP産生量を計算してみました。