米、パン、麺類、果物、砂糖といった炭水化物(糖質)が多く含まれている食品を食べると血糖値が上がります。血糖は血液中に含まれているブドウ糖のことで、糖質は体内に吸収されると、だいたいブドウ糖となり血糖値が上がります。
最近は、糖質の過剰摂取は健康に良くないという情報が広まり、糖質摂取で血糖値が上がることを知っている人が多くなっています。糖質摂取=高血糖は、もはや当たり前の知識と言っても良いでしょう。
一方で、糖質摂取により、低血糖になってしまう人がいることはあまり知られていません。
ブドウ糖負荷試験で低血糖になった例
空腹時の血糖値は、血液1デシリットル辺り70mgから100mgの間が正常とされています。109mg以下であれば正常ではありますが、100mgを超えていると糖尿病の可能性が出てきます。
そして、健康診断で血糖値の基準値が、上限を超えていることが発覚すると、ブドウ糖負荷試験を受ける場合があります。75グラムのブドウ糖を溶かした液体を飲んで、120分後に血糖値が140mgまで下がっていれば正常とされ、超えていれば広い意味での糖尿病とされます。
糖尿病専門医の牧田善二先生の著書『糖質中毒』にブドウ糖負荷試験について、興味深い内容が紹介されていました。
ブドウ糖負荷試験は120分後までの血糖値しか計測しませんが、鹿児島県の今村病院分院(現今村総合病院)などが、ボランティア26名を対象に300分後まで追跡調査を行ったそうです。ボランティアのうち、20歳代の男性は150分後の血糖値が55mg、40歳代の男性は180分後の血糖値が58mgまで下がっていました。
牧田先生によれば、血糖値が70mgを下回ると不快症状が出てきて、脳からの指令で糖質を摂らずにはいられなくなるとのこと。50mgを下回ると、中枢神経症状が現れ、冷や汗、ふるえ、動悸、めまい、脈・呼吸が速くなる、血圧上昇(最小)、顔面蒼白または紅潮などの症状も現れます。
糖質を一気に摂取するのは危険
この結果を見ると、水に多量の砂糖を溶かした液体を一気に飲むことは危険だとわかります。
糖尿病の人が、そんなことをすると血糖値がとんでもなく上がるのでやってはいけませんが、健康な人でも低血糖で倒れる危険がありますからやってはいけません。
糖質を摂取するとすい臓からインスリンが分泌され、血糖値が正常範囲まで下がります。しかし、上のボランティア2名の方のように正常値よりも血糖値が下がってしまう人もいます。のどが渇いたときに清涼飲料水を飲んで、低血糖で倒れるなんて普通は思いませんよね。でも、体質的に血糖値が下がり過ぎる人がいるわけですから、自分もそうかもしれないと考えて、清涼飲料水の一気飲みをするのは避けるべきです。
人間は、糖質を摂取しなくても、糖新生という機能により血糖値を一定以上に保てるようになっています。糖質を摂取しないと低血糖で倒れるというのはウソです。むしろ、糖質の摂り過ぎが原因で血糖値が下がり過ぎてしまうこともありますから、普段から糖質摂取は控えめにした方が良いです。
ロカボと呼ばれるゆるゆるの糖質制限なら、1日に130グラム未満に糖質摂取量を抑える程度ですから誰でも無理なく始められると思います。茶わん1杯の白米を食べると、約50グラムの糖質を摂取することになりますから、ロカボでも1日に茶わん2杯の白米を食べることはできません。でも、1日に1杯までなら白米を食べられますから、簡単に取り組めるはずです。
もちろん、白米だけでなく、パンも麺類も控えなければなりませんよ。