ビタミンを身代りにして活性酸素対策

活性酸素という言葉を聞いたことがある方は多いはず。病気や老化の原因とされている嫌なイメージのある物質ですね。

体に必要なエネルギーを生産するミトコンドリアは、酸素を利用してエネルギーを作り出すのですが、その酸素のうち最低2%が活性酸素になります。人間が活動を行うためにはエネルギーが必要ですから、活性酸素の発生そのものを防ぐことはできません。

そうすると、人間は活性酸素にやられるがまま、病気になり老化していくのかと思ってしまいますが、そのようなことはありません。

酸化とは電子を奪い取られること

よく体が酸化するという言葉を聞きます。美容を意識している方、特に女性の方はご存知だと思います。

酸化とは、一言でいうと錆びるということです。酸化が起こるのは、2個の電子を持っている原子が、活性酸素によって電子を1個奪われて不安定になることが原因です。タンパク質や脂質も活性酸素に電子を奪われると酸化します。

人間の細胞もタンパク質でできているので、活性酸素に電子を奪われれば健康な状態を維持できなくなります。死んでしまう細胞もあるのですが、中途半端に生き残る細胞もあります。この中途半端に生き残った細胞の中からガン細胞が出てくるので、何とも厄介なわけです。

活性酸素の発生を防ぐことができない以上、その対策は、活性酸素から正常な細胞が電子を奪われないようにすることが重要となってきます。

ビタミンを犠牲にして酸化を防ぐ

正常な細胞が、活性酸素から電子を奪われないようにするためには、他の物質が持つ電子を活性酸素に1個渡せば良いことになります。電子を1個奪い取った活性酸素は、それ以上悪さをすることはありません。分子栄養学の三石巌先生の著書「医学常識はウソだらけ」では、ビタミンCやEが活性酸素対策に役立つことが述べられています。

活性酸素が正常な細胞から電子を奪い取ろうとする時、ビタミンCやEを身代わりとして差し出せば良いのです。活性酸素は、1個の電子を奪えば満足するので、正常な細胞の代わりにビタミンCやEが持つ電子を1個、活性酸素に渡してしまえば細胞は健康を維持できます。

ビタミンCやEに抗酸化作用があると言われるのは、こういう意味なんですね。他にビタミンAも抗酸化物質として知られています。これらのビタミンを合わせてビタミンACE(エース)とも言われています。

討ち死にしたビタミンを復活させる

電子を1個奪われたビタミンCは討ち死にしてしまいます。だから、常にビタミンCは活性酸素対策のためにたくさん摂取しておくことが良いわけです。でも、討ち死にしたビタミンCを復活させて、再び戦線に復帰させることが可能です。

正常な細胞の身代わりになったビタミンCは1個しか電子を持たないフリーラジカルという不安定な状態になりますが、正常な細胞から電子を奪い取るほどの凶悪さは持っていません。このフリーラジカルの状態から再び本来のビタミンCに復活させるためには、電子を1個与えれば良いのです。

以前は、ビタミンCやEなどの抗酸化物質は、それ単体で活性酸素と戦っていると思われていました。でも、そうではなく、これらの抗酸化物質はチームを組んで活性酸素対策をしているようです。

そのあたりのことが、生田哲先生の著書「食べ物を変えれば脳が変わる」で解説されています。

ビタミンEは活性酸素に電子を与えて無毒化するが、同時にビタミンEはフリーラジカルになる。だが、ビタミンEのフリーラジカルは、ビタミンCやコエンザイムQ10から電子をもらって再び抗酸化物質としてよみがえる。要するに、ビタミンEはビタミンCとコエンザイムQ10によってリサイクルされるのである。
同じように、ビタミンCのフリーラジカルはグルタチオンやα-リポ酸などによってリサイクルされる。そしてα-リポ酸のフリーラジカルはアントシアニジンによってリサイクルされる。(113~114ページ)

このように複数の抗酸化物質がチームを組んで活性酸素と戦う仕組みを抗酸化ネットワークというそうです。

リサイクル能力に優れた抗酸化物質はいくつかあり、その代表はビタミンE、ビタミンC、コエンザイムQ10、α-リポ酸、アントシアニジン、β-カロテン、セレン、グルタチオンとのこと。したがって、これらの物質を多く含んだ食べ物を摂取しておけば、活性酸素対策になるということですね。

ちなみにグルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸がつながったものです。グルタチオンは胃腸の酵素によって分解されてしまうので、食べ物から摂取しても効果がないそうです。でも、S-アデノシルメチオニンを摂取すれば、体内のグルタチオンレベルが上がるとのこと。S-アデノシルメチオニンを多く含む食品の具体例として同書には、大豆、ゴマ、ヒマワリの種、カシューナッツ、シラス干し、鰹節、マグロ、ヒラメ、キンメダイ、スジコが列挙されています。

とりあえず活性酸素から正常な細胞を守るためには、ビタミンACEなどの抗酸化物質を普段からたくさん摂取しておくことが大切ということですね。

参考文献