朝風呂や朝シャンはやめなさい。皮膚常在菌が減った状態での外出は病原体から身を守れない。

あなたは、外出前と外出後のどっちに入浴しますか?

入浴頻度が同じなら、いつ入ろうが肌の清潔度合いに違いはないと思うでしょう。でも、好ましいのは、外出後の入浴です。通勤や通学で、朝から出かける場合、体をきれいにしてからの方が周囲の人に清潔なイメージを持ってもらえるかもしれませんが、病原体からの生体防御という視点からは、朝風呂や朝シャン(朝にシャンプーすること。洗剤メーカーがCMで流行らせた言葉)は危険極まりない行為と言えます。

外出前の入浴は裸で外出しているのと同じ

誰もが外出する際は、服を着ます。服を着る目的は、裸を見られないようにしたり、肌が汚れるをを防いだり、何かが体に当たってもケガをしにくくしたりといろいろあります。

この中で、何かが体に当たってケガをしにくくするというのは、異物から体を守るためと言い換えられます。石やボールなどが体に当たっても、服を着ていれば大きな傷になるのを防ぐことができますが、肌が露出している部分に当たると皮がむけて血が出たり、大きく腫れ上がったりします。だから、体を外部の刺激から守るためには衣服を着て外出した方が安全です。

それと入浴後の外出に何か関係があるのかと思うでしょうが、入浴後は、皮膚常在菌のバリアが破壊された状態で外出することになるので、様々な病原体に身をさらすことになります。下の記事でも紹介しましたが、人間の肌の上に棲んでいる皮膚常在菌は、弱酸性の皮脂膜を作って、病原体から身を守ってくれています。

ウィルスや細菌はタンパク質でできています。タンパク質は酸に弱いので、皮膚表面が弱酸性の皮脂膜に覆われていれば、これら病原体が付着しても悪さをしにくくなります。ところが、入浴後は、皮膚常在菌が洗い流されてしまうので、皮膚表面は無防備となり、病原体に悪さをさせる隙を与えてしまいます。

だから、外出前の入浴は、病原体から身を守る力を弱くするのでやめるべきなのです。

皮膚常在菌は12時間で回復する

入浴後は、皮膚常在菌が洗い流されてしまいますが、1割程度は流されずに皮膚表面に残っていると言われています。そして、この1割の皮膚常在菌が12時間後には、元の状態になるまで増殖しているそうです。

ここから、外出の12時間前までに入浴しておけば、皮膚表面が皮膚常在菌で埋め尽くされた状態で外出可能と結論を導き出すことができます。午前8時に出かけるなら、午後8時までには入浴を済ませた方が良いですが、そこまで神経質にならなくても就寝前に入浴しておけば、寝ている間に皮膚の大部分に皮膚常在菌が回復しているはずです。

また、皮膚常在菌は汗を好むので、温かくして眠ることも大切です。冬場は、ちょっと暑いかなと思うくらいに布団や毛布を重ねて寝るようにしましょう。

消毒液は使わない

皮膚常在菌は、消毒液にも弱いです。お店に入る前に毎回消毒液を使っていると、手から皮膚常在菌が失われ感染症に弱い体質になってしまいます。

だから、消毒液を使うのはやめましょう。逆効果です。

皮膚常在菌の中でも、我々にとって好ましい働きをしてくれているのが表皮ブドウ球菌です。一方、我々にとってあまり好ましい働きをしていないのが黄色ブドウ球菌です。似たような名前ですが、両者は異なります。

黄色ブドウ球菌は、傷口を可能させたり、アトピーの人の肌を痒くさせたりします。肌が痒いからと言ってかきむしると、傷ができ、そこで黄色ブドウ球菌が増殖してしまいます。なんとも厄介な細菌です。

だから、黄色ブドウ球菌を消毒液でやっつけてしまえば良いのだと考えますが、それをやると表皮ブドウ球菌までやっつけてしまいます。テロリストが人質をとってビルに立てこもっているからと言って、ビルごと爆破すれば人質も殺すことになります。消毒液を人体に使う行為は、これと全く一緒です。

青木皐先生の著書『人体常在菌のはなし』にも、以下のように消毒液を使うべきではないと書かれています。

このように黄色ブドウ球菌は実に手強い存在である。そういう菌がいるからといって、神経質に手を洗い、いちいち消毒し始める人がいるかもしれない。だが、くれぐれも忘れないでほしい。洗いすぎたり、消毒しすぎたりすれば、強い味方の表皮ブドウ球菌まで死なせてしまう。それが肌荒れにつながり、悪循環につながるのである。(100ページ)

お店の入り口に消毒液が置かれていても無視しましょう。消毒液を使えば、手の表面から皮膚常在菌がいなくなり、逆に肌トラブルを招きます。一時的な肌荒れなら大したことないですが、肌荒れが慢性化すると手を水につけることさえできないほど辛い思いをしなければなりません。

お店に入る際、必ず消毒液を使わなければならない場合は、少しだけ手に付けるようにするか、手が荒れているから消毒できないと店員さんに伝えるかしましょう。

テレビに出演している感染症の専門家の方々は、水際対策が大切だと言い、空港での検査体制を厳しくすべきだと主張しています。それを言うなら、人体にとっても水際対策が必要で、皮膚表面のバリア機能を保ち病原体が体内に侵入するのを防がなければならないと啓蒙すべきです。

肌のバリア機能を壊さないようにするには、過度の手洗いをしないだけでなく、消毒液を使わないことや外出前の入浴を避けることが大切です。

参考文献