筋肉のグリコーゲンは糖質を摂取しなくても貯蔵できる

最近、2日続けて全力疾走しました。

普段、理由もなく走ることなんてないのですが、久しぶりにダッシュしてみました。準備運動一切なしでの全力疾走だったので、普通に歩いている状態からゆっくりと走り出し、徐々に速度を上げていってトップスピードに持っていくという走り方です。

距離にすると100メートルほどでしょうか。その半分くらいの距離は全力疾走です。それを1日に3回か4回、2日合計で7回ほど全力疾走しました。おかげで太股が筋肉痛になってしまいました。

糖質を摂取しなくても瞬発力を発揮できる

なぜ、いきなりダッシュをしようと思ったかというと、普段の食事で極力糖質を摂取しないようにする糖質制限を行っていても瞬発力を発揮できるのかどうかを試したかったからです。

ちなみに私は、糖質制限歴2年6ヶ月です。

筋肉には、グリコーゲンが貯蔵されています。グリコーゲンからは、無酸素下でアデノシン三リン酸(ATP)というエネルギーを作り出せます。だから、瞬間的に体を動かすためには、酸素が供給されなくてもエネルギーとして利用できるグリコーゲンが、筋肉に蓄えられていなければならないとされています。

グリコーゲンの材料は、糖質です。糖質を摂取すると血糖値が上がります。血糖値を下げるためにすい臓からインスリンが追加分泌されて、糖質(血糖)が血管の外に出されて筋肉にグリコーゲンとして蓄えられます。たくさんの糖質を摂取した場合には、グリコーゲンを筋肉に貯蔵できなくなるので、余った糖質は中性脂肪として体に蓄えられます。

なお、筋肉に貯蔵できるグリコーゲンは、300グラム程度と言われています。

瞬発力を発揮するにはグリコーゲンが必要。だから、普段から糖質をしっかりと摂取してグリコーゲンを補充しなければならないと主張する人がいます。しかし、私は、糖質制限をしていても、全力疾走できたのですから、そんなことはありません。

高速で、プッシュアップ(腕立て伏せ)もできますから、食事で糖質を摂取しなくても、瞬発力の発揮に何も影響はありません。

糖質摂取とグリコーゲンの貯蔵とは無関係

私だけの経験なんて、信用できないという方もいるでしょう。それは、ごもっとものことです。でも、以下の記事を読めば、糖質摂取と筋肉のグリコーゲンの貯蔵は、無関係だということが分かります。

  • 糖質制限した持久的アスリートは驚くべき脂肪燃焼者になる!?:世界の最新健康・栄養ニュース(2018年9月17日追記:左記ページは閉鎖しています)

この記事は、以前に医師の夏井睦先生が運営するウェブサイト「新しい創傷治療」で、紹介されていたものです。

上記の記事では、長期間糖質制限をしているアスリートと炭水化物(糖質)を一般人並みに摂取しているアスリートの脂肪燃焼効果を検証した結果が掲載されています。糖質制限をしているアスリートと糖質摂取しているアスリートの1日の三大栄養素に占める糖質摂取割合は以下のとおりです。

  • 低糖質アスリート:10%
  • 高糖質アスリート:59%

糖質摂取量が少ないアスリートの方が、運動後のグリコーゲンの貯蔵に時間がかかるのではないかと思うでしょうが、実際には、両者とも疲労からの回復時にほぼ同じ量のグリコーゲンを合成したということです。長時間走っている間のグリコーゲンの分解量もほぼ同じです。

この実験結果から、糖質摂取量と筋肉のグリコーゲンの貯蔵量や貯蔵時間とは無関係だと言えるでしょう。

それでも、糖質を摂取しなければグリコーゲンを貯蔵できないと疑っている方は、実際に糖質制限をして、毎日、全力疾走してください。そうすれば、簡単にわかることです。

糖質制限をしたアスリートの脂肪燃焼効果は2倍

さらに興味深かったのが、糖質制限をしたアスリートの脂肪燃焼効果が、高糖質食のアスリートよりも、脂肪燃焼効果が2倍も高かったということです。両者の最大脂肪燃焼率の平均値は以下のとおりです。

  • 低糖質アスリート:1.5g/分
  • 高糖質アスリート:0.67g/分

消費カロリーに換算すると、低糖質アスリートは13.5kcal/分、高糖質アスリートは6.03g/分です。圧倒的に糖質制限をしているアスリートの方が脂肪のエネルギー利用量が多いですね。

糖質制限をすると、体が疲れにくくなります。その理由は、高糖質食を毎日食べている人よりも、脂肪のエネルギー利用が上手だということでしょう。当然、これだけ素早く脂肪をエネルギー利用できるのですから、糖質制限をすれば太りにくい体質になります。

この結果を見れば、糖質制限をして痩せるのは、体内のグリコーゲンが減るからだという主張がおかしいことが分かるでしょう。

体内のグリコーゲンは、筋肉に300グラム、肝臓に100グラム以下しか貯蔵されていません。グリコーゲンの貯蔵には、水が3倍とか4倍とか必要とされますが、これらを含めても、グリコーゲンが枯渇した場合に減少する体重は、せいぜい2kg程度です。

しかし、糖質制限をした人は、それ以上の体重減少を経験しています。これは、高糖質食を食べていた時よりも、中性脂肪を分解してATPを作り出す能力が高まったからではないでしょうか?

瞬発力を発揮するのに必要なのはクレアチンリン酸

また、瞬発力を発揮するのにグリコーゲンが必要だと言われていますが、クレアチンリン酸の方が、素早くATPを産生できます。これについては、以下の過去記事で紹介しています。

糖質を摂らなければ筋肉に力が入らないとか、非常時に瞬間的に力を出すためにはグリコーゲンが必要だと言われますが、どちらも違うでしょう。糖質を摂らなくてもグリコーゲンの貯蔵に問題はありません。非常時に瞬発力を発揮するために使われるエネルギー源は、クレアチンリン酸です。

「糖質制限をすると痩せる、糖質制限をすると疲れにくくなる」

実はこれも正しくありません。

「糖質を摂取すると太りやすくなる、糖質を摂取すると疲れやすくなる」

これが正解ですね。