スポーツ選手は貧血になりやすい。運動する人は鉄分を積極的に摂取しなければならない。

スポーツ選手は、運動をしていない人よりも健康的な肉体をしているように思いますよね。見た目が実年齢よりも若いスポーツ選手が多いですから、そう感じるのかもしれません。

運動習慣がある人の方が長生きすると言われたりしますから、運動は健康的な体作りに役立つのでしょう。

でも、よく運動をする人は貧血になりやすいといことも知っておかないと、運動が逆に不健康の原因になってしまいます。

有酸素運動には鉄分が必要

貧血には様々な原因があるのですが、その中でも体内の鉄分が不足して起こる鉄欠乏性貧血が運動習慣がある人に起こりやすいそうです。

その理由は、体が運動に必要なエネルギーを作り出す時に鉄分を必要とするからです。

人間が活動に必要なエネルギーを体内で作り出すためには酸素が必要です。そして、体の隅々まで酸素を運んでいるのが赤血球です。赤血球は酸素を運ぶために鉄を必要としますから、鉄不足は体内の酸素不足を引き起こします。

ジョギングやウォーキングなどは有酸素運動と言われる通り、酸素を利用して運動に必要なエネルギーを得ています。それはすなわち、鉄分を消費しながら運動しているということなのです。だから、有酸素運動をする習慣がある方は積極的に鉄分を摂取しなければ、運動中に貧血を起こす危険があります。

マラソン選手は貧血になりやすい

医師の山本佳奈先生の著書「貧血大国・日本」で、マラソン選手は貧血になりやすいと記載されているので、該当部分を紹介します。

運動が原因となって、血中の赤血球数、またはヘモグロビン濃度が低下することを「スポーツ貧血」と言います。
この問題は古くから指摘されていて、たとえば、1986年に行われたアジア競技大会の日本代表選手を調べたところ、女子の22.5%、男子の7.5%が貧血でした。1996年の国民体育大会に出場した社会人選手の多くも貧血、その頻度は、女子23.8%、男子7.3%だったと言います。さらにこのうち、女性の6.7%、男性の1.6%はヘモグロビン濃度が12.9g/dl以下という「中等度の貧血」でした。これは医師から見て、無視できるレベルではありません。(143~144ページ)

マラソン選手が鉄不足になりやすいのは、競技中に多くの酸素を体中に送らなければならないからだということは容易に想像できます。だから、マラソン選手のような持久系アスリートは、意識的に鉄分補給しなければ健康を害す危険があります。

マラソン選手の中には、競技前に糖質をたくさん食べてエネルギー補給するカーボローディングをやっている人もいるそうですが、そんなことをするよりも、競技前の鉄分補給の方が大切でしょう。長距離走の前に糖質を大量に食べて血糖値を上げる行為は、血管を傷めるだけで無益だと思うのですが。

また、糖質が多く含まれている食品は、ビタミンやミネラルといった微量栄養素の含有量が少ない傾向にあるので、ご飯やパンを中心とした食事をしていれば、鉄分不足になるのは必然です。

筋肉量が多いと鉄の需要が高まる

マラソン選手のような持久系アスリートに限らず、一般人よりも筋肉量が多いスポーツ選手は多くの鉄分を摂取しなければなりません。

筋肉にはミオグロビンというタンパク質が含まれており、赤血球に含まれているヘモグロビンから酸素を受け取り蓄えておきます。ミオグロビンが酸素を貯蔵できるのは鉄が含まれているからです。

ミオグロビンが蓄えている酸素は、必要な時、すなわち筋肉を動かして運動する時に消費されます。ハードな運動をするスポーツ選手ほど筋肉量が多いので、鉄の需要も高まります。ハードな運動をすれば鉄の消費量も増えますから、意識的に鉄が含まれている食品を食べなければ、鉄欠乏性貧血を起こすのは当たり前ですね。

他にも、発汗、競技中の体への衝撃による赤血球の破壊でも鉄を失います。

鉄分が多く含まれている食品は、肉や魚です。特に赤身の肉、赤身魚に鉄が多く含まれている傾向にあります。イワシやサンマなど一般的に青魚と呼ばれている魚も赤身魚に含まれますから、積極的に食べたいですね。

また、特にレバーに多くの鉄が含まれているので、1週間に100グラム程度食べると良さそうです。鉄分補給のためにレバーは、毎日でも食べたいところですが、鶏レバーと豚レバーはビタミンAの含有量が非常に多く過剰症の危険があります。牛レバーであれば、鶏レバーや豚レバーの1割ほどしかビタミンAが含まれていないので、もっと頻繁に食べることはできます。

山本先生は、日本は国民の鉄不足に対して無策だと述べています。海外では発展途上国でも、鉄を添加した鉄強化食品が売られているそうですが、日本ではそのようなものを見たことがないですね。

あと、鉄瓶を使ってお湯を沸かしたり調理をすると、そこから鉄分が溶け出して摂取できるそうです。でも、南部鉄器の鉄瓶は結構な値段しますね。赤ちゃんも鉄不足になりやすいので、出産を控えているママさんは、友人や親類に「出産祝いは何が欲しい?」と聞かれたら、南部鉄器の鉄瓶と言っておきましょう。

参考文献