肥満の予防や解消のためには太りにくい食品を食べることが大切だと言われてますよね。
最近では、糖質(炭水化物)が多く含まれている食品ほど太りやすいことがわかってきたので、糖質制限をしてダイエットをしたり体重管理している人が増えています。また、糖質は急速に吸収されると、すい臓から多くのインスリンが分泌されて糖質が脂肪に変わってしまうので、糖質が含まれていても体内への吸収速度が遅い食品の方が太りにくいと言われています。
食品ごとに血糖値の上がり方を観察しているブログ
血糖値の上がりやすい食品については、グリセミック・インデックス(GI値)という指標が世の中に公表されています。検索エンジンで検索すれば、食品ごとのGI値を調べられます。GI値は、ブドウ糖の血糖値の上がる速度を100とし、それを基準に血糖値の上がりやすさを80とか50とかに区分して食品を表示しています。
また、インターネット上には、血糖測定器を使って自身の血糖値の推移を公開しているブログがあります。代表的なのが、「秘密結社ブドゥ党」という教典です。
例えば、白米だと、以下のように血糖値が上がったことが報告されています。
- 食前=80mg/dl
- 食後30分=140mg/dl
- 食後60分=170mg/dl
- 食後120分=140mg/dl
白米はGI値が70なので比較的血糖値が上がりやすい食品です。
では、白米だけでなく、その上に玉卵を乗せた卵かけごはんの場合はどうなるかと言うと、「実験A-53 リクエスト編⑪ たまごかけご飯は普通に血糖値上がるに決まってる…???」の記事で以下のような結果が出ています。
- 食前=78mg/dl
- 食後30分=106mg/dl
- 食後60分=97mg/dl
- 食後120分=120mg/dl
- 食後180分=108mg/dl
同じ量の白米を食べてるのに卵をかけただけで血糖値の上昇が緩やかになっていますね。
どういうことでしょうか?
考えられるのは、卵をかけたことで白米に含まれている糖質の吸収速度が抑えられたのではないかということです。白米だけだと、糖質が簡単に腸から体内に入ってしまうけども、卵が消化吸収を邪魔して糖質が体に入るスピードを遅くしたのだという推測です。
おそらく、多くの医師や栄養士の方も、このように考えると思います。また、GI値は糖質の吸収されやすさを基準にしていますから、血糖値が上がりにくいのは、糖質の吸収速度が遅いからだと考えるのが一般的でしょう。
インスリンの分泌量を考慮すると
さて、GI値は、いったいどのようにして測定しているのでしょうか?
インターネット上を探してみると、GI値を測定している組織のホームページが見つかりました。ホームページは2種類あったので、どちらにも目を通してみると、健常者かつ肥満でない人は測定試験を受けれるそうです。
被験者の食後の血糖値を測定して、食品のGI値を調べるのが目的なのでしょうね。食品メーカーや飲食店が、自社商品や提供するメニューが、どれだけ血糖値を上げるのかを測定し、GI値が低ければヘルシーだと宣伝するのかもしれません。
目的はおいといて、GI値の測定が、健常者かつ肥満でない人を被験者にしていることに注目しなければならないはずです。
どういうことか説明しましょう。
健康な人は糖質を摂取しても、多くのインスリンが分泌されるので血糖値が上昇しにくく、かつ上がった血糖値を速やかに空腹時血糖値の上限(109mg/dl)以下に下げれます。つまり、健康な人が糖質を摂取した場合と糖尿病の方が糖質を摂取した場合では、血糖値の上がり方も下がり方も異なるのです。
もう少しわかりやすく説明します。
例えば、空腹時血糖値が100mg/dlの状態で、おにぎり1個を食べた時、まったくインスリンが分泌されなかったと仮定して180mg/dlまで血糖値が上がるとします。しかし、健康な人は糖質を摂取すると速やかに多くのインスリンが分泌されるので、血糖値が下がります。例えば、インスリンが分泌されて50mg/dlだけ血糖値を下げたと仮定すれば、130mg/dlしか血糖値は上がりません。
GI値の測定が健常者で行われるのですから、測定結果にはインスリンが血糖値を下げた影響も反映されます。すなわち、血糖値を上げた総量(GROSS)は80mg/dlなのにインスリンの関与のせいで差引(NET)で30mg/dlしか血糖値を上昇させなかったと評価されてしまうのです。
純粋にその食品がどれだけ血糖値を上げるかを評価するのであれば、インスリンの影響を排除しなければなりません。でも、インスリンの影響を排除しようと思うと、インスリンがほとんど分泌されない1型糖尿病の方を被験者にすることになるので、道義的に許されないでしょう。
タンパク質が含まれる食品はGI値が低くなりがち
話を卵かけごはんに戻します。
卵かけごはんは、卵が白米に含まれる糖質の吸収を邪魔して血糖値が上がらなかったのではないかと推測しました。しかし、白米だけを食べた場合と卵かけごはんを食べた場合でインスリンの分泌量に違いがあったらどうでしょうか?
おそらく、卵かけごはんを食べた時の方が、多くのインスリンが分泌されているはずです。その理由は、糖質だけを摂取した場合よりも、糖質とタンパク質を同時摂取した場合の方がインスリンの分泌量が多いからです。これについては、以下の過去記事を参考にしてください。
白米よりも卵かけごはんの方が、食後のインスリン分泌量が多いのであれば、卵かけごはんの方が食後の血糖値の上がり方が緩やかになるはずです。厳密には、血糖値が一気に上がっているのですが、すい臓ががんばって多くのインスリンを分泌しているので、血糖測定機では血糖値が上がってないように見えるだけなのだと思います。
ただ、これも推測でしかありません。事実を知りたければ、インスリンを測定する機器を使う必要があるでしょうね。
GI値の高い食品から低い食品まで、糖質に対してタンパク質がどの程度含まれているかの割合を調べてみました。すべての食品を調べるのは時間がかかるので、GI値がわかる食品の中から、一部をカロリーSlismを参考にタンパク質が糖質の何倍含まれているかを表にまとめました。なお、GI値は、米井嘉一先生の「早く老ける人、老けない人」の39ページに掲載されているものを使っています。
食品のタンパク質と糖質の割合 | ||
食品名 | GI値 | タンパク質/糖質(倍) |
コーンフレーク | 80~90 | 0.096倍 |
白米 | 70~79 | 0.067倍 |
小麦 | 60~69 | 0.172倍 |
ざるそば | 50~59 | 0.243倍 |
えんどう豆 | 40~49 | 0.504倍 |
ヨーグルト | 30~39 | 0.734倍 |
ひよこ豆 | 30~39 | 0.442倍 |
そら豆 | 20~29 | 0.527倍 |
大豆 | 10~19 | 3.180倍 |
この表を見ると、GI値の高い食品ほど糖質に対するタンパク質の割合が小さくなる傾向があります。
したがって、糖質が含まれていてもタンパク質を多く含む食品は血糖値を上げにくいという推測が可能です。ただ、GI値の低い食品は、消化しにくい豆類が多いので、糖質の吸収速度が遅いのではないかという推測もできます。
糖尿病は、インスリンの分泌量が少なくなって血糖値を下げれなくなる病気です。インスリンが出なくなるのは、インスリンを分泌するすい臓のβ細胞が壊れるからです。そして、2型糖尿病は、インスリンの出し過ぎでβ細胞を酷使した結果、インスリン分泌能が低下することが原因で発症します。
もしも、GI値の低い食品を食べても血糖値が上がりにくいのが、糖質とタンパク質の同時摂取で多くのインスリンを分泌して血糖値を下げているからだとすると、GI値が高い食品を食べることよりもβ細胞を酷使しているかもしれません。
β細胞に負担をかけないようにするには、GI値にこだわるよりも、糖質摂取量を減らした方が良いと思いますよ。