糖質制限で痩せない女性は鉄不足?

男性は、米、パン、麺類、イモ類など炭水化物(糖質)が多く含まれる食品を食べるのを控える糖質制限をすれば、多くの場合、短期間に減量できると思います。私も、糖質制限を開始してすぐにお腹周りの脂肪がとれてすっきりとしました。

同じように女性も糖質制限をすれば、簡単に痩せそうに思うのですが、どうも思うように脂肪が減っていかない方がいらっしゃるようです。男女で体のつくりに違いがあるから、糖質制限の効果にも違いが出るのかなと思ってました。でも、女性が糖質制限をしても痩せないのは、どうやら鉄不足も関係しているように思えます。

ATP産生に欠かせない鉄

体についた脂肪を減らすためには、何らかの形で脂肪を取り除かなければなりません。美容整形で脂肪吸引するのも一つの手ですが、日常生活ですぐにできることは、脂肪をエネルギー利用して減らすことです。

人間にとってのエネルギーは、アデノシン三リン酸(ATP)です。人間に限らず生物は、ATPを生体内のエネルギー通貨として利用し、生きていくための様々な活動に利用しています。

体に蓄えた中性脂肪をエネルギー利用するためには、脂肪酸のβ酸化から作り出したアセチルCoA(コーエー)をオキサロ酢酸とくっつけてクエン酸にする必要があります。そして、クエン酸からは、ビタミンB群などの助けを借りて、NADHやFADH₂といった電子伝達体が取り出されます。電子伝達体は、さらに電子伝達系に運ばれ、水素やら酸素やらが働いてドカーンと大きな化学反応が起こり、大量のATPが作られます。

ちなみにこれらの仕事は、細胞内にあるミトコンドリアが担っています。

要するに体に貯め込んだ脂肪は、ミトコンドリアでATPを作り出す材料として使い、そのATPを日常の活動で消費してしまえば減っていくわけです。

ミトコンドリアが大量のATPを作り出す電子伝達系では、鉄がなければなりません。もしも鉄が不足していると、電子伝達系でドカーンと化学反応を起こせませんから、脂肪からATPを作れません。精神科医の藤川徳美先生の著書「うつ・パニックは『鉄』不足が原因だった」にこの辺りの解説が簡潔に載っていますので紹介しておきます。

電子伝達系では、酸化的リン酸化という変化が起こります。これを行うためのNADHやFADH2が、ここでは水素イオンのモーターの回転を受けるなど複雑な代謝を経て、最終的に、クエン酸回路と電子伝達系で、ATPは合わせて36個作られます。大切なのは、この電子伝達系の働きの中に「鉄が必須」であるということです。(126ページ)

藤川先生の著書では、グルコース(ブドウ糖)からのATP産生の説明になっているので、36個のATPが作られるとなっていますが、脂肪酸(パルミチン酸)から作られるATP量は129個です。少々難しい文章になっていますが、ミトコンドリアでの大量のATP産生には鉄が不可欠だということが理解できれば問題ないでしょう。

現代日本人女性はほとんどが鉄不足

藤川先生の著書を読むとわかりますが、現代の日本人女性のほとんどが鉄不足に陥っています。日本人が好む食事には、鉄があまり含まれていないからです。それなら、日本人男性も鉄不足になりそうなのですが、ここに男女の違いがあります。

女性は、月経があるので男性よりも失われる鉄の量が多いです。だから、同じような食事をしていても男性より女性の方が体内の鉄が不足しやすいのです。一般的な血液検査では、ヘモグロビンの値を計測して、体内の鉄の量を調べます。多くの場合は、男女ともに基準値内に収まるので鉄不足はないと診断されます。

でも、藤川先生は、ヘモグロビンだけでなく貯蔵鉄がどれくらい体内にあるかも調べなければ、本当に鉄が足りてるかどうかはわからないとおっしゃっていますね。貯蔵鉄は、フェリチンとも呼ばれます。一般的な基準では、フェリチンは、男性で21~282ng/ml、女性で5~157ng/mlとされてますが、藤川先生は男女とも100ng/mlを目標値としています。

藤川先生の基準値に従えば、閉経前の女性は99%がフェリチン不足、すなわち鉄不足になるそうです。男性だと、フェリチン不足の人は女性よりも少ないですが、それでもフェリチンが100ng/mlを超えている人は全体の半数ほどです。

ただ、男性は30ng/ml未満の人は数%しかいませんから、重度のフェリチン不足に陥っている人は少ないです。閉経前の女性だと、70%くらいはフェリチンが30ng/ml以下ですから、ちょっとしたフェリチン不足では済まないですね。

鉄補給にレバーと煮干しもおすすめ

藤川先生の著書では、フェリチン不足の方に鉄のサプリメントの使用をすすめています。

また、普段の食事では、植物に多く含まれている非ヘム鉄では吸収率が数%と低すぎるので、動物性食品から鉄を摂取すべきです。動物性食品に含まれている鉄はヘム鉄が多く、吸収率は10~20%です。藤川先生の著書では、女性が1日に失う鉄量は1.35mgということですから、ヘム鉄で6.75~13.5mgは摂取すべきですね。鉄は赤身の肉に多く含まれていますから、鶏肉よりも豚肉、豚肉よりも牛肉の方が鉄補給はしやすいです。

鉄と言えば、このブログではレバーをおすすめしています。レバーは、鉄以外のミネラルも豊富ですし、ビタミンの含有量も多いです。特に豚レバーには鉄が多く含まれていますから、女性は10日に1回100グラム程度食べると良いと思います。

他に食べる煮干しも割と鉄が豊富に含まれています。間食で10グラムほどの煮干しを食べれば約1mgの鉄補給ができます。また、非ヘム鉄ではありますが、青のりにも多くの鉄が含まれているので、おかずにレモン汁と一緒に振り掛けて食べるのもありですね。

長々と書いてきましたけど、ここまで読めば、女性が糖質制限をしても思い通りに脂肪が減らない理由がわかったと思います。

脂肪をエネルギー利用するためには、鉄が必要です。そして、若い女性は鉄が不足しやすいです。だから、鉄を摂取せずに糖質制限をしても痩せにくいんですね。

糖質制限をするにしても、肉、魚、卵中心の食事にしなければ、良い結果が出にくいと思いますよ。

参考文献