筋肉がタンパク質でできていることを多くの人が知っていると思います。そして、筋肉を付けるためには、タンパク質を食べることが重要だということもわかっていると思います。
でも、いつタンパク質を補給するのが筋力アップに効果的かをご存知ない方は多いのではないでしょうか?
タンパク質は、運動後に補給すると筋肉が付きやすいと言う識者もいれば、運動前の補給が有効だと述べる専門家もいます。どちらの場合も、運動で破壊された筋肉の修復のためにタンパク質を補給すべきだという考え方が根底にあるのだと思います。
では、運動の前後どちらにタンパク質を補給した方が、筋力アップの効果がより高まるのでしょうか?
ラットの実験では運動前のタンパク質補給が有効
分子栄養学の専門家の三石巌先生の著書「高タンパク健康法」によれば、運動前のタンパク質補給が筋力アップに効果的だそうです。同書の163ページにラットを使った実験結果が掲載されているので以下に紹介します。
食事計画 | 運動 | 腓腸筋重量/体重 | 筋力(g)/腓腸筋重量 |
---|---|---|---|
普通食 | なし | 0.397 | 45.3 |
普通食 | あり | 0.471 | 71.1 |
運動前に高タンパク食 | あり | 0.536 | 82.8 |
運動30分後に高タンパク食 | あり | 0.500 | 75.9 |
運動2~3時間後に高タンパク食 | あり | 0.480 | 71.8 |
上の表の「普通食」を見ると、「運動なし」よりも「運動あり」の方が数値が高くなっているので、筋力アップには運動が必要だとわかります。だから、筋肉をつけるためには、まず運動をしなければなりません。
次に高タンパク食を見ると、「運動前に高タンパク食」が最も筋肉量が増えています。「運動30分後に高タンパク食」でも「普通食」より筋肉量が増えていますから、運動後でも高タンパク食は有効です。
ただし、「運動2~3時間後に高タンパク食」だと、「普通食」の「運動あり」と差がほとんどありません。
したがって、最も筋力アップに効果的なのは、運動前にタンパク質を補給しておくことです。
ラットの実験なので、人間にもそのまま当てはまるかはわかりませんが、運動と高タンパク食は筋力アップには欠かせない要素と言えそうです。
就寝前のタンパク質補給
タンパク質補給に関しては、就寝前も効果的だと言われています。
例えば、明治が製造販売しているプロテインのザバスには、運動後のプロテイン補給が最も効果的で、その次におすすめなのが就寝前のプロテイン補給だと書かれています。ちなみに3番目のおすすめは朝食時です。
タンパク質合成は睡眠時に行われますし、タンパク質から作られる成長ホルモンも睡眠中に多く分泌されます。だから、睡眠前にしっかりとタンパク質を摂取しておくことは、睡眠中のタンパク質合成に役立つと考えられます。三石先生の著書「医学常識はウソだらけ」でも、そのように述べられていますね。
人間の成長ホルモンは睡眠中に出る。そういう意味で、「寝る子は育つ」という言葉は真実を衝いている。この成長ホルモンは、子どもだけでなく大人にも出る。子どもの場合は文字どおり体を成長させるために使われるわけだが、大人の場合は、傷んだ組織を修復するために使われる。どちらの場合も当然、材料としてタンパク質が必要になる。夕食で十分にタンパク質を摂っていないと、成長や修復といった作業がはかどらない。昔から人間は、夜にご馳走を食べる習慣を続けてきたが、これは栄養学的に見ても合理的な選択だったのである。(223ページ)
太らないように夜は食事を控えめにするというのはダメですね。太るのが嫌なら高タンパクかつ低糖質の食事にすべきです。茶碗1杯の白米を食べるのなら、ゆで卵を2~3個食べる方が、睡眠時のタンパク質合成のことを考えたら有効でしょう。
太りたくないと言って米を食べるのは、酔っぱらいたくないと言ってお酒を飲むのと同じ。
人間の筋肉もその他の細胞も、タンパク質でできているのですから、健康な肉体を作るためにも高タンパクな食事を心がけることが大事です。