タンパク質の寿命の短さには驚く

人間の体の20%は、タンパク質でできています。水分が約60%ですから、水分を除けばタンパク質が身体全体の半分を占めていることになります。

体に占めるタンパク質の割合が高いということは、それだけ体にとって重要な成分であると言えそうです。ところが、タンパク質は重要な成分であるのにその寿命は、とんでもなく短いのです。

1時間も寿命がないタンパク質もある

タンパク質は20種類のアミノ酸のつながりでできています。つなげるアミノ酸が違えば、できあがるタンパク質も異なります。そして、寿命もタンパク質それぞれで違っています。

平野久先生の「タンパク質とからだ」という本を読んでいると、38ページにタンパク質の寿命について書かれていました。

タンパク質は合成後何年も経過してから分解されるもの、目の中でレンズの働きをするクリスタリンのように一生更新されないものもあります。同書を読むまでは、タンパク質は長い期間、体の一部として働いてくれているのだろうと思っていました。皮膚のターンオーバーは28日と言われていますから、どのタンパク質も、それくらいの寿命があるのだろうと。

ところが、タンパク質の中には短寿命のものがあり、「タンパク質とからだ」では、その半減期が記されています。

  • オルニチン脱水素酵素=0.2時間
  • RNAポリメラーゼ=1.3時間
  • カルボキシラーゼ=5.0時間

オルニチン脱水素酵素なんて、わずか12分で使えなくなるんですよ。こんなにすぐに天寿を全うして大丈夫なのかと心配になります。

一方で、長寿命のタンパク質も紹介されています。

  • アルドラーゼ=118時間
  • シトクロームc=150時間
  • 乳酸脱水素酵素=130時間

しかし、長寿命と言っても、1週間も働いていられないのですから、人間の時間感覚からすると、とても短命です。

タンパク質の再合成

寿命を終えて分解されたタンパク質は、アミノ酸に戻ります。

アミノ酸は、再びタンパク質の合成に回ったり、エネルギー利用されたり、捨てられたりします。

短寿命のタンパク質でも、再合成の仕組みがあるから、人間は食事の間隔を数時間あけることができるわけですね。もしも、食事から摂取したタンパク質しか、体内のタンパク質合成に使えないというのでは、12分に1回はオルニチン脱水素酵素の合成のためにタンパク質を補給しなければならなくなります。

では、タンパク質の再合成の機能が人間に備わっているのなら、食事からタンパク質をそれほど食べなくても良いのでしょうか?

この点は、詳しくはわかりませんね。人によって言うことが違いますし。

タンパク質の摂取量を減らせば、体内のアミノ酸のリサイクル率が高まると言う人もいます。一方で、体内のタンパク質はスクラップ・アンド・ビルドが絶え間なく起こっているので、ビルドに必要なタンパク質を欠かすべきではなく、頻回にタンパク質を摂取した方が良いと言う人もいます。

保険をかけるならタンパク質は多め

どちらの見解も、その通りなんじゃないかと思えます。

ただ、両者は真逆のことを言っていますから、並び立つことはなく、どちらかを選択しなければなりません。

私は、保険をかける意味で、タンパク質は多めに食べた方が良いと思っています。タンパク質の1日の必要量は体重に1gを乗じた量と言われています。50kgの人なら50gが1日に食べなければならないタンパク質の量です。さらに保険をかけるので、タンパク質摂取量は、それよりも多くなります。10%の保険で良いと考えるのなら55g、50%の保険が必要だと考えるなら75g、いやいや2倍は必要だと言うなら100gのタンパク質摂取となります。

加えて、短寿命のタンパク質の合成が速やかに行われるようにと考えるなら、食事の頻度は多くしなければなりません。

しかし、頻回に食事をとることは難しいですから、タンパク質の補給回数は、その人の生活習慣に依存することになるでしょう。朝、昼、夜の3食と間食を併せれば4回から5回くらいは、1日にタンパク質を補給できる機会はあると思います。

タンパク質の摂取量を多めにするか少な目にするかは、実際に自分の体で試して結論を出せば良いでしょう。

私の場合は、タンパク質摂取量を増やした方が体調が良くなりました。高タンパク食にして、肌荒れしにくくなりましたからね。

なお、私の1日のタンパク質摂取量は体重×2g程度です。

参考文献