肉を避けた食事が栄養不足を招く

飽食の時代と言われるようになって、随分と長い年月が経っています。

20世紀からすでに言われていましたから、現代日本人の大多数が飽食の時代に生まれ、飽食の時代に育ってきた世代と言えます。

飽食という言葉から、現代日本人は十分に栄養素を補給できているように思えます。でも、周りを見ていると、栄養不足のような人が大勢いるように感じます。街中に食品は溢れていますが、人体にとって本当に必要な栄養素を補給できていないのでしょうね。

きっと、肉は健康に悪いと思い込み、肉を控える食事をしている人が、栄養不足に陥っているのだと思います。

タンパク質は全て同じではない

肉を食べることで得られる栄養素として、真っ先に思いつくのはタンパク質です。

牛肉、豚肉、鶏肉、どれも100グラム当たりで、15~20グラム程度のタンパク質を補給できます。タンパク質の1日の必要量は、体重×1グラムとされていますから、体重50kgの人なら肉を300グラム程度、70kgの人なら肉を400グラム程度食べれば、1日の必要量を補給できます。

ただし、タンパク質はどれも同じではなく、食品によって良質度が変わります。タンパク質の良質度の指標にプロテインスコアがありますが、肉のプロテインスコアは以下の通りです。

  • 豚肉=90
  • 鶏肉=87
  • 牛肉=80

プロテインスコアは100が最高です。人間が必要とする必須アミノ酸の割合に最も近い食品が100となります。

だから、豚肉はかなり優秀なタンパク質と言えますし、牛肉も80なのでまずまず優秀なタンパク源です。

でも、体重50kgの人が、豚肉だけで50グラムのタンパク質を補給しても、その人に必要なタンパク質量の45グラムしか補給していないのと同じです。豚肉のプロテインスコアが90なので、50グラムの90%分しか必要なタンパク質を補給できていないんですね。

なので、肉を食べて、自分の体重×1グラムのタンパク質を補給していても、10%~20%はタンパク質が不足する計算になります。したがって、肉だけで1日に必要なタンパク質を補給しようと思ったら、体重×1.11~1.25グラムのタンパク質を補給しなければなりません。

ちなみに植物性食品の中で優秀なタンパク源とされている大豆のプロテインスコアは56です。体重50kgの人が、大豆だけで1日に必要なタンパク質を補給しようと思ったら、100グラム近いタンパク質を摂取しなければならないので非効率です。

タンパク質不足はビタミンB群不足も招く

肉類は、タンパク質が豊富なわけですが、加えてビタミンB群も豊富に含まれています。

下の記事を見てもらえば、米よりも圧倒的に肉類の方がビタミンB群が多く含まれているのがわかるはずです。

米は高糖質・低タンパクの食材。一方、肉類は高タンパク・低糖質の食材。

そして、米は低ビタミンB群の食材、肉類は高ビタミンB群の食材。

どちらが、栄養的に優れているかは明らかでしょう、もちろん肉類が優れているんですよ。

ビタミンB群が不足しているかどうかの簡単な確認方法が、姫野友美先生の著書「成功する人は缶コーヒーを飲まない」の46ページに紹介されています。以下の項目が当てはまる人は、ビタミンB群不足の可能性があります。

  • 物忘れが多くなった。
  • 寝ても疲れがとれない。
  • 肩こり、腰痛がなかなか治らない。
  • 口内炎、口角炎ができやすい。
  • 好きなことでもやる気が起きない。

ビタミンB群は、糖質、脂質、タンパク質からアデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれるエネルギーを作るために欠かせない栄養素です。疲れやすくなったり、やる気が起きないといった不調は、エネルギー不足の可能性があることは容易に想像できると思います。

白米には、ビタミンB群がほとんど含まれていないので、毎食のように食べていればビタミンB群が不足しやすくなります。しかも、白米に多く含まれる糖質からATPを作り出すためには、多くのビタミンB群を消費するので、さらにエネルギー不足に拍車をかけます。ついでに言うと、アルコールの摂取もビタミンB群を消費しやすくなります。

ビタミンB群は、肉類に多く含まれていますから、肉類を食べないことでビタミンB群が不足しやすくなります。そして、肉類を食べず白米でお腹を満たしていると、タンパク質も不足します。

すなわち、タンパク質不足とビタミンB群不足は、同時に起こりやすいということですね。

姫野先生の著書には、タンパク質不足タイプに起こる不調についても、45ページで紹介されています。

  • 思考力が低下した。
  • 肌荒れが気になる。
  • 胃もたれしやすくなった。
  • 運動をしているのに筋肉がつかない。

タンパク質不足もビタミンB群不足も、お肌の不調や体力の低下と関わっていることがわかります。そして、これらの不調は、加齢が原因と言われやすいものです。

でも、もしかすると、タンパク質とビタミンB群不足が原因かもしれませんよ。

肉を食べないと亜鉛も鉄も不足する

さらに肉類を食べないと、亜鉛や鉄も不足しやすくなります。

亜鉛不足による不調も、姫野先生の著書の47ページで紹介されています。

  • 抜け毛が増えた。
  • 食欲がわかない。
  • ささくれができやすい。
  • 風邪をひきやすくなった。
  • 傷や虫さされ痕の治りが遅い。
  • 性欲が落ちた。
  • 味覚や嗅覚が鈍くなった。

また、鉄不足による不調も48ページに記されています。

  • 寝起きが悪い。
  • イライラしやすい。
  • 集中力が低下しやすい。
  • ささいなことが気になる。
  • シャンプーのとき髪が抜けやすい。
  • 食欲不振。
  • 湿疹ができやすい。
  • 肌荒れ、あごにニキビができやすい。
  • 立ちくらみ、めまいが起きる。

亜鉛不足も鉄不足も、やはり、肉類を避けた食事が原因で起こりやすいです。また、鉄不足は、激しい運動をしている方にも現れやすい不調です。

亜鉛も鉄も、肉類、特に牛肉に多く含まれていますから、積極的に食べたいですね。

ただ、牛肉は値が張るので、毎日食べると食費が大幅に増えてしまいます。

なので、食費を抑えたい場合には、豚肉や鶏肉を多めに食べるのがおすすめです。また、卵はプロテインスコア100の良質なタンパク質を補給できますし、ビタミンC以外のその他の栄養素も摂取可能です。鉄と亜鉛を多く摂りたい場合は、1週間に100グラム程度のレバーを食べると良いでしょう。

栄養不足を防ぐためには、野菜中心の食事が大切と言われます。

でも、野菜ばかり食べていては、タンパク質が不足します。ビタミンB₁₂、亜鉛、鉄も大して補給できません。

栄養不足の予防には、肉中心の食事が重要ですよ。

参考文献