手洗いのし過ぎは不潔のもと

感染症を予防する基本は、身体を清潔にすることと言われていますよね。

細菌やウィルスが体中に付着していると、体内に侵入されて感染しやすくなるというのは、誰でも想像できます。だから、帰宅した時は、しっかりと手洗いをすることで感染症を予防できると言われています。

では、感染症を予防するのに効果的な手洗いとはどういったものなのでしょうか?

流水で10秒洗えばOK

感染予防のための手洗いの工程は、10工程以上はあるようです。

流水で手を洗った後、洗剤をつけて手の平、手の甲、指の間をくまなく洗い、そして、洗剤を流水で洗い流します。手を乾燥させる際は、タオルなどを人と共用してはいけません。仕上げは、アルコールによる消毒です。爪周辺や手指全体によく刷り込んで完了です。

これを1回の手洗いで行う必要があるそうです。2回洗いも推奨されることがあるみたいですね。

でも、本当にここまでしなければ感染症を防げないのでしょうか。

藤田紘一郎先生の著書「手を洗いすぎてはいけない」を読んでいると、こんなことはする必要はなく、両手を軽くこすりながら、流水で10秒間流すだけでOKと書かれていました。これだけで、免疫力が強化されるそうです。

たったの10秒で大丈夫なのかと不安になるかもしれませんが、やってみれば、流水で10秒間でも、意外と長い時間手を洗っていることがわかります。私なんて3秒くらいしか洗ってないですよ。

手を洗いすぎると汚くなる

流水だけで本当に清潔になるの?

そう思う人がいると思いますが、大丈夫です。ペンキが手についたとか、特殊な事情がない限り、流水だけで手はきれいになります。そして、風邪やインフルエンザにかかりやすくなるということもありません。

むしろ、感染症を予防するためと言って、洗剤を使って、頻繁に手洗いをする方が免疫力が下がり、感染しやすくなります。

我々の皮膚には、表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌といった皮膚常在菌が棲んでいます。彼らは、普段は悪さをすることはありません。それどころか、脂肪酸の皮脂膜を作って、肌を弱酸性の状態に保ってくれています。病原体は、酸性の場所では生息できないので、皮膚常在菌が、しっかりと皮脂膜を作ってくれている限り、そうそう感染することはありません。

ところが、洗剤を使って、せっせと手洗いをしていると皮膚常在菌を洗い流してしまい、逆に感染症にかかりやすくなります。

石けんを使うと、一回の手洗いで、皮膚常在菌の約九〇パーセントが洗い流されると報告されています。ただし、一割ほどの常在菌が残っていれば、彼らが再び増殖し、十二時間後にはもとの状態に戻ることもわかっています。したがって、一日一回、お風呂に入って体をふつうに洗う、という程度であれば、弱酸性のバリアを失わずにすみます。(36ページ)

早い話が、トイレの後や帰宅後に必ず洗剤で手洗いをしていれば、皮脂膜が形成される時間を確保できなくなるので、病原体にやられやすい体になるということですね。

だから、手洗いは、流水で10秒やれば十分なのです。それ以上は、かえって不潔になるだけです。洗いすぎは不潔のもとです。

肌の乾燥も洗いすぎが原因

お肌を美しく保つためには、まずは清潔が大事なんて言って、手も顔も洗剤を使って洗っていては美容面でも悪い影響が出ます。

加齢で、肌が乾燥しやすくなると言われていますが、乾燥の原因は洗いすぎです。

皮膚を洗いすぎると皮脂膜がはがれ落ちます。すると、角質層にすき間が生じ、皮膚を組織している細胞がバラバラになっていきます。こうなると、皮膚に潤いを与えている水分の多くが蒸発して、カサカサしてきます。この状態が乾燥肌です。
(中略)
皮膚常在菌のつくる皮脂膜は、天然の保湿成分です。皮膚にとって、皮脂膜ほど肌によい”保湿剤”はありません。こんなに大事なことも知らず、多くの人は、常在菌の築いてくれる皮脂膜を手洗いで落とし、人工的につくられた高価な保湿剤を塗っているのです。(38~39ページ)

お肌にとって良かれと思っていた手洗いが、実は、お肌の老化を促進させているんですね。

皮膚は、洗えば洗うほど老化します。衣類だって、頻繁に洗濯していれば傷んでくるじゃないですか。

皮膚や皮脂膜は、衣類と違って再生します。しかし、皮膚や皮脂膜が再生される前に洗剤を使って洗えば、肌は劣化していきます。

美容のためにも、免疫力を高めるためにも、無駄に手洗いをしないことが大切ですね。

参考文献