落ちた食べ物を拾って食べることも腸内環境を整えるために大切

食事中にうっかり食べ物を畳や床の上に落とすことがありますよね。

これって、拾って食べますか?

私は、自宅では拾って食べますけども、外で落とした食べ物は諦めます。おそらく、多くの人はそうではないかと思うのですが、どうでしょうか。

落ちたものを食べるとアレルギーになりにくい

藤田紘一郎先生の著書「手を洗いすぎてはいけない」を読んでいると、「身の回りの細菌と仲良くすることが、アレルギーを遠ざける」と書かれていました。

落ちたものを拾って食べると、変な細菌まで体内に入って来るので危険ではあるのですが、我々の腸はすべての細菌を腸内に棲まわせるようにはなっていないようです。

腸壁には、IgAという抗体が存在しています。抗体は、異物の目印(抗原)に結合して破壊する作用があり、どのよう抗原にもぴったりと合う抗体を免疫システムは作り出すことができます。だから、異物が入ってきても、その異物の抗原に合う抗体を作ってしまえば、そのうち排除されます。

腸内に存在するIgA抗体がくっついた細菌だけが腸に棲むことが許され、そうでない細菌は排除される仕組みになっています。だから、落ちた食べ物に付着した細菌は、IgA抗体の選別を受け、合格したものが腸に棲み、不合格だったものは排除されます。

こうやって腸内環境は整えられていきます。

腸内環境を整えるためには、IgA抗体が多く分泌されている必要があります。IgA抗体は、母親の初乳に多く含まれているので、赤ちゃんを母乳で育てた方が、腸内環境が整いやすいようです。

寄生虫を駆除するとアレルギーが増えた

藤田先生の著書の69ページに興味深いグラフが掲載されています。

1950年頃は、日本人10万人中600人以上が結核に感染していたのが、1970年頃には100人にまで減少しています。また、寄生虫がいる人の割合も、1960年頃は20%近かったのですが、1970年頃には3%程度まで低下しています。

結核は、予防接種や治療薬によって減少したものなのでしょう。

寄生虫は、戦後にGHQが日本を統治している間、アメリカ人が日本の野菜を生で食べて腸に回虫がたくさん発生したことから、一斉に駆除が行われて減少しました。

結核も寄生虫も減って良かったね、となりそうですが、これらの減少と反対にアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎が急増し始めます。1963年に初めて報告されたスギ花粉症も、その後、爆発的に増えています。

アレルギーの増加は、回虫を駆除したことが原因だと藤田先生は述べています。

回虫は、腸内に住み、糞をします。その糞には、DiAgという抗体を不活性化させる成分が含まれています。DiAgは、寄生虫を攻撃する抗体を働かせなくするだけでなく、アレルゲンにも抗体が反応しなくなる作用があります。

花粉症などの自己免疫疾患は、免疫細胞が異物に過剰に反応し、正常細胞まで攻撃してしまう病気です。糞尿を肥料にして野菜を育てていた時代は、多くの日本人の腸に回虫が棲んでおり、DiAgがアレルギーを抑えていたと考えられています。

藤田先生は、そのことを突き止め、DiAgの薬を作ったのですが、副作用があるためにアレルギーの薬として使うことができませんでした。

細菌や寄生虫は、病気の原因と考えられがちですが、我々の体を病原体から守ってくれる良い働きをしてくれるものもいます。細菌は汚いと言って避けるよりも、口から入れて、邪魔なものは外に出し、必要なものは腸内に止める方が健康には良いんじゃないですかね。

異物は勝手に腸が排除してくれるのですから、細菌を怖がりすぎる必要はないでしょう。

ただし、落ちた食べ物を拾って食べても良い場合と悪い場合があります。

キッチンは生肉を扱うことが多いので、床に落とした食べ物は捨てた方が安全です。また、浴室で落とした食べ物も食べない方が良いようです。

自宅での食事中にテーブルや床に落とした食べ物なら、気にせず食べて腸内環境を整えましょう。

参考文献