緊急事態宣言が、5月31日まで延長されることになりました。さらにこれまでの4都府県に加えて愛知県と福岡県にも緊急事態宣言が発出されることが決定しました。
ただ、休業要請は緩和されています。強い措置でも効果が出ないのなら、人の流れを止める緊急事態宣言そのものに意味がないとわかりますから、休業要請の緩和は、合理的な判断と言えます。メディアでは、緩和に批判がありますが、この点は政府の判断が妥当と思いますね。
もちろん、今すぐ緊急事態宣言を解除すべきなのですが。
新規陽性者数の増加の内訳
1月13日から5月7日までの陽性者の増加数を確認していきましょう。なお、データは、大阪府の「新型コロナウイルス感染症患者の発生状況について」のページから取得しています。
まずは、経路別の陽性者数の増加表です。
飲食店は、いつも通り、22人のまま増えていません。
医療機関と施設は、増加傾向です。
年代別の増加表です。
数は少ないのですが、就学児と未就学児の増加率が高くなっています。また、60代の増加率も高くなってきています。
増加数では、20代が最も多いのは、これまでと同じです。
不明の数が114人と一気に増加しました。最初は、ホームレスの方なのかと思ったのですが、性別不明の人数も増えているので、これは、事務処理の都合と考えられます。特にゴールデンウィーク中は、医療機関などの報告の内容に年齢や性別の記載が漏れていた場合、休診中なので問い合わせることができません。だから、年齢や性別が確認中になっている人数が多かったのでしょう。
1月13日から5月7日までの陽性者数の推移です。
この1週間で一気に陽性者数が減少しましたが、これは、ゴールデンウィークの影響でしょうね。
大阪府民が外出を控えたということではなく、大阪府の職員の方たちが休んでいたから、集計が遅れていたり、検査数が減ったりして陽性者数が少なくなったものと思われます。
5月7日は、ゴールデンウィークが明けて2日後のため、陽性者数が一気に増え、1,005人となりました。毎週月曜日の陽性者数が減り、火曜日の陽性者数が増える傾向があります。これは、休日が明けて2日後に溜まっていた未処理分が一気に集計されることが理由と思われます。だから、5月7日に陽性者数が増えたのも、休日明け2日後に未処理分が集計されたからなのでしょう。
検査数の推移も見ておきましょう。
ゴールデンウィークの期間は、これまでよりも検査数が少なくなっているのがわかります。
そして、検査数が少なかった影響が陽性率に表れています。
5月7日には、1週間平均の陽性率が8.1%まで上がりました。
ゴールデンウィーク期間中に検査数が少なかったから、陽性者数が減っているわけですが、ゴールデンウィークが明けた5月7日でも陽性者数が1,005人と以前よりも少なくなっているので、全体的に感染者数は減少傾向にあると思います。
ただ、減少していると言っても、ここ3週間くらいの緩やかな減少の延長線上にあるような陽性者数の減り方なので、緊急事態宣言の効果で減ったようには見えません。
経路別と年代別の陽性者数の推移
次に経路別と年代別で陽性者数の推移を見ていきます。
まずは、経路別の陽性者数の推移です。
ゴールデンウィーク中に感染経路不明が一気に減りました。でも、これは検査数の減少が理由と考えられるので、ゴールデンウィーク中も通常通りに検査をしていれば、もっと多かったと思います。
上のグラフから、医療機関、施設、他を取り出したのが以下のグラフです。
永江一石さんのブログの以下の記事で、分科会の尾見会長と厚労省が、飲食店で先行的に集団感染が起こり、それが家庭内感染や院内感染につながっていると述べている理屈が紹介されていました。
要するに最初に集団感染が起こったところから、周囲に感染が広がっていくという論法ですね。
それなら、上のグラフの1月13日から1月25日の期間を見ると、先行して医療機関と施設で集団感染が起こり、その後で、職場や学校など「他」に伝播したと捉えることができます。しかも、この期間は、飲食店での陽性者数はゼロでしたから、飲食店で若者が騒いで感染を拡大させた形跡は見当たりません。
したがって、感染を拡大させているのは、医療機関と施設であり、高齢者が若者にコロナウィルスを移していると見ることができます。
しかし、4月19日頃を見ると、施設と「他」での陽性者数が多くなっており、その後で医療機関で集団感染が見つかっています。この部分だけを見ると、職場や学校で先行して集団感染が起こり、医療機関に伝播したようにも考えられます。
結局、切り取った期間によって、どうとでも解釈できるということですね。
むしろ、飲食店で若者が騒いで感染を拡大させているという固定観念のせいで大きな被害が出ているのですが。これについては後で説明します。
続いて年代別の陽性者数の推移です。
ゴールデンウィーク中に灰色の20代以下の陽性者数が最も少なくなりました。一方、60代以上は増加傾向です。1月の緊急事態宣言の期間中は、20代以下の陽性者数が先に減少し始め、その後で、全体の陽性者数も減り始めました。今回も同じような傾向になりそうです。
年代別の陽性者数の累計です。
未就学児が増え続けているのが気になります。
重症者残留数が減り始める
重症者の推移を確認しましょう。
前回の記事で、5月8日頃に重症者残留数が減り始めるのではないかと予想しましたが、それよりも早く5月5日から減少に転じました。
新規の重症者数は、まだ、毎日30人前後は発生しているのですが、回復や死亡などで重症解除となった人の数が新規重症者数を上回り始め、重症者残留数が減り始めました。
こちらは、重症者回転期間の推移です。
ピークは、4月12日の41.4日です。5月7日は19.7日まで短縮しています。回転期間が14日程度まで短くならないと重症者残留数が減ってこないのではないかと思ったのですが、良い方に予想が外れました。
陽性者数が減少傾向にあるので、これから新規重症者数が減少し始め、重症者残留数も一気に減り始めると思います。
施設での集団感染で死亡者が増加
1月13日から5月7日までの毎日の死亡者数です。
5月7日に過去最高の50人の死亡が確認されました。ただ、死亡日は、4月23日から5月6日までの期間なので、5月7日に50人の方が亡くなったのではありません。しかし、それを考慮しても、死亡者数は増えています。
4月中旬に大阪府の高齢者施設で集団感染が起こり、14人の方が亡くなりました。入所者の3分の1の死亡者ということですから、大きな被害です。この事実は、ネットニュースで知ったのですが、テレビでは見ていません。
飲食店で若者が騒いでいるとの固定観念があるせいで、高齢者施設での感染予防が疎かになっているのではないでしょうか。
これまでの大阪府の新型コロナウィルスの被害を見ても、高齢者施設と障害者施設での被害が多いのは明らかです。それなのに施設の入所者や職員の方のワクチン接種が、医療従事者より後になっているのですから、おかしな話です。
1月13日から5月7日までの大阪府のコロナ感染による死亡者数は965人です。
30代が2人、40代が8人、50代が28人です。
このところ、60代の死亡者数が増えてきています。3月5日の段階では全死亡者数の5%だったのが、今は7.2%まで上がっています。30代や40代の死亡が確認され始め、死亡者数の若年化が進んでいるように思えましたが、どうやら60代の死亡者数の増加が、死亡者の平均年齢を引き下げているようです。50代も少しずつ増えていますね。
なお、1月13日から5月7日までのコロナウィルスの陽性者の推定生存率は以下の通りです。
- 90歳以上:80.1%
- 80代:86.9%
- 70代:94.2%
- 60代:98.4%
- 50代:99.6%
- 40代:99.89%
- 30代:99.97%
- 20代以下:100.0%
最近の死亡者数の増加で、60代から80代の生存率が下がりました。それでも、高い水準を維持しています。
分子栄養学の三石巌先生は、90代で風邪にかかって亡くなっていますから、90歳以上になると、コロナに関わらず感染症にかかると命の危険があるということですね。コロナだけが、特別ではありません。