負のフィードバック作用があるのでホルモンが分泌され続けることはない

ホルモンは、体の中で分泌され、各器官の働きの調節を行っている物質です。

男性ホルモンや女性ホルモン、血糖値を下げるインスリンなど、ホルモンの種類は多数あります。身体の状態が常に一定に保たれているのは、ホルモンの働きのおかげです。

あるホルモンが分泌されすぎた場合には、その分泌量を抑制するので、特定のホルモンが分泌されっぱなしになることはありません。このように必要以上にホルモンが分泌されないよう調節するしくみを負のフィードバック作用といいます。

血糖値が下がり続けることも上がり続けることもない

心身にストレスがかかり続けていると、副腎皮質から糖質コルチコイドというホルモンが分泌されます。それにより、ストレスが緩和されるわけですが、同時に血糖値も上昇します。

だから、ストレスにさらされ続けると、糖質コルチコイドの影響で血糖値が上がり糖尿病になるといわれています。

しかし、先ほども述べたように負のフィードバック作用が働くので、糖質コルチコイドが出っぱなしになることはありません。ストレスを感じたら、視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が分泌され、それが、脳下垂体前葉に働き副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が分泌されます。そして、副腎皮質に副腎皮質刺激ホルモンが働いて糖質コルチコイドが分泌されるのですが、この時、糖質コルチコイドは、脳下垂体前葉と視床下部に働きかけ、これ以上、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンと副腎皮質刺激ホルモンを分泌しないようにとの指令を与えます。

また、糖質摂取やストレスがかかった時に血糖値が上昇すると、すい臓のβ細胞からインスリンが分泌されて血糖値が下がります。そして、血糖値がある程度下がると、インスリンを分泌しないように指令が下されます。その指令は、すい臓のD細胞から分泌されるソマトスタチンが担っています。ソマトスタチンは、すい臓のα細胞から分泌されるグルカゴンの働きも調節します。グルカゴンは、血糖値を上げる働きをしますが、ソマトスタチンが分泌されることで、必要以上に血糖値が上がらないようになっています。

負のフィードバック作用が働くから一方に傾かない

このようにホルモンの分泌は、促進と抑制が上手に行われているので、ホルモンが分泌され続ける状態がすっと続いたり、ホルモンが全く分泌されない状態がずっと続くことはありません。

しかし、世の中には、やたらと、ホルモンの一方の働きばかりを強調し不安をあおる人がいます。例えば、糖質制限をすると低血糖になって倒れるとか。でも、血糖値が下がれば、グルカゴンなどの血糖値を上げるホルモンを分泌するようにとの指令が下されるので低血糖になることはありません。

ただし、ホルモンバランスが崩れると、身体の状態が一方に傾くことはあります。インスリンを分泌するβ細胞が減れば、上がった血糖値を下げるのが難しくなりますから、高血糖の状態が持続しやすくなります。それならと、インスリンを投与すれば、今度は血糖値を下げすぎてしまい低血糖になる危険があります。

基本的に我々の身体は、何もしなくても、勝手にホルモンがちょうど良い加減に分泌されるので健康を維持することができます。しかし、悪い生活習慣が長く続くことで、ホルモンの分泌を調節する機能がおかしくなってしまうと、健康維持が難しくなります。

だから、心身ともに健康的な生活をしましょうと言われるわけです。でも、何が健康的な生活なのか、よくわからないですよね。世の中には、様々な健康情報があふれかえっていますが、どれが正しいのか判断が難しいです。

はっきりわかっているのは、糖質を過剰に摂取すると、そのうちインスリンが分泌されなくなり、血糖値が高い状態が慢性化するということですね。

とりあえず、ホルモンの一方の働きばかりをやたらと強調し、それが不健康にしているといった情報を耳にした時には、負のフィードバック作用があることを思い出してください。

参考文献