糖質制限を指導せずSGLT2阻害薬を処方するのはどうなんだろう

糖尿病の治療薬として、近年、SGLT2阻害薬が注目を集めています。

SGLT2阻害薬は、尿細管からの糖の吸収を邪魔して血糖値を下げる薬です。だから、血糖値が下がりにくい糖尿病の方にSGLT2阻害薬を処方するのは合理的です。また、SGLT2阻害薬を使用すると体内でケトン体が合成されやすくなり、それが、心臓や腎臓を保護する働きがあることもわかりました。

何かと糖尿病の方にはありがたいSGLT2阻害薬ですが、ケトン体って危険な物質だって言ってましたよね?

糖質制限と同じ

糖尿病の方が、糖質制限をすると早死にするとか、ケトアシドーシスになって危険だとかいろいろ言われていたのにそれと同じ効果をもたらすSGLT2阻害薬は絶賛しているのですからおかしな話です。

テレビの健康番組でも、SGLT2阻害薬の良い面を紹介していましたが、糖質制限と効果は同じだとは言いません。

糖質制限をしていても、体内でケトン体が合成されます。SGLT2阻害薬と同じです。と言うか、SGLT2阻害薬が糖質制限と同じという方が正しいですね。薬の力で糖質制限させているだけですから。

ケトアシドーシスは、ケトン体が増加し体液が酸性に傾いて不調をきたす病気ですが、インスリン分泌が確保されている健常人の場合、糖質制限をしてもケトアシドーシスになりません。糖尿病の方でも、インスリンが分泌されている場合にはケトアシドーシスにはならないと、糖質制限をすすめているお医者さんは、昔から言ってました。

SGLT2阻害薬が登場しても糖質制限は推奨されない不思議

SGLT2阻害薬の登場で、普通なら、糖質制限食が糖尿病の治療食として推奨されるようになると思いますよね。でも、そうなりませんでした。さすがに以前のように糖質制限は絶対ダメとは言わなくなりましたが、短期間だけ認めるという姿勢なので、糖尿病の治療食として糖質制限食は推奨されていません。

こういうのを見ると、医療もビジネスに変わりないんだなと思いますよね。効果があっても儲からない治療は普及しないのも当然です。こういう姿勢が、患者を怪しい治療に走らせる原因になっているのかもしれませんよ。「あの病院は金儲けのことばかり考えて高額な治療しかしない」と患者が考えて、何の根拠もない民間療法を選択するのは不幸なことです。

SGLT2阻害薬は、糖質制限と同じ効果をもたらすのですから、糖尿病患者には、まず糖質制限を指導すべきでしょう。糖質制限がうまくできない場合にSGLT2阻害薬を処方した方が、国民にとっても医療費の節約になって良いですよね。