炭水化物は推定平均必要量も目安量も設定されてないのに食べる必要があるらしい

厚生労働省が公表している日本人の食事摂取基準2015年版では、炭水化物は総摂取カロリーの50%から65%になるように食べましょうとされています。

炭水化物の摂取カロリーは、何か理由があって設定されているのだろうと思い、日本人の食事摂取基準を少しばかり読んでみました。すると、なかなか興味深いことに気づきました。

ブドウ糖の1日の必要量は100グラム

日本人の食事摂取基準2015年版では、ブドウ糖は、脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣、骨格筋等のエネルギー源になると記載されています。そして、脳の1日のブドウ糖必要量は75グラムで、その他も合わせると少なくとも100グラムはブドウ糖が必要になるそうです。

しかし、ブドウ糖は、肝臓で乳酸、アミノ酸、中性脂肪の分解産物であるグリセロールから作り出せるので、ブドウ糖100グラムは真に必要な最低量ではないとのこと。

そのため、この量を根拠として推定必要量を算定する意味も価値も乏しい。さらに、炭水化物が直接ある特定の健康障害の原因となるとの報告は、後述するように、生活習慣病の一種としての糖尿病を除けば、理論的にも疫学的にも乏しい。そのため、炭水化物については推定平均必要量(並びに推奨量)も耐容上限量も設定しない。同様の理由により、目安量も設定しなかった。(144ページ)

炭水化物には、推定平均必要量も耐容上限量も目安量も設定されていません。だから、普通に考えると炭水化物を食事から摂取する必要はないとなるはずです。

脂質の摂りすぎは生活習慣病の恐れがある?

それなら、1日に必要なカロリーは脂質やタンパク質だけで賄っても良さそうに思うのですが、どうもそうではないようです。

脂質の摂り過ぎが冠動脈性心疾患のリスクを高めるとされているからです。

低脂質/高炭水化物食は食後血糖値及び空腹時トリアシルグリセロール(中性脂肪)値を増加させ、血中HDL コレステロール値を減少させる。健康な人において、このような食事をしても、動脈硬化症、肥満、糖尿病が増加することを示す報告はないが、長期間にわたってこのような血中脂質パタンが続くと、冠動脈性心疾患のリスクが高くなる。(112~113ページ)

日本人の食事摂取基準2015年版では、飽和脂肪酸(動物性脂肪)摂取量と心筋梗塞罹患との間に強い関連が認められないという記述も見られますが、脂質の摂り過ぎは健康に良くないという立場のようです。

炭水化物摂取量は差引計算

脂質の摂取量が多くなると生活習慣病が懸念されることから、日本人の食事摂取基準2015年版では脂質の目標量は総エネルギー量の20~30%とされています。タンパク質についても、総エネルギーの13~20%という目標量が設定されています。

では、炭水化物の目標量はどのようになっているかというと、総エネルギー量から脂質と炭水化物の摂取割合を差し引いて計算しています。

脂質の下の値20%とタンパク質の下の値13%を足すと33%です。総エネルギー量100%から33%を差引くと67%となり、これが炭水化物の摂取量の上の値となります。しかし、精製度の高い穀類や甘味料や甘味飲料、酒類は数多くのミネラル、ビタミンの含有量が他の食品に比べて相対的に少ないことから、上の値よりもやや少ない65%を炭水化物摂取量の上の値として設定したようです。

また、炭水化物摂取量の下の値は、脂質の上の値30%とタンパク質の上の値20%を合計した50%を総エネルギー量100%から差し引いた50%としています。

このように炭水化物の1日の摂取量は、差引計算で導き出されたものであり、炭水化物の必要量を直接導き出したものではないのです。炭水化物の1日の摂取量を差引計算で求めたのは、炭水化物は健康に悪い影響を与えないだろうという考え方が根底にあるからのようですね。

炭水化物は菌血症の原因になる

炭水化物、脂質、タンパク質の三大栄養素の摂取割合を変えようと思うと、それぞれを摂取する利点と欠点が明らかにされていかなければならないでしょう。

炭水化物の摂取が体に悪いとなれば、摂取割合は総エネルギー量の50%より低くなるでしょう。また、脂質が体に悪い影響を及ぼさないということが分かってくると、脂質の摂取割合は30%よりも多くなるはずです。

日本人の食事摂取基準は5年に1回改訂されるので、その間に研究が進めば、三大栄養素の摂取比率が変わるかもしれませんね。

今後、炭水化物の摂取割合は低く設定されていくと思います。その理由の一つは、炭水化物摂取が菌血症を起こすことが分かってきているからです。

菌血症は、血液の中に細菌が入り込んだ状態のことで、動脈硬化の原因になります。歯科医の花田信弘先生の著書「白米が健康寿命を縮める」によると、血液への細菌の侵入は口と腸の両方が考えられていたのですが、DNAシークエンスという技術の登場で、口の中の細菌が血液に侵入していることが分かったそうです。

口からどうやって細菌が血管に侵入するのか?

その答えは、歯周病や虫歯です。どちらも炭水化物を食べることで起こる疾患です。歯と歯茎の間から体内に侵入した細菌が、血管に炎症を起こし、それを治すためにコレステロールが必要になります。

LDLが悪者扱いされた理由は、動脈硬化を起こした血管を調べたところ、そこにLDLコレステロールが見つかったからです。それによって、「LDLコレステロールこそが、動脈硬化の犯人だ」と誰もが思うようになってしまったのですが、じつは動脈硬化の本当の犯人は、血管に起こる炎症だ、ということがわかってきました。LDLコレステロールは、その炎症による血管の損傷を修復するために、細胞膜の材料を届けにきていただけだということがわかってきたのです。(37ページ)

このように炭水化物摂取により菌血症が進み、慢性炎症が発生して動脈硬化になると分かってきていますから、炭水化物の摂取量は少なくした方が良いですね。

参考文献