日本人は、炭水化物(糖質)が多く含まれている米を主食とする食生活をしている人が多いですよね。
中には、「米こそが日本人の身体を作っているのだ」と言わんばかりの米愛好家もいます。
日本人に限らず、人間の身体はタンパク質が土台となっているので、タンパク質含有量が少ない米を主食とするのは不自然です。その不自然な食生活を続けていると、やがて糖尿病になってしまいます。
糖尿病になると、様々な合併症を引き起こしますが、その中には糖尿病性筋萎縮症と呼ばれるものもあります。
太っていても筋肉が減るサルコペニア肥満
糖尿病性筋萎縮症になると、その名の通り、筋肉量が減るのですが、特に大腿部によく見られる症状だと、鬼頭昭三先生と新郷明子先生の共著「アルツハイマー病は『脳の糖尿病』」で紹介されています。
大腿部が糖尿病性筋萎縮症になると、太ももが異常に柔らかくなり、便器からの立ち上がりに努力を要することもあるそうですから、日常生活で不便な思いをすることが多くなるのは容易に想像できます。
そして、高齢の糖尿病者の30%が、筋肉量が減少したサルコペニアといわれる状態にあるそうです。さらにサルコペニアと肥満の重複があるサルコペニア肥満になると、死亡リスクも上昇すると述べられています。
筋肉量がある程度以下に低下すると、転倒、骨折をしやすくなり、寝たきりの状態にも繋がります。サルコペニアと肥満の重複がみられるサルコペニア肥満が、糖尿病者でとくに注目されています。糖尿病者の一〇%はサルコペニア肥満であり、日常生活機能の低下や死亡リスクの上昇の原因になると考えられています。肥満度を示すBMIが高値または正常であっても、筋肉が減少して脂肪に置き換わっている場合があるのです。(88~89ページ)
この文章を読むと、筋肉量を維持することが、大切だとわかります。
太っていると、重たい体を支えるために足腰の筋肉が発達するものですが、サルコペニアになって太ると筋肉量の増加が期待できないのでしょうね。
高齢になってから筋肉量が減らないようにするためには、運動も大切ですが、糖尿病を予防することが重要と言えそうです。
空腹時の血中インスリン値は低い方が良い
糖尿病予防は、生活習慣の改善が大切と言われます。
適度な運動、過食をしないなどがすぐに思いつく生活習慣の改善方法でしょうが、糖尿病を予防するためには、糖質摂取を控えるべきでしょう。
糖尿病は、上がった血糖値が下がらなくなる病気ですから、血糖値を直接上げる原因となる糖質を食べないことが最も合理的な手段だとすぐにわかります。日本人だと、毎食のように糖質が多く含まれている米を食べていますから、まずは食べる米の量を減らすことが重要です。減らすなんて生半可なことは言わず、自宅では、一切、米を口にしない方が良いのですが、まずは米を減らすところから始めた方が糖質制限をしやすいかもしれません。
糖質を摂取すると、血糖値を下げるインスリンがすい臓のβ細胞から分泌されます。
このインスリンの効きが悪くなった状態をインスリン抵抗性、インスリンの量が不足した状態をインスリン分泌不全と言います。
どちらの場合も、血糖値が下がりにくくなりますから好ましいことではないのですが、インスリン抵抗性は肥満を解消すると改善する場合がありますが、β細胞が破壊された結果のインスリン分泌不全は治らないとされています。
そうすると、糖尿病を予防するためには、肥満を防ぐことも大切ですが、インスリンをたくさん分泌するような食生活を続けてβ細胞が壊れてしまうことを防ぐことが特に重要だと考えられますね。
しかし、インスリン抵抗性も無視してはいけません。
インスリン抵抗性があると、血液中のインスリン濃度が高くなります。これを高インスリン血症と言います。インスリンは、アミノ酸(タンパク質)を細胞に取り込むために重要なホルモンですが、高インスリン血症になると、ガンになりやすいとされています。その他にも、高インスリン血症は、様々な健康に好ましくない状態を惹き起こす原因となりますから、空腹時のインスリン濃度は低いに越したことはありません。
ところが、インスリン抵抗性があると、食事を終えてから長時間、血糖値が高い状態が持続するので、その間、インスリンが多く分泌され高インスリン血症になります。
先ほども述べましたが、血糖値を直接上げるのは糖質ですから、食事での糖質摂取量を減らすことで血糖値が上がりにくくなります。血糖値が上がらなければ、インスリンの分泌量も少なくて済みますから、高インスリン血症を防ぐこともできます。
だから、糖質を制限することが大切なんですね。特に高齢になるほど、筋肉量が減っていくのですから、タンパク質を多く食べて、糖質を減らすことが必要になってくるはずです。
同書では、「百歳長寿者はおしなべて、空腹時の血中インスリン値が基準値の下限を超えて低い人たちといわれています」とも述べられていますから、インスリン分泌は、できるだけ少なくしておいた方が良さそうですね。