炭水化物とタンパク質はどっちが胃滞留時間が長いのか?

たくさんの量の食事をした後、満腹感がやってきますよね。

もうこれ以上食べれないというくらい食べてしまうと、動くのもつらいです。私は、焼肉の食べ放題に行ったら、必ずと言っていいほど、満腹になるまで食べます。

この満腹感なのですが、その時によって持続時間が長かったり短かったりすることはないでしょうか?俗に「腹にたまる」といった状態です。これは、もしかしたら胃滞留時間と関係があるのかもしれません。

一般的に炭水化物は胃滞留時間が短いとされている

元東京都監察医務院長の上野正彦先生の「解剖学はおもしろい」に胃滞留時間について書かれていましたので、少し紹介します。

胃の中に入った食べ物は、タンパク分解酵素(ペプシン)、塩酸、粘液などの分泌物が胃から出て、それらが食べ物を混ぜて粥状にします。普通食の場合だと、食後10分程度で胃の中の食べ物が、十二指腸に移送され始め、2時間から3時間程度で移送が完了します。

そして、胃の内容物でも、炭水化物(糖質)、タンパク質、脂質で、移送時間が異なるそうです。

炭水化物は最も早く移送され、タンパク質はその二倍かかり、脂肪はかなり遅れる。和食の米飯やそば、うどんなどは移送が早いから、すぐ腹は空く。洋食など肉や脂肪の多い食べものは遅いので腹もちがいい。(81ページ)

風邪をひいたときなどにお粥を食べると良いとされるのは、こういった理由があるからなのかもしれません。確かにお粥は、消化に良さそうな感じがします。反対に疲れているときに肉を食べるのは、ヘビーな感じがして敬遠したくなります。夏の暑い日なんかは、肉よりも、さっぱりとしたざるそばの方が食べたくなります。

でも、本当に炭水化物の方が、タンパク質や脂質よりも胃滞留時間が短いのでしょうか?

タンパク質は胃酸で速やかに消化される

医師の夏井睦先生は、著書の「炭水化物が人類を滅ぼす」の中で、タンパク質は胃酸で速やかに消化されると述べています。

一般的には、「ご飯や麺類は消化がよい。しかしお肉は消化に悪い」と言われているが、これが大間違いなのである。肉や魚などのタンパク質は、胃酸で速やかに消化されて小腸に送られるため、胃滞留時間は数十分程度である。逆に、ご飯や麺類は胃酸では消化されず、いつまでも胃のなかに留まっている。(28ページ)

上野先生とは、まったく逆の見解です。

また、夏井先生は、嘔吐した人の汚物の中に米粒、麺類、野菜が目に入るけども、肉の塊はどこにもないと述べています。これは、私の経験でもそうですね。戻した時に出てくるものは、野菜や麺類が多いです。

焼肉をお腹いっぱい食べて、さらにお酒も浴びるように飲んだ翌朝、気持ち悪くなって戻したことが何度かありますが、出てくるのは、しめに食べた石焼ビビンバに入っていたモヤシや白菜、それと白米が主で、肉を見たことがありません。それどころか、消化に悪そうなイメージのあるミノやテッチャンなどのホルモンも汚物に含まれていたことはないですね。

それと、腹持ちに関しては、肉や魚などのタンパク質よりも、うどんやお餅など炭水化物を多く含む食べ物の方が良いように思います。これは、私だけでなく、多くの人がそう感じているのではないでしょうか?

中には、牛丼を食べた後は、お腹にたまる感じがするという人もいるでしょう。この場合は、肉が原因なのか白米が原因なのかはわかりませんが、おそらく腹持ちが良いのは、白米だと思います。

食後10分で十二指腸に移送される炭水化物を戻すのか?

食後10分で胃から十二指腸に送られた米や麺類などの炭水化物を数時間後に戻すということはあり得るのでしょうか?

十二指腸にあるものが、いったん胃に戻ってこないとそのようなことは起こらないと思うのですが。

これに関しては、逆流性食道炎について解説されているホームページを見たところ、時には十二指腸から胃に逆流した胆汁や膵液も食道に逆流することがあるようなので、いったん胃から十二指腸に移送された米やうどんが逆流して、口から出てくることもあるのかもしれません。

一方、肉や魚などのタンパク質を多く含む食品が逆流してこないのは、タンパク質が酸に弱いことと関係がありそうに思います。丸山工作先生の著書「新分子生物学入門」では、タンパク質は酸によって、その立体構造が崩れると解説されています。

タンパク質が酵素作用などの作用をするためには、整然とした立体構造を組み上げていなければならない。熱、酸、アルカリなどによって立体構造がくずれると、タンパク質はその作用を失ってしまう。これをタンパク質の変性という。(87ページ)

なので、胃の中に入ったタンパク質は、胃酸によって速やかに消化されてしまうから、嘔吐した時には、原形をとどめていないのではないでしょうか?

ネコが食べた草はそのまま口から出てくる

私は、以前、ネコを飼っていました。

ネコは、自分の体をよく舐めるので、毛が口の中に入り、胃に毛玉ができます。その毛玉を外に出すために草を食べて吐き出すのですが、草は原形をとどめています。草を食べてすぐに吐くので、消化されずに出てくるのでしょうが、数時間後に戻した時も草が出てきます。

草の主成分はセルロースという炭水化物なので、一般的な見解だと、胃滞留時間が短く、速やかに十二指腸に移送されるはずです。なのに原形をとどめて口から出てくるのは、おかしいと思うんですよね。たとえ、嘔吐したとしても、ボロボロの草が出てくるように思うのですが、まったくそんなこともありません。

また、食べた草を戻さず、便として排泄する場合もあります。そんな時も、原形をとどめたまま出てきます。

ネコだけでなく、人間やその他の動物もセルロースを分解できないので、当然と言えば当然なんですけどね。

タンパク質が酸に弱いこと、ネコが食べた草が原形をとどめて口から出てくることから考えると、炭水化物の方がタンパク質よりも胃滞留時間が長そうな気がします。

炭水化物の方が胃滞留時間が短いのであれば、それは、胃では消化できないから速やかに体外に排出するために腸に送っているように思うのですが、私には、わかりません。

なお、私の経験だと、肉や魚だけを食べた時の方が、おにぎりやお餅を食べた時よりも、お腹が膨れている時間は短いです。

2014年8月6日追記

医師の夏井睦先生のホームページで、胃の緊急内視鏡検査をした時の写真が掲載されています。胃の内容物は炭水化物だらけでタンパク質の姿は見当たりませんね。

参考文献