最近、振り込め詐欺が「母さん助けて詐欺」に名称変更されたそうですね。
この手の詐欺が出始めてかなりの期間が経っているのに被害者が増えているのですから、その手口が巧妙になっているのでしょう。
巧妙と言えば、「ブドウ糖詐欺」もなかなかのもの。そもそも、人間は、食べ物から糖質を摂取しなくても、体内で糖質を作り出せるので、積極的にブドウ糖を補給する必要はないのですが、手口が巧妙ゆえに振り込め詐欺以上に被害者が多いですね。
手口その1.糖質は主要なエネルギーと言う
ブドウ糖詐欺の手口として、まず使われる手口が、「糖質は主要なエネルギー」だというもの。
このように言われると、砂糖をたくさん食べることが体に良いように思ってしまいます。砂糖だけでなく、米や小麦にも多くの糖質が入っているので、これらをしっかりと食べることが、活動中のエネルギー不足を防ぐように思わせてきます。
しかし、糖質、脂質、タンパク質と言われる三大栄養素は、それぞれ異なった異化代謝を通って、アセチル-CoA(アセチルコーエー)という中間代謝物を作り出し、それらは、共通の経路でアデノシン三リン酸(ATP)という最小単位のエネルギー源を生み出します。
つまり、糖質、脂質、タンパク質は、好気的代謝においては、同質のエネルギーとなるのであり、糖質だけが特別視されるものではありません。
「糖質は主要なエネルギー」という言葉には気をつけましょう。
手口その2.脳の唯一の栄養はブドウ糖と言う
次に紹介する手口には、多くの人が引っかかっています。
その手口とは、「脳の唯一の栄養はブドウ糖」だというものです。
脳は有害物質の侵入を許さないように血液脳関門というゲートを設けています。このゲートを通過できるのは、唯一ブドウ糖だけだと主張して、ブドウ糖の必要性を説いてきます。しかし、血液脳関門は、脂質から作り出されるケトン体も通過することができ、脳はこれをエネルギーとすることも可能です。
脳のエネルギー補給と称して、チョコレートのような糖質が大量に含まれているものを食べさせようとする甘い言葉に引っかからないようにしましょう。
手口その3.糖質は保存できないから摂取が必要と言う
3つ目の手口もなかなか巧妙です。
その手口は、糖質は体内に少量しか蓄えておけないので、こまめに継続して摂取しなければならないというものです。
確かに人間の体は、300gほどしか糖質を備蓄できません。だから、300gの糖質が枯渇しないように継続的に食べ物から糖質を摂取しなければ死んでしまうと言って、我々を脅してきます。
しかし、人間の体は糖新生によって、糖質を自ら作り出す機能を備えています。なので、わざわざ外部からブドウ糖を補給する理由はありません。
彼らは、糖新生と言う言葉を絶対に口にしません。なぜなら、それを言ってしまうとブドウ糖詐欺がばれてしまうからです。
手口その4.糖質を摂取しなければ低血糖になると言う
ブドウ糖詐欺の最終兵器ともいえるのが、4番目の手口です。
その手口は、「糖質を摂取しなければ低血糖になり、場合によっては死に至る危険がある」と語りだすことです。
低血糖になると意識を失って倒れてしまうというのは事実です。だから、低血糖を起こさないようにする必要があります。だからと言って、糖質を摂取しなければならないという理屈にはなりません。
先ほども述べましたが、人間の体は糖新生によって糖質を作り出すことができます。そのため、糖質を摂取しなかったからといって、直ちに低血糖になって死んでしまうということはありません。むしろ、糖質を過剰に摂取することが原因で、低血糖を起こすことがあります。
人間の体は、血液中の糖質(血糖)が増えすぎると、インスリンを追加分泌して、それを下げようとします。この時、必要以上に血糖値を下げてしまうことがあります。これを反応性低血糖症といいます。
食後、1時間から2時間くらい経過すると眠くなることがありませんか?
こういった人は、糖質の過剰摂取により、血糖値を必要以上に下げている危険があります。すなわち、反応性低血糖症の可能性があるということです。
しかし、低血糖を起こして意識を失ったということを一言でも彼らに話してしまったら最後。そこから怒涛のブドウ糖セールスが始まります。
- 「それはブドウ糖が足りてないからですよ」
- 「ブドウ糖が不足して死に至ると大変だから、しっかりと甘いものを食べなければいけません」
- 「ブドウ糖の摂取がどれだけ重要か、身をもって体験できたでしょう」
このように畳み掛けるようにあなたにブドウ糖の摂取を脅迫してきます。
でも、反応性低血糖症は、糖質を過剰に摂取した結果起こったものなので、対処法は、糖質摂取を控えることなんですよね。
低血糖は、ブドウ糖の摂取量が不足しているからだという言葉には、十分に注意しましょう。
ブドウ糖詐欺は、我々に健康上の不安を煽りながら時間をかけて騙そうとしてきます。
そして、ブドウ糖の摂取期間が長くなればなるほど、体に脂肪が貯まり、数々の生活習慣病が引き起こされます。
こうなったら彼らの思うツボ。
あなたは、もう彼らの手口から抜け出せなくなり、彼らの助けなしでは生きていくことができない体にされてしまっているのです。