脂質の摂取量を現在の2倍にすれば日本人の寿命はさらに延びる

日本では、まだまだ肉食が健康に悪いというのが常識になっています。

実際にはそんなことはなく、何十年も前から肉食が健康に良い影響を与えていると訴えている人が多いのに日本人はなかなかそれを信じようとはしませんよね。食の欧米化が生活習慣病の原因だと言って、肉食を控えるように指導する医師や栄養士がいますが、その根拠はどこにあるのやら。

最近、熊本県畜産協会のホームページを見つけ、そこに興味深いことが書かれていました。なんと脂質の摂取量が増えるほど平均寿命が延びていくというデータが示されているのです。

1日125グラムまでは脂質を摂取すると寿命が延びる

そのデータが掲載されているのは、熊本県畜産広場の「国際的な日本の位置(左記ページは閉鎖されています)」というページです。

ページの下の方にあるグラフ(図9)に世界137カ国の男性の1日当たりの脂肪消費量と平均寿命との相関関係が示されています。そのグラフを見ると、脂肪の消費量が1日125グラムまでは、摂取量に応じて平均寿命が延びていきます。しかし、125グラムを超えて脂肪を摂取すると今度は平均寿命が下がっていきます。

したがって、このグラフからは、1日の脂質の摂取量は125グラムが理想と言えます。また、125グラム以上の脂質を摂取したとしても、脂質の摂取量が少ない場合と比較して明らかに平均寿命が長いこともグラフから読み取れます。つまり、脂質の摂取量は、少なすぎるくらいなら多すぎる方が、まだましだと考えられます。

日本人の1日の脂質の平均摂取量はわずか55グラム

厚生労働省の国民栄養調査によると、2012年の脂質の平均摂取量は約55グラムです。1975年の脂質の平均摂取量が52グラムなので、40年間ほとんど脂質の摂取量が変化していません。

もっと脂質を摂取しても良いのですが、方々から脂質は悪という言葉が耳に入ってくるため、日本人は今以上に脂質消費量を増やすべきではないと思い込んでいるのでしょう。

さらに熊本県畜産広場の「栄養素摂取の日米比較(左記ページは閉鎖されています)」のページと「わが国の近世から現代の肉食と健康 -2-(左記ページは閉鎖されています)」のページを見ると、脂質摂取量の増加と脳血管疾患の減少に相関関係があることがわかります。

1910年には日本人の脂質摂取割合はエネルギー比率で5%しかありませんでした。それが1959年には10%、1975年には25%以上になりました。そして、脂質摂取比率の高まりと比例するように脳血管疾患の数が急激に減っていってます。ちなみに炭水化物の摂取比率は、1910年が81%、1959年が77%、1975年以降が62%となっています。

別の見方をすれば、炭水化物の摂取比率を下げることが脳血管疾患を減らしているとも言えますね。

明治時代から平均摂取カロリーに変化なし

熊本県畜産広場のホームページは、本当に興味深いことがたくさん掲載されています。

日本は、戦後、高度経済成長を経て豊かになりました。だから、食事に関しても、しっかりとエネルギー補給できるようになったのは、高度経済成長期以降のように思ってしまいます。ところが、日本人の摂取カロリーは、明治時代も現代とほとんど変わらず1日に2,000kcalだったようです。

2,000kcalは、成人の標準的なエネルギー摂取量と言われていますから、明治時代もエネルギー摂取量は十分だったと考えられます。このように昔も今も、日本人がエネルギー摂取量を一定に保っていることが、平均寿命を延ばしてきたのではないかといったことが、熊本県畜産広場のコラムでは述べられています。

アメリカの摂取カロリーは1日に3,000kcalです。日本人が肉をたくさん食べだしても、摂取カロリーを2,000kcalに維持してきたのとは異なり、アメリカ人は生活が豊かになるのと比例して摂取カロリーも増やしていったのかもしれません。

それが、日本人とアメリカ人の平均寿命の差であったり、肥満者の数の差であったりするのかもしれませんが、想像でしかありません。ただ、ここで言えることは、日本人は食事内容が変わったとしてもエネルギー摂取量を増やしたり減らしたりしないようにしてきたということです。

理想的なエネルギー摂取割合は脂質が約55%

さて、脂質の摂取量が1日に125グラムまでは平均寿命が延びるということですから、1日に脂質から摂取すべきエネルギーは、1,125kcalとなります。ちなみに三大栄養素1グラム当たりのカロリーは、糖質とタンパク質が4kcal、脂質が9kcalです。

  • 125g×9kcal=1,125kcal

現代栄養学では、エネルギー摂取割合の理想は以下のようになっています。

  • 糖質:タンパク質:脂質=6:2:2

1日に2,000kcal摂取することを前提とすると、タンパク質は100グラム(400kcal)摂取するのが理想と計算できます。

  • 2,000kcal×0.2/4kcal=100g

タンパク質と脂質の1日の摂取カロリーは合計1,525kcalとなるので、2,000kcalに不足する475kcalを糖質で賄うとした場合、1日の糖質摂取量は約119グラムとなります。

  • 475kcal/4kcal=118.75g

現代栄養学が、1日の糖質の摂取量を300グラムとしていますが、脂質摂取量を125グラムまで増やすとなると、2,000kcalを維持するためには、糖質の1日の摂取量を今よりも180グラム減らさなければなりませんね。

しかし、1日の糖質摂取量が120グラム近くあるのも多すぎるでしょう。砂糖を1日に120グラムも食べることを想像すると、おかしい気がしませんか?

糖質制限の普及に努めている医師の江部康二先生は、著書の「『糖質オフ!』健康法」で1日の糖質摂取量を60グラムまでに抑えるスーパー糖質制限をすすめています。なので、スーパー糖質制限をするなら、糖質をさらに60グラム(240kcal)減らして、タンパク質と脂質の摂取量をその分増やす必要があります。

1日のタンパク質の摂取量の理想は体重に1グラムから2グラムを乗じた量と言われているので、体重70kgの人なら、1日140グラムまでタンパク質を摂取するのが理想となります。したがって、もう40グラム(160kcal)はタンパク質の摂取量を増やせますね。残り80kcalは、脂質を9グラムさらに増やすことになります。

とりあえず、現代の日本人は理想の半分も脂質を摂取していないので脂質の摂り過ぎを気にする必要はありません。それよりも糖質(炭水化物)の方が過剰摂取になっているので、米や小麦の摂取を控えるべきですね。

参考文献