抗酸化物質は老化予防に役立つのか?

人間に限らず、どんな生物も老化します。

しかし、多くの日本人が、いつまでも若々しくいたいと願っています。老化という言葉を聞くとついそれに抗いたくなるのが、現代日本人の特徴の一つと言えるでしょう。

最近では、老化予防のことをアンチエイジングとも言い、多くの人が日々、少しでも老化を遅らせようと努力していますね。私もできることなら、いつまでも若々しくいたいと思っています。

老化の原因は活性酸素

生物の老化の原因の一つは、活性酸素だと言われています。

活性酸素は、正常な細胞から電子を奪い酸化させます。電子を奪われた細胞は、DNA、タンパク質、細胞膜を損傷します。だから、細胞の損傷を少しでも減らそうと思ったら、活性酸素の攻撃から細胞を守ってあげなければなりません。

最近では、活性酸素がガンの原因になるとも言われていますから、なるべく活性酸素による害を減らした方が良いでしょう。

活性酸素から細胞を守り、老化を予防するためには抗酸化物質の摂取が有効だと言われています。抗酸化物質の代表は、ビタミンCやビタミンEですね。他にポリフェノールも、強力な抗酸化力を持っていると言われています。

ビタミンCの抗酸化作用については、以下の記事で紹介していますので、ご覧になってください。

この記事では、もう一つの抗酸化物質ビタミンEの酸化防止の仕組みを紹介します。

ビタミンEの抗酸化作用

ビタミンEの抗酸化作用については、栄養学博士の川島由起子先生監修の「カラー図解 栄養学の基本がわかる事典」で解説されていますので以下に引用します。

ビタミンEには、活性酸素を無力化して細胞膜の脂質(とくに不飽和脂肪酸)の過酸化を防ぐ抗酸化作用があります。細胞内のミトコンドリアがエネルギーをつくり出すとき、ヒドロキシルラジカルという活性酸素が発生します。ヒドロキシルラジカルは、その強い酸化力で細胞膜に含まれる脂質を酸化させ、脂質ラジカルという物質に変えます。脂質ラジカルは酸素と反応して脂質ペルオキシルラジカルとなり、別の脂質を脂質ラジカルに変え、自身は過酸化脂質になります(122ページ)

脂質、特に不飽和脂肪酸に反応した活性酸素(ヒドロキシルラジカル)は、それを脂質ラジカルに変えます。脂質ラジカルはさらに酸素と反応して脂質ペルオキシルラジカルになり、やがて過酸化脂質に変化します。過酸化脂質が増えると細胞がダメージを受けるので、それが老化につながるわけですね。

さらに困るのは、脂質ペルオキシルラジカルが過酸化脂質になるとき、他の健康な資質まで脂質ラジカルに変えてしまうことです。脂質ラジカルは、脂質ペルオキシルラジカルに変化し過酸化脂質になりますから、いったん脂質ラジカルが発生すると、延々と脂質ペルオキシルラジカルが発生し過酸化脂質が増えていきます。

この際限なく続く過酸化脂質の増加を食い止めるのがビタミンEとされています。

ビタミンEは、脂質ペルオキシルラジカルが過酸化脂質になるとき、他の健康な脂質を脂質ラジカルに変化させるのを妨害します。これにより、際限なく続く脂質ラジカルから過酸化脂質ができるまでの循環を食い止めれます。

抗酸化物質に抗酸化作用は期待できない

ビタミンEの抗酸化作用の説明を読むと、なるほどと思ってしまいます。

でも、ビタミンEであれCであれ、抗酸化物質と呼ばれているものには、抗酸化作用を期待できないとも言われています。

これについては、極限生物の研究をされている理学博士の長沼毅先生の著書「生命には意味がある」で紹介されています。

老化とはミトコンドリアがつくる酸素フリーラジカルのせいで細胞が傷つき劣化することである。だから、酸素フリーラジカルに対する物質(抗酸化物質)を投与すれば老化を防げる、という理屈がまかり通ってきた。
しかし、この30年の間に「抗酸化物質では老化を防げない」というデータのほうが蓄積してきた。ミトコンドリア老化説は間違いだったのか。
いや、ミトコンドリアが悪玉(酸素フリーラジカル)を発生するのは間違っていない。ただ、抗酸化剤を投与・服用しても効かないというだけだ。(122ページ)

ビタミンCにしろEにしろ、抗酸化作用の理屈は筋が通っているので、それらを服用することがアンチエイジングに結びつくと思ってしまいます。

でも、抗酸化物質を大量に摂取しても、老化を遅らせているというデータがないのですから、ペットボトルのお茶に含まれているビタミンCやラードに含まれているビタミンEのような酸化を防止する効果を人体に期待しない方が良さそうです。

また、ビタミンEの抗酸化作用は、脂質ラジカルから過酸化脂質までの無限ループを阻止することであり、活性酸素(ヒドロキシルラジカル)が脂質を脂質ラジカルに変えてしまうことを防ぐことではありません。

脂質ラジカルになりやすい脂質は不飽和脂肪酸なのですから、むしろ不飽和脂肪酸の摂取量を減らす方が過酸化脂質の発生量を少なくできるのではないでしょうか?つまり、不飽和脂肪酸が多く含まれている植物油よりも、酸化しにくい飽和脂肪酸を多く含む動物性脂肪を中心に脂質を摂取した方が、過酸化脂質の発生量を少なくできると思うのですが。

とは言え、ビタミンCもEも摂り過ぎによる過剰症の報告がないようですから、たくさん摂取しても損することはないでしょう。ステロイドホルモンの合成などの役割も果たしていますから、不足するくらいなら摂りすぎる方が良さそうです。

ただ、アンチエイジングのために抗酸化物質と呼ばれている物をたくさん摂取しても、期待した効果を得られないと思います。

参考文献