日本は高齢化が進んでいるから糖尿病が増加している

年々、糖尿病になる人が増えています。糖尿病が強く疑われる人と糖尿病の可能性を否定できない人の合計は、厚生労働省の「平成28年 国民健康・栄養調査結果の概要」によると、2016年で約2千万人だそうです。

糖尿病の原因は諸説ありますが、砂糖業界は年々砂糖の消費量が減っているので砂糖と糖尿病は関係ないと言ってます。また、糖質が多く含まれる米の消費量も年々減っていることから、米を食べても糖尿病にならないと言う人もいますね。

砂糖も米も消費量が減っていますから、これらの主張は正しいように思います。

でも、糖尿病や糖尿病の可能性を否定できない人が年々増え、砂糖や米など糖質を多く含む食品の消費量が減っていると言うだけで、糖質摂取と糖尿病との関係を否定するのは早とちりです。

1997年と2016年の男女年代別人口

単純に全人口の内2千万人が糖尿病というだけでは、分析の指標として不十分です。少なくとも性別と年代別で糖尿病と糖尿病を否定できない人の数がどれだけいるのかを知る必要があります。

1997年と2016年の男女年代別の人口を総務省統計局の人口推計で調べると以下の表の通りでした。

性別 男性 女性
年代 1997年 2016年 1997年 2016年
20代 9,570 6,154 9,200 5,874
30代 7,979 7,612 7,798 7,352
40代 9,452 9,479 9,382 9,198
50代 8,436 7,644 8,636 7,600
60代 6,862 8,935 7,494 9,379
70齢以上 4,996 9,978 8,001 14,241
合計(千人) 47,295 49,802 50,511 53,644

上の表では、20歳未満の人口を省略しています。糖尿病と糖尿病の可能性を否定できない人の調査結果が、厚生労働省の国民健康・栄養調査結果の概要で20歳以上からしか掲載されていないからです。

上の表のように人数だけを記載しても、どの世代がどれくらい多いのかを一目で理解するのが難しいですね。

なので、20歳以上の人口に占める各世代の割合を男女別に計算し表にしました。

性別 男性 女性
年代 1997年 2016年 1997年 2016年
20代 20.2% 12.4% 18.2% 10.9%
30代 16.9% 15.3% 15.4% 13.7%
40代 20.0% 19.0% 18.6% 17.1%
50代 17.8% 15.3% 17.1% 14.2%
60代 14.5% 17.9% 14.8% 17.5%
70齢以上 10.6% 20.0% 15.8% 26.5%
総計(%) 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%

1997年では男女ともに40代人口の割合が最も高くなっています。しかし、2016年になると70歳以上人口の割合が最も高くなっており、日本が高齢化していることがよくわかります。

糖尿病人口の割合を年代別に比較

次に男女別に1997年と2016年の糖尿病と糖尿病の可能性を否定できない人の割合を見ていきましょう。なお、糖尿病の可能性を否定できない人は、「予備軍」と記載しています。また、以後は、糖尿病の可能性を否定できない人を「予備軍」や「糖尿病予備軍」と表記します。

男性の年代別の糖尿病と糖尿病予備軍の割合は以下の通りです。

男性 1997年 2016年
年代 糖尿病 予備軍 合計 糖尿病 予備軍 合計
20代 0.9% 0.4% 1.3% 0.0% 0.7% 0.7%
30代 1.6% 4.1% 5.7% 1.3% 1.5% 2.8%
40代 5.4% 6.8% 12.2% 3.8% 4.7% 8.5%
50代 14.2% 10.1% 24.3% 12.6% 11.1% 23.7%
60代 17.5% 10.3% 27.8% 21.8% 12.5% 34.3%
70齢以上 11.3% 11.5% 22.8% 23.2% 18.8% 42.0%
総計(%) 9.9% 8.0% 17.9% 16.3% 12.2% 28.5%

糖尿病と予備軍の合計は、1997年では60代の27.8%が最も高くなっています。でも、2016年では70歳以上が最も高く42.0%となっています。

女性の糖尿病と予備軍についても、1997年と2016年で比較しておきましょう。

女性 1997年 2016年
年代 糖尿病 予備軍 合計 糖尿病 予備軍 合計
20代 0.9% 1.4% 2.3% 1.2% 0.0% 1.2%
30代 1.6% 4.2% 5.8% 0.7% 0.7% 1.4%
40代 5.3% 7.7% 13.0% 1.8% 5.1% 6.9%
50代 7.1% 10.4% 17.5% 6.1% 9.7% 15.8%
60代 10.6% 8.8% 19.4% 12.0% 15.2% 27.2%
70齢以上 15.5% 12.4% 27.9% 16.8% 20.2% 37.0%
総計(%) 7.1% 7.9% 15.0% 9.3% 12.1% 21.4%

女性の場合は、1997年も2016年も70歳以上が最も糖尿病と予備軍の合計が高く、前者が27.9%、後者が37.0%です。

年代別に男女の糖尿病人口を推計

ここまでの情報で、男女ともに年代別の糖尿病と予備軍の人数を推計できます。

男性の年代別の糖尿病人口は以下の通りです。

男性 1997年 2016年
年代 糖尿人数
(千人)
割合
(%)
糖尿人数
(千人)
割合
(%)
20代 124 1.8% 43 0.4%
30代 455 6.7% 213 2.1%
40代 1,153 16.9% 806 8.0%
50代 2,050 30.0% 1,812 17.9%
60代 1,908 27.9% 3,065 30.3%
70齢以上 1,139 16.7% 4,191 41.4%
総計 6,829 100.0% 10,129 100.0%

上の表を見れば、男性は、1997年から2016年までの間に糖尿病人数が最も増加している世代は70歳以上だと気付きます。

こちらは女性の糖尿病人口を年代別に記したものです。

女性 1997年 2016年
年代 糖尿人数
(千人)
割合
(%)
糖尿人数
(千人)
割合
(%)
20代 212 3.0% 70 0.7%
30代 452 6.4% 103 1.0%
40代 1,220 17.2% 635 6.5%
50代 1,511 21.3% 1,201 12.2%
60代 1,454 20.5% 2,551 26.0%
70齢以上 2,232 31.5% 5,269 53.6%
総計 7,081 100.0% 9,829 100.0%

男性と同様に1997年から2016年までで、女性の糖尿病人口が最も増加しているのは70歳以上です。しかも、2016年は、この世代の2人に1人以上が糖尿病か糖尿病予備軍で、かなり深刻な状況だとわかります。

年齢が上がるほど糖尿病人口が増える

1997年と2016年の糖尿病と糖尿病予備軍の男女別年代別の人数を見て、ざっくりわかるのは、年齢が上がるほど糖尿病になる確率が高まるということです。

そして、1997年よりも2016年の方が、全人口に占める70歳以上の人の割合が高くなっているので、この世代で著しく糖尿病と糖尿病予備軍が増加しているのがわかります。

したがって、日本で糖尿病と糖尿病予備軍が増えているのは高齢化が原因だと推測できます。

でも、男性は1997年の70歳以上の世代での糖尿病は22.8%、2016年のそれは42.0%であり、同じ世代で比較しているのに糖尿病の割合が2016年の方が高くなっているのはおかしいと思う方もいるでしょう。同様に女性も1997年が27.9%、2016年が37.0%と高くなっていますから、一概に高齢化が糖尿病増加の理由にはならないという反論があると思います。

1997年と2016年の70歳以上の人口をさらに詳しく、70代、80代、90歳以上に分類すると、男女とも2016年の方が80歳と90歳以上の人口の合計が1997年の約3倍になっています。2016年の方が70歳以上で糖尿病の割合が高まっているのは、80代と90歳以上の世代が増え、これらの世代でさらに糖尿病の割合が高まっているからだと推測できます。

性別 男性 女性
年代 1997年 2016年 1997年 2016年
70代 3,594 6,328 5,153 7,544
80代 1,268 3,206 2,457 5,226
90歳以上 134 444 391 1,471
70歳以上合計 4,996 9,978 8,001 14,241

 糖質摂取と糖尿病は関係ないのか?

このように日本の人口を男女年代別に分類して、糖尿病と糖尿病予備軍の割合を調べると、糖尿病の増加は高齢化が原因だと推定できます。

だから、砂糖や米など糖質を多く含む食品を食べようが食べまいが、糖尿病とは関係ないという結論に達しそうです。

しかし、こう結論付けるのはまだ早い。

なぜ、糖尿病になるのか?

糖尿病は、上がった血糖値を下げられなくなる病気です。

血糖値は糖質を摂取すると上がります。そして、血糖値を下げるのはすい臓のβ細胞から分泌されるインスリンです。

米のように糖質が多く含まれている食品を食べると血液中に一気にブドウ糖が流れ込み血糖値が上がります。すると、すい臓は血糖値を下げるために多くのインスリンを一気に分泌します。これをインスリンスパイクと言います。

このインスリンスパイクはβ細胞に負担をかけるので、頻繁に高糖質の食品を食べているとβ細胞が疲弊します。インスリンスパイクを繰り返していると、やがてβ細胞はインスリンを分泌できなって壊れてしまいます。そうすると、血糖値が上がっても、血糖値を下げるのに十分な量のインスリンを分泌できなくなるので高血糖状態が持続します。これが糖尿病です。

言い方を変えると、糖尿病とは、β細胞が壊れてインスリンの分泌量が減る病気とも言えます。

そして、一度壊れたβ細胞は再生できないとされています。糖尿病が不治の病と言われるのは、これが理由です。

高齢化に伴って糖尿病が増えていくのは、β細胞が壊れた人が増えていくからだと考えられます。長年、米やパンなど糖質を多く含む食品を食べ続けていれば、インスリンスパイクも、とんでもない回数になります。

70代になれば2割から3割くらいの人がインスリンの分泌量が減り、80歳を過ぎれば半数以上の人がインスリンの分泌量が減っていると推測できます。

平均寿命が延びているのですから、すい臓を長持ちさせるように糖質摂取を控えた方が良いですね。

ここまで読まれた方は、昔は糖尿病が少なかったのに現代は糖尿病が増えている理由がわかったと思います。昔は寿命が短くβ細胞が壊れるまで長生きできなかったこと、総人口に占める20代から40代の若い世代の割合が高かったこと、これらが糖尿病が少なかった理由だと考えられます。

「砂糖や米の消費量が減っているのに糖尿病が増えている。だから、糖質摂取と糖尿病は関係ない」

こう主張する人は、もうちょっと調べましょうね。