ビタミンC大量摂取でウイルス感染の予防と治療は可能なのか?

先日、帯状疱疹になった際、病院に行かずに自然治癒するのを待ちました。

自然治癒を待ったと言っても、ビタミンCのサプリメントを大量に摂取しているのですが。

帯状疱疹は、風邪やインフルエンザと同じくウイルス感染によって起こる病気です。ウイルス感染を予防したり治したりするには、ビタミンCを多く摂取することが大事だと言われていますから、帯状疱疹の場合も、ビタミンCを多く摂取すれば治りが早いだろうと思って大量摂取したわけです。

ウイルス感染の仕組み

ウイルス感染にビタミンCが有効だと言われるようになったのは戦後からのようです。

分子栄養学を提唱した三石巌先生の「ビタミンC健康法」という本では、ライナス・ポーリング先生が1970年に「さらば風邪薬」を書いたことでアメリカで賛否の嵐が巻き起こったと紹介されていました。

ポーリング先生は、2度もノーベル賞を受賞した科学者で、ビタミンCによる健康自主管理をすすめてきました。

ビタミンCが、なぜウィルス感染に効果があるのかを紹介する前にウィルス感染の仕組みを簡単に説明します。

ウイルスは、生物のようでもあり無生物のようでもある不思議な存在。彼らは、自力で増殖する能力を持っていません。だから、増殖するためには、他者の力を借りる必要があります。

ウイルスは、自らの遺伝情報が書きこまれたDNAまたはRNAを宿主の細胞の中に入れます。そして、DNAやRNAが細胞内に入ると、ウイルスの増殖が始まります。「ビタミンC健康法」では、以下のようにウイルスの増殖の仕組みを説明しています。

ウイルス細胞が標的細胞とドッキングした時、衣は細胞膜の外に置き去りにされるから、細胞に侵入するものは、DNAまたはRNAである。
この時、細胞内でウイルスの姿が見えるはずはなく、いわゆる≪暗黒期≫となる。
遺伝情報を解読して、暗号に従ってアミノ酸を継ぐ作業を行う細胞小器官を≪リボゾーム≫という。本来なら、リボゾームは、その細胞の遺伝情報の解読を始める。すなわち、本来の作業は、ここで放棄される。
この時、リボゾームで作られたアミノ酸の鎖、すなわちタンパク質は、ウイルスの衣のそれである。ウイルスに感染した細胞は、全力をあげてウイルスの衣を作る。その衣の中には複製したDNAなりRNAなりが収められる。ということは、細胞がウイルス製造工場に変貌したことを意味している。(118~119ページ)

細胞内で製造されたウイルスは、細胞膜を破って外に放出されます。放出されたウイルスは、次の細胞の中にDNAまたはRNAを入れ込み、さらにウイルスの複製を作っていきます。

このようにしてウイルスが増殖していくと、宿主の細胞が破壊されていくので、ウイルスに感染すると辛い思いをしなければならないんですね。

インターフェロンを作るのにビタミンCが必要

宿主がウイルスをやっつけるためには、免疫細胞がウイルスをやっつける抗体を作らなければなりません。でも、抗体が作られるまでには、数日から数週間かかるので、その間はウイルスの増殖を許すことになります。

もしも、抗体ができあがる前にウイルスに多くの細胞を破壊されてしまえば、宿主の体は大きなダメージを受けますし、最悪の場合は死にいたります。

では、せめて、ウイルスの増殖だけでも抑えることはできないでしょうか。

それができるのです。インターフェロンというものを使って。

ある細胞がウイルスに感染すると、その中でインターフェロンが作られ、それが周囲の細胞に摂り入れられる。インターフェロンを持っている細胞は、ウイルスに奉仕することができなくなるのだ。(127~128ページ)

このンターフェロンを合成するのに必要となるのがビタミンCです。

インターフェロン合成にビタミンCは補酵素の役割を持つと考えられています。したがって、体内のビタミンCが少なければ、作られるインターフェロンも少なくなるので、細胞がウイルスに感染しやすくなります。反対に体内のビタミンCが多ければ、インターフェロンの合成量が増えることが期待されるので、細胞に侵入するウイルスを減らすことができると考えられます。

ここにビタミンCが、ウイルス感染に有効だという根拠が見出せるわけですね。

ビタミンCそのものによるウイルス破壊

さらにビタミンCには、それそのものにウイルスを破壊する作用があるとされています。

試験管内にウイルスとビタミンCを入れて混ぜると、ウイルスが破壊されるそうです。試験管内ですから、インターフェロンはありませんし、ウイルスをやっつける免疫細胞もいません。だから、ビタミンCがウイルスをやっつけたと想像するしかありません。

ビタミンCがウイルスを破壊する仕組みは以下のように説明されています。

この環境には酸素があるために、ビタミンCは自動的に酸化する。これは、水素原子の放出の形を取るが、水素原子と共に1個の電子を失ったアスコルビン酸は、≪モノデヒドロアスコルビン酸≫に変貌する。これは、反応性の強い≪ラジカル≫(遊離基)であって、電子をよそから取ってくれば、元の還元型ビタミンCに戻る。逆に、電子を失えば酸化型ビタミンC、すなわち≪デヒドロアスコルビン酸≫となる。(133ページ)

アスコルビン酸は、ビタミンCのことです。

ビタミンCは、他の物質に電子を与える作用が強く酸素が近くにあると電子を酸素に渡します。すると、ビタミンCは電子を失った酸化型ビタミンCとなります。酸化型ビタミンCは、今度は他の物質から電子を奪う力を持ち、試験管内のウイルスが持つ電子はビタミンCに取られてしまいます。そして、電子を失ったウイルスは破壊されるということですね。

医学界ではビタミンCの抗ウイルス作用に否定的

ここまで読まれた方は、ビタミンCは風邪やインフルエンザなどのウイルス感染の予防や治療に役立ちそうだと思ったのではないでしょうか。

しかし、医学界では、ビタミンCの抗ウイルス作用には否定的です。実験しても、ビタミンC摂取で優位にウイルス感染症の治りが早まったという結果は認められなかったそうです。

これに対して、ポーリング先生は、風邪薬は製薬会社のドル箱になっているからビタミンC予防薬説を圧殺するのだという旨の主張をしています。

あなたは、どちらの言い分を信じますか?

信じるも何も、こんなことは実際にやってみれば良いだけです。

多くの人は1年に1回くらいは風邪をひくでしょう。そして、風邪になった時、風邪薬を飲んでいると思います。その風邪薬を飲むのを止めてビタミンCを大量摂取すれば結果がわかります。

風邪気味だと感じた時にドラッグストアでビタミンCを買ってきて、大量摂取します。ビタミンCは摂取し過ぎると下痢をします。下痢をした時点で、体のビタミンC要求量を超えたことを意味します。下痢をすると、いろんな栄養素が外に出てしまいますから、軟便になってきたところで、ビタミンCの摂取量を減らしていきましょう。

いつもよりも早く風邪が治ればビタミンCのおかげと想像できますし、いつもよりも苦しんだ場合は風邪薬の方が効き目があるとわかりますよね。

ビタミンC要求量は人によって差がありますし、同一人でも、その時の状況によってビタミンC要求量は変わってきます。だから、数値でどれだけのビタミンCを摂取すれ良いかを示すことはできません。

また、ビタミンCはビタミンEと連携して体内で働くので、ビタミンCを大量摂取する際はビタミンEも摂取しておいた方が良いでしょう。

ビタミンCのサプリメントは、60グラムが400円程度で買えます。アスコルビン酸の粉末だと、1kgで2千円くらいですから、こちらの方がコスパが良いです。でも、スーパーには置いてませんでしたし、ドラッグストアでは200グラムで3千円もするアスコルビン酸しか売ってませんでした。

なので、アスコルビン酸が欲しい方は、通販を利用するしかなさそうです。

参考文献