筋肉を発達させるシグナルの仕組み

筋肉を発達させるためには、運動しなければなりません。これは、ほとんどの人が知っていることですよね。

筋肉を含め、皮膚や毛髪などのタンパク質は、絶えず古いものから新しいものに作りかえられています。どのタンパク質も、新しいものに作りかえるためには、何らかの指令を受けています。筋肉も、当然、発達させるために何らかの指令を受けています。

その指令が、運動なんですね。

筋肉の活動状況に応じて筋肉は作りかえられる

筋肉が作りかえられるのは、筋肉の活動状況によって決まります。筋肉をよく使えば発達していきますが、あまり使わないでいると小さくなっていきます。

筋肉を発達させるためには、筋肉の活動状況を筋肉製造工場に伝えなければなりません。そして、筋肉製造工場は、筋肉の活動状況から筋肉を作るための設計図を描きます。

杉晴夫先生の著書「筋肉はふしぎ」によると、筋肉製造工場に送られる情報は主に以下の3つだそうです。

  1. エネルギー消費
  2. 筋肉のミクロな損傷
  3. 機械的ストレス

1.エネルギー消費

筋肉を動かすためのエネルギーは、アデノシン三リン酸(ATP)です。ATPからリン酸(P)が1個離れるとエネルギーが放出され、これを使って筋肉は活動します。リン酸が1個離れるとATPはアデノシン二リン酸(ADP)になります。

したがって、運動すると、筋肉にはADPとリン酸が増え、これがエネルギー消費状況を示すシグナルとなり、筋肉製造工場に伝えられます。

2.筋肉のミクロな損傷

筋肉を激しく動かすと、筋細胞の細胞膜や筋細胞の表面にあるサテライト細胞にミクロな損傷が起こります。

サテライト細胞がミクロな損傷を受けると、免疫反応が起こり、様々な物質ができます。これらの物質も、筋肉の活動状況を示すシグナルになります。

3.機械的ストレス

筋肉を構成する部品には、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントがありますが、これらに引っぱりの力を加えると増加し筋肉が太くなります。

したがって、運動により筋肉に機械的ストレスを与えることも、筋肉の活動状況を示すシグナルとなります。

これらの筋肉活動のシグナルが、筋肉細胞に伝えられ、筋肉を発達させる一連の反応が起こります。これをカスケード反応といいます。

筋トレはカスケード反応を起こす手段

筋肉活動のシグナルは、筋肉の活動に応じて新しい部品を製造し筋肉に供給することです。

筋肉活動がさかんになるほどカスケード反応がさかんとなり、筋肉エンジン部品工場の活動も活発になる。この結果エンジン部品は古くなった部品の補充に必要な量よりも余分に製造されることになり、筋肉エンジン部品の数つまり筋細胞内のアクチンフィラメントとミオシンフィラメントの本数も増えてゆく。これが、トレーニングにより筋肉が発達して大きくなり、より強い力を出すようになるしくみである。(100ページ)

エネルギー消費、ミクロな損傷、機械的ストレスは、筋肉製造工場の活動を活発にするためのシグナルです。そして、これらのシグナルは、運動によって起こります。このような仕組みが筋肉に存在しているから、多くの人が、運動後に筋肉が発達するという経験をしているんですね。

特に筋トレは、筋肉に強い刺激を与えますから、ミクロな損傷や機械的ストレスが起こりやすく、ウォーキングやジョギングのような有酸素運動よりも、筋肉が発達しやすいのでしょう。

エネルギー消費は、どうなんでしょうね。有酸素運動の方がエネルギー消費量が多いように思いますが、マラソンランナーで筋肉ムキムキの人は少ないですよね。有酸素運動では、ミクロな損傷や機械的ストレスが少ないのでしょうか。

とりあえず、筋肉を発達させるためには、運動が必要だということはまちがいありません。

また、筋肉を発達させるためには、運動神経末端から分泌される栄養物質の影響も受けていますから、食事での栄養補給も大切です。筋肉はタンパク質でできていますから、タンパク質はしっかりと補給しておきたいですね。

筋トレをしている人は、体重×2グラムのタンパク質摂取が目安と言われていますから、体重が50kgの人は100グラムのタンパク質摂取が目標になります。

参考文献