細胞はタンパク質でできています。
そして、無数の細胞が集まって我々の体が成り立っていますから、人体はタンパク質でできているとも言えます。
人体を構成するタンパク質は、日々入れ替わっていますから、体外に捨てられた分のタンパク質は、食事から補給しなければ、身体を維持できません。その意味で、生きていくことはタンパク質を入れ替えていくことと捉えることができます。
補給するタンパク質は、人体に近いアミノ酸組成のタンパク質であるほど良質であり、その良質度はプロテインスコアやアミノ酸スコアで表されます。基本的にプロテインスコアやアミノ酸スコアが高い食品を食べていれば、タンパク質の入れ替えがスムーズに行われると考えられますが、食べたタンパク質のうち、どれだけが体内に残るかという指標も大事です。このような指標は、生物価によって表されます。
生物価とは
生物価について、もう少し詳しく説明しましょう。
武村政春先生の著書「たんぱく質入門」に生物価についての記述があるので、紹介します。
生物価とは、生物の体内に吸収された窒素のうち、排泄されなかった(すなわち体の材料して実際に何かに使われた)ものを百分率(パーセント)で表したものである。つまり、あるたんぱく質を摂取したとして、そのたんぱく質に含まれる窒素のうち、排出されず、体内に留まって利用される窒素の量が多ければ多いほど、そのたんぱく質の生物価、すなわち栄養価が高いということを意味する。(23ページ)
この文章から、どんなにたくさんのタンパク質を摂取しても、その多くが外に出て行ってしまっては、体作りに活かされにくいタンパク質であると言えます。
タンパク質を食べるからには、しっかりと体内で利用されるタンパク質を選びたいですね。
卵と牛乳は生物価が高い
生物価が高いタンパク質ほど、体内で利用されることがわかりました。
では、どの食品に含まれるタンパク質が、生物価が高いのでしょうか。たんぱく質入門では、22ページに以下の食品についての生物価が記載されていました。
- 精白米=65~70
- 小麦=50~55
- 大豆=75
- 牛肉=76
- 卵=87~97
- 牛乳=85~90
これを見ると、卵と牛乳の生物価が高いことがわかります。とくに卵は、最大で97%のタンパク質を体作りに利用できますから、良質なタンパク源であると言えます。
反対に精白米や小麦は、吸収したタンパク質のうち30%から50%が外に捨てられてしまうので、良質なタンパク質とは言えませんね。
一般的には、生物価が70以上のタンパク質が良質と判断されます。したがって、生物価を基準にすれば、大豆や牛肉も良質なタンパク質と言えます。
生物価は吸収率ではない
ここで注意しなければならないのは、生物価がタンパク質の吸収率を表すものではないことです。
すなわち、口から入ったタンパク質が、どれくらいの割合で体内に留まっているのかではなく、小腸から体内に吸収されたタンパク質のうち、どれだけが体内に残っているのかを生物価は表しているのです。
だから、どんなに生物価が高くても、吸収率が30%程度であれば、食べたタンパク質の多くは外に捨てられてしまいます。
大豆の生物価は、75と高く良質と考えられています。しかし、大豆のタンパク質の吸収率は非常に低いので、口から大豆を入れても体内に残るタンパク質は、それほど多くはありません。
また、大豆は、アミノ酸スコアが100なので良質と考えられていますが、プロテインスコアだと56しかないので、一般的に考えられているほど、大豆に含まれるタンパク質は良質ではありません。
精白米や小麦に含まれるタンパク質も、プロテインスコア、アミノ酸スコア、生物価が低く、しかも、タンパク質の含有量が少ないので、これらを食べる割合が高いほど、体を構成するタンパク質の入れ替えがスムーズに行われにくくなるでしょう。
卵、肉、乳製品は良質なタンパク源ですから、美容や健康のことを考えると、これらの食品は日常的に多く食べたいですね。
小腹がすいて、何かをちょっとつまみたいと思った時には、おにぎりやパンではなく、チーズ、ハム、サラミ、ゆで卵などの動物性タンパク質が含まれた食品を食べるようにしましょう。