人間の体を構成する細胞はタンパク質でできています。そのため、細胞が元気に働けるためには、食事からしっかりとタンパク質を補給することが大切です。
特に牛肉や豚肉などの動物性食品は、人間のタンパク質に近いアミノ酸組成をしている良質なタンパク質なので、積極的に食べたい食品です。
肉類が苦手な方は、良質度は低くなりますが、豆類からタンパク質を補給することもできます。ただ、豆類を食べる際は加熱することを忘れてはいけません。
豆類には抗栄養因子が含まれている
豆類には、抗栄養因子と呼ばれる食物の消化を邪魔する成分が含まれている場合があります。
例えば、大豆には、トリプシンインヒビターと呼ばれる抗栄養因子が含まれています。トリプシンは、すい液の中に含まれており、小腸でのタンパク質の消化に欠かせない消化酵素です。
武村政春先生の著書「たんぱく質入門」によると、実験でラットに豆を食べさせると、トリプシンインヒビターのせいで、すい臓が腫れ、成長阻害が見られたということです。
また、インゲンマメには、レクチンやアミラーゼインヒビターと呼ばれる抗栄養因子が含まれています。レクチンは、生で口に入れると、食中毒に似た症状を起こします。アミラーゼインヒビターは、糖質を消化するアミラーゼの働きを阻害します。糖質を体内に吸収したくない場合には、アミラーゼインヒビターは役立ちそうですが、そもそも糖質を摂取しなければ問題ないことです。
このように豆類には抗栄養因子が含まれているので、食べる時には注意が必要です。
加熱して変性させれば問題ない
豆類に含まれる抗栄養因子は、タンパク質でできています。
タンパク質は、酸に弱いので、生で食べても胃酸で変性させれば、その機能を失います。もちろん、抗栄養因子も胃酸で変性しますから、生で食べても問題ないはずです。
ところが、中には胃酸の攻撃を潜り抜けて腸に達するタンパク質もいます。変性していないタンパク質は、機能を失っていませんから、場合によっては、腸内で悪さをするかもしれません。豆類に含まれる抗栄養因子が悪さをするのは、偶然、胃酸の攻撃を逃れる場合があるからなんですね。
タンパク質を変性させる方法は、酸を加えるだけではありません。加熱することでもタンパク質は変性します。
だから、豆類を食べる場合は、しっかりと火を通して抗栄養因子の機能を奪っておけば、食中毒のような症状を起こしにくくなります。さらに胃酸でも変性させるので、豆類を加熱しておけば、二重に抗栄養因子を変性させることができ、より安全に食べられるようになります。
タンパク質は、火を通さずに食べた方が良いと言われますが、火を通さなくても胃酸で変性するので、火を通したのと同じ状態になります。むしろ、食品に食中毒を起こすような細菌、寄生虫、ウィルスが付着している可能性もありますから、どんな食品でも火を通す方が安全です。
タンパク質の変性の話は、以下の記事にも書いているので、ご覧になってください。