1日に0.3%のタンパク質が異化と同化の対象となる

人間の体を構成する成分で最も大切なのはタンパク質でしょう。

筋肉だけでなく、皮膚もタンパク質でできていますし、爪や髪もタンパク質でできています。内臓もタンパク質の塊ですよね。

身体を構成するタンパク質は、常に壊されています。これを異化といいます。異化が際限なく続けば、いずれは身体が崩壊してしまいます。壊したタンパク質は、元に戻さなければなりません。これを同化といいます。

我々の身体が、昨日と今日で見た目にほとんど変化を感じないのは、異化と同化のバランスが取れているからなんですね。

日々壊されているタンパク質の量

1日に壊されるタンパク質の量は、体重65kgの人で200グラムと言われています。

したがって、体重の20%がタンパク質とした場合、身体には13,000グラムのタンパク質が含まれている計算になります。すると、毎日200グラムのタンパク質が壊されていけば、65日後には身体が崩壊してしまいます。

しかし、壊された200グラムのタンパク質のうち、140グラムが体内で再利用されるので、外に捨てられるタンパク質は60グラム程度です。なので、毎日60グラムのタンパク質を捨てていった場合には、217日は身体が崩壊せずに済む計算になります。

まあ、タンパク質を一切食べなければ、もっと早くに身体に異変が出ると思いますが。

毎日、外に捨てられるタンパク質60グラムを食事で補給できれば、再利用されるタンパク質140グラムと合わせて200グラムになります。だから、外に捨てられるタンパク質と同じ量のタンパク質を食べれば、身体は崩壊せずに済む理屈になります。

ただ、ここで厄介なのが、捨てられるタンパク質を構成するアミノ酸がわからないことです。

タンパク質は、20種類のアミノ酸で構成されています。捨てられるタンパク質も20種類のアミノ酸からなることはわかりますが、どのアミノ酸がどれくらいの量使われているのかを知ることはできません。

これがわかれば、食事の際に「今日はリジンというアミノ酸を3グラム捨てたので、食事からリジンを3グラム補給しよう」という選択を取れるのですが。

300日で半分のタンパク質が新しくなる

三石巌先生の著書「高タンパク健康法」によれば、毎日、タンパク質を壊しては作り壊しては作りを繰り返していると、300日で前身の半分のタンパク質が新しくなるそうです。

全身的にこれを見れば、1日に0.3%が異化、同化の対象になる。これは、300日で全身のタンパク質の半分が新しくなる、ということである。組織毎の交代の速度は、放射性窒素の餌による動物実験で、かなりよく調べられている。(73ページ)

ただ、すべてのタンパク質の半交代期が300日というわけではありません。同書の75ページでは、器官ごとにタンパク質の半交代期が掲載されているので紹介しておきます。

  • 肝臓:10~140日
  • 腎臓:11~180日
  • 筋肉:16~180日
  • 脳:16~150日
  • 骨:16~240日

肝臓だと、速い組織では10日でタンパク質の半交代期を迎えます。意外と短く感じますね。腎臓も組織によっては11日で半交代期を迎えます。

こんなに半交代期が短いと、1食でもタンパク質の補給を怠ることは許されないですね。

先ほども述べましたが、捨てられるタンパク質のアミノ酸の構成割合を知ることはできません。タンパク質を研究している方なら、調べることができるのかもしれませんが、一般人には無理な話です。

それでは、捨てられるアミノ酸を補給するにはどうすれば良いのでしょうか?

1つの方法としては、生物価の高いタンパク質を優先的に食べることです。生物価が高いタンパク質は、体内で利用されるアミノ酸の割合が高いので、捨てられたアミノ酸と交代してくれる可能性も高くなるでしょう。

また、プロテインスコアの高い食品を食べることも大切になってきます。プロテインスコアは、人間が必要とするアミノ酸にどれだけ近い割合で、食品にアミノ酸が含まれているかを示す指標です。プロテインスコアが高い食品をいくつか列挙しておきます。

  • 鶏卵:100
  • シジミ:100
  • サンマ:96
  • イワシ:91
  • 豚肉:90
  • アジ:89
  • 鶏肉:87
  • イカ:86
  • チーズ:83
  • 牛肉:80
  • 牛乳:74

鶏卵は、プロテインスコアが高いだけでなく、生物価も高いので、良質なタンパク源です。肉類や牛乳も生物価は高めです。

また、植物性食品に含まれるタンパク質は、プロテインスコアも生物価も低い傾向にあるので、大量に食べなければ捨てられるアミノ酸を補うのが厳しそうです。

タンパク質の異化と同化のバランスを保つためには、毎日、しっかりとタンパク質を食べることが大切です。

炭水化物に偏った食事をしていると、タンパク質の補給量が少なくなります。ダイエットのために絶食をすれば、さらにタンパク質の異化と同化のバランスが崩れてしまいます。

人間の身体には、タンパク質を有効利用するためのオートファジーという機能が備わっていますが、絶食期間が長くなるとオートファジーが抑制されるようですから、タンパク質は毎日、毎食、欠かさずに食べた方が良いでしょう。

参考文献