ビオチンは糖新生や脂肪酸合成に必要な栄養素

ビタミンB群の一種にビオチンという栄養素があります。

ビタミンB群をサプリメントで補給している方だと馴染みのある栄養素ですが、そうでない方だと知らないかもしれませんね。

ビオチンは、必須の栄養素であるため欠かすことができません。不足すると糖新生や脂肪酸合成に不都合が生じるので、不足しないように補給しておきたい栄養素です。

糖代謝や脂肪酸合成の補酵素となる

ビオチンの生体内での主な働きは、糖代謝脂肪酸合成に必要な酵素の補酵素になることです。

人間の血液は、一定以上のグルコース(ブドウ糖)が含まれていなければなりません。そして、グルコースの濃度を一定以上に保つために人体には糖新生と呼ばれる機能が備わっています。糖新生は、タンパク質や中性脂肪などを材料にしてグルコースを作り出すことで、主に肝臓で行われています。

糖新生の過程では、ピルビン酸カルボキシラーゼという酵素が必要になりますが、ビオチンはその補酵素として働きます。

運動によって筋肉で生じる乳酸も、糖新生の材料となります。もしも、ビオチンが不足していると乳酸の利用が進まなくなり、筋肉痛の原因となります。だから、よく運動をする方は、ビオチンをしっかりと補給しておきたいですね。

また、ビオチンは、アセチルCoA(コーエー)から脂肪酸を合成するために必要なアセチルCoAカルボキシラーゼの補酵素としても働きます。他にアミノ酸のロイシンの代謝に関わるβ-メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼやプロピオニルCoAの代謝に関与するプロピオニルCoAカルボキシラーゼの補酵素としても、ビオチンは働きます。

エネルギー産生では、解糖系でグルコースからピルビン酸を合成するためにビオチンは必要となります。

1日の目安量

成人男性も成人女性も、ビオチンの1日の目安量は50㎍とされています。

ビオチンは、リジンというアミノ酸と結合して細胞内に存在しています。ビオチンを含む食べ物を食べると消化管でビオチニダーゼという酵素によってリジンとビオチンが切り離されて体内に吸収されます。

また、ビオチンは腸内細菌も合成しているので、体内に吸収されるビオチンの一部は腸内細菌由来のものです。

カロリーSlismで、ビオチンが多く含まれている食品(100グラム当たり)を調べました。

  • 鶏レバー=234.4㎍
  • 落花生=92.4㎍
  • 豚レバー=79.6㎍
  • 牛レバー=76.1㎍
  • 鶏卵=25㎍
  • 納豆=18.2㎍

ビオチンは、不足しにくい栄養素ではありますが、牛肉、豚肉、鶏肉にはほとんど含まれていないので、肉ばかりを食べていると不足する可能性があります。

また、卵白に含まれるアビジンという成分は、ビオチンと結合して吸収を妨げます。でも、アビジンは加熱するとビオチンと結合しなくなるので、卵を食べる際は熱を通した方が良いですね。

欠乏症

ビオチンの欠乏症には、皮膚炎、脱毛、粘膜の炎症、筋肉痛、倦怠感、疲労感、神経障害、インスリン作用不足などがあります。

ビオチンは細胞分裂にも関わっているので、皮膚や粘膜の健康維持には欠かすことができません。美容面でも、ビオチンはしっかりと摂取しておきたい栄養素です。

なお、ビオチンには過剰症はないと考えられています。

糖質制限をしていると、糖新生が活発になるでしょうから、ビオチンの消費量が多くなるかもしれません。ただ、糖質制限をしていると脂肪酸合成が行われにくくなるでしょうから、ビオチンの消費量が少なくなるかもしれません。

ビオチンの消費量が増えるのか減るのかわかりませんが、とりあえず、糖質制限をしている人は、やや多めにビオチンを摂って保険をかけておいた方が無難でしょう。

参考文献