パントテン酸は糖質と脂肪酸の代謝に関わる

ビタミンB群の一種であるパントテン酸は、体内で糖質と脂肪酸からエネルギーを作り出すために重要な働きをしています。

しかしながら、エネルギー不足にならないようにパントテン酸をしっかりと摂取しましょうといったことを聞く機会はほとんどありません。パントテン酸は、多くの食品にまんべんなく含まれているので、まず不足することはないため、しっかりと摂取しなさいと言われにくいのでしょうね。

だからと言って、パントテン酸を無視して良いわけではありません。パントテン酸は、エネルギー産生にとても重要な働きをしているので、無理なダイエットをしているとパントテン酸が不足し、それに伴ってエネルギーも不足する危険があります。

コエンザイムAの構成要素

パントテン酸は、体内で、システアミン、アデノシンと結合してコエンザイムAになります。

コエンザイムAは、補酵素AやCoA(コーエー)とも呼ばれ、糖質や脂肪酸からのエネルギー産生と深く関わります。

解糖系でグルコース(ブドウ糖)から合成されたピルビン酸にコエンザイムAがくっつくとアセチルCoAとなります。また、脂肪酸にコエンザイムAがくっつくとアシルCoAとなり、これをβ酸化するとアセチルCoAになります。

アセチルCoAは、ミトコンドリアの中でオキサロ酢酸とくっついてクエン酸となります。

クエン酸は、反応が進んでいくとオキサロ酢酸に戻り、その過程で電子が取り出され、多くのアデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれるエネルギーが作り出されます。

クエン酸から反応が進みオキサロ酢酸になる一連の過程をクエン酸回路といいます。クエン酸回路を回すためには、その前段階でアセチルCoAが必要となるので、コエンザイムAは非常に大切な化合物と言えます。そして、コエンザイムAを構成するパントテン酸も非常に需要な栄養素であり、糖質と脂肪酸からエネルギーを作り出すために欠かすことはできません。

その他のパントテン酸の働き

パントテン酸は、ナイアシンビタミンB₂とともに糖質や脂質からエネルギーを作り出すために重要な働きをしていますが、その他にも様々な役割を担っています。

俗に善玉コレステロールと呼ばれているHDLコレステロールの生成を促す働き、コレステロールから副腎皮質ホルモンを合成する働きが、パントテン酸にはあります。

副腎皮質ホルモンは、ストレスを感じた時に分泌され、血糖値を上昇させます。ストレスを緩和するために重要な副腎皮質ホルモンですが、分泌されすぎると血糖値が上がってしまうので、ストレスが溜まるような生活は避けたいところです。

また、副腎皮質ホルモンは、血流の電解質濃度の調節に関わり、血圧を上げて体内の細胞に栄養素を届ける働きもしています。

欠乏症

パントテン酸は、通常不足することのない栄養素ですが、過度のダイエットや抗生物質の多用により不足する場合があります。

パントテン酸が不足すると、動脈硬化、体重減少、成長障害、皮膚炎、脱毛、血圧低下といった症状が出ます。

パントテン酸の1日の目安量は、成人男性も成人女性も5mgです。高齢男性の場合は6mgが目安量とされています。なお、パントテン酸の耐容上限量は設定されておらず、過剰症の報告もありません。

100グラム当たりで、多くのパントテン酸が含まれている食品をカロリーSlismで調べました。

  • 鶏レバー=10.1mg
  • 豚レバー=7.19mg
  • 牛レバー=6.4mg
  • 納豆=3.6mg

他に牛肉は0.5mg、豚肉は0.79mg、鶏肉は1.68mgのパントテン酸が含まれています。鶏卵は1個(60グラム)当たり0.87mg、サケの切り身(80グラム)は0.98mgのパントテン酸含有量です。

野菜にもパントテン酸は含まれていますが、動物性食品と比較すると少なめです。

基本的に肉、魚介類、卵を食べるようにしておけば、パントテン酸が不足することはないですね。たまにレバーも食べておけば、十分でしょう。

参考文献