大阪府の新型コロナウィルス感染状況(21/01/13-21/08/20)。20代の重症化率はわずか0.1%しかない。

大阪府の新型コロナウィルスの新規陽性者数の増加が続いています。前回の記事で、大阪府の感染はピークに達したのではないかと思ったのですが、完全に予想が外れました。

空気感染が、感染拡大の主要因なら、台風と長雨で落ち着いてくると予想したのですが、どうも、屋外では空気感染しにくいのではないかと思います。むしろ、台風と長雨で、長期間、屋内で過ごすようになったことの方が、感染を拡大させているのかもしれません。屋内に感染者が1人でもいれば、室内にウィルスが充満してくるでしょうからね。

新規陽性者数の増加の内訳

1月13日から8月20日までの陽性者の増加数を確認していきましょう。なお、データは、大阪府の「新型コロナウイルス感染症患者の発生状況について」のページから取得しています。

最初は、経路別の新規陽性者の増加表です。

大阪府コロナウィルス陽性者増加表(経路別)

最近は、新規陽性者が2千人を超える日が続いているので、1週間で一気に陽性者数が増え、増加人数が10万人を越えました。そのうちの約93%が感染経路不明と感染経路不明者の濃厚接触者等です。

ニュースでは、濃厚接触者の追跡を縮小している自治体が出てきていると言ってましたが、妥当な判断だと思います。保健所の仕事が増えるだけですからね。隔離より治療を優先する方が良いでしょう。

年代別の新規陽性者の増加表です。

大阪府コロナウィルス陽性者増加表(年代別)

10代の陽性者数も1万人を超えてきました。

一方で、60代以上の陽性者数の増加人数は少なくなっており、ワクチンの効果が出ていることがわかります。

和歌山県では、1回のワクチン接種の場合は10万人のうち90人が感染し、2回接種の場合は10万人のうち7人が感染する確率だと報じられていました。1回接種でも、非常に高い効果が出ていることがわかります。

1千万都市の東京だと、1回接種で9,000人に感染者を抑えることができる計算です。毎日5千人程度の陽性者が出ている東京ですから、わずか2日間の陽性者数まで感染を抑えられるのですから、大きな効果と言えるでしょう。2回接種であれば700人まで減少します。

ただ、2回接種した場合、10万人当たりで1回接種と比較してわずか83人しか感染を減らせません。だから、2回接種を優先するより、1回接種を優先する方が感染を抑える点では大きな効果があります。2回目摂取の予約は全部キャンセルして、1回目の接種にワクチンを回す方が良いと思うんですけどね。

1月13日から8月20日までの陽性者の推移です。

1/13~8/20までの陽性者の推移

8月20日は、2,500人を超えました。この1週間での陽性者数の増え方が激しいです。やはり、前の週の台風と長雨のせいで屋内にいる時間が長くなっていることが、感染拡大の原因なのかもしれません。

それにしても、近畿地方の長雨はいつまで続くのでしょうか。もう10日ほど降りっぱなしです。

こちらは検査数の推移です。

1/13~8/20までの検査数の推移

8月20日は、2万回を超えました。2万回を超えるのは5月中旬以来です。

そして、1週間平均の陽性率の推移です。

1/13~8/20までの陽性率の推移(1週間平均)

陽性率が12%を超えました。こんなに高い陽性率は、これまでありませんでした。検査数を増やしても陽性率が下がらないので、まだ感染がピークには達していないようです。

先週は、陽性率が下がりだす気配を見せていたのですが、今週に入って再び上昇し始めているのを見ると、これまでとは傾向が変わってきている可能性があります。

なんにしても、この長雨で紫外線量が減少していると、ウィルスも、なかなか機能停止してくれそうにないですね。

経路別と年代別の陽性者の推移

経路別と年代別に陽性者の推移を見ていきましょう。

ますは、経路別です。

1/13~8/20までの経路別陽性者の推移

感染経路不明の増加が激しいです。最近では、家庭内感染が増えていると報じられていますが、グラフはそれを示していますね。家庭内感染が少なければ、もっと感染経路不明が少ないはずですから。

上のグラフから、医療機関、施設、「他」を取り出したのが以下のグラフです。

1/13~8/20までの経路別陽性者の推移(医療機関、施設、他)

「他」には、職場や学校などが含まれています。これまでは、医療機関と施設での陽性者の発生が多かったですが、医療従事者と高齢者へのワクチン接種が進み、今はほとんど発生しなくなっています。

今は、職場や学校で感染した人が、家族にコロナを移すことの方が多くなっていると見られます。

年代別の陽性者の推移です。

1/13~8/20までの年代別陽性者の推移

灰色の20代以下の線が急激に上昇しています。8月20日は、20代の陽性者が800人を超え、10代の陽性者も連日300人を超えています。

反対に60歳以上はワクチンの効果で、ゆっくりとしか陽性者数が増加していません。まだワクチンの2回接種が進んでいない7月初めから60歳以上の陽性者数は低くなっていますから、1回接種でも大きな効果が出ていることがわかります。

60歳以上の陽性者の推移です。

1/13~8/20までの年代別陽性者の推移(60歳以上)

60代は、まだ64歳以下のワクチン接種が進んでいないので増加していますが、最近はやや増加スピードが遅くなっているように見えます。

70代と80代は、これまでほとんど増えてこなかったのですが、今週はグラフの上昇がこれまでよりも急になっています。

1月13日から8月20日までの年代別陽性者の累計です。

1/13~8/20までの年代別陽性者の累計

10代の伸びが目立ち始めました。

20代も、さらに棒線が長くなっています。

重症者の状況

重症者の状況も見ておきましょう。

新規陽性者数が急増しているので、重症者数も大変なことになっていそうに思いますが、そのようなことはありません。

1月13日から8月20日までの重症者残留数の推移を見れば、それがわかります。

1/13~8/20までの重症者残留数の推移

確かにこのところ重症者残留数が増加傾向にありますが、陽性者数の増加スピードと比較すると緩やかです。8月20日の重症者残留数は173人でしたが、これは、1月の緊急事態宣言が出ている時と同水準です。

3月24日から8月20日までの重症者回転期間の推移です。

1/13~8/20までの重症者回転期間の推移

重症となった方も、順調に回復していることから、重症者回転期間が短縮し始めています。4月よりも短縮するスピードが速まっているように見えます。これは、重症化しても死亡しにくくなっていることが理由と思われます。

なお、7月8日から8月20日までに重症化した人数を7月1日から8月13日までの陽性者数で除した年代別の重症化率は以下の通りです。分母と分子に7日のずれがありますが、これは、陽性が判明してから重症化まで7日かかるとの仮定から、あえてそうしています。

  • 90歳以上=1.89%
  • 80代=3.62%
  • 70代=8.06%
  • 60代=6.94%
  • 50代=3.43%
  • 40代=1.86%
  • 30代=0.55%
  • 20代=0.12%
  • 10代=0.06%
  • 10代未満=0%

最近は、若い世代でも重症化しやすくなっていると言われていますが、そのようなことはありません。20代だと陽性者の1,000人に1人しか重症化しませんし、10代だと1,000人に1人も重症化しません。30代も99%は重症化しませんし、40代でも98%は重症化しません。

デルタ株は、従来株よりも感染力が強くなっていますが、毒性は弱くなっているようです。後で年代別の推定生存率を紹介しますが、デルタ株が90%以上になっていると言われている8月以降は、ずっと生存率が高くなっています。

感染しやすくても、大した被害をもたらさない。それがデルタ株です。

死亡者数の状況

死亡者数も見ておきましょう。

以下は、1月13日から8月20日までの毎日の死亡者数です。

1/13~8/20までの毎日の死亡者数

7月以降、それほど多くの死亡は確認されていません、最も多い日でも5人の報告です。これは、緊急事態宣言が出ていなかった3月と同水準です。だから、8月の緊急事態宣言も出す必要はなかったですし、延長する必要性もありません。

最近、40代の女性が自宅待機中に亡くなったり、妊婦が自宅待機中に搬送されず新生児が死亡したということがありましたが、これらは、現在の指定感染症の壁が原因で起こったことでしょう。妊婦の方は、保健所と何日間も電話で連絡をしていたそうですが、コロナが指定感染症でなければ、医療機関に問い合わせて適切な治療ができたかもしれません。

また、自宅待機中に亡くなるのは、自宅療養が危険だからではなく、コロナの陽性者を原則入院としているから病床がひっ迫しやすくなり、入院が必要な人が入院できなくなることが原因です。

1月13日から8月20日までの死亡者数は、2,064人です。その内訳は以下の通りです。

大阪府のコロナ感染による死亡者数の内訳(21/01/13~21/08/20)

20代が1人、30代が7人、40代が22人、50代が80人です。

なお、1月13日から8月20日までのコロナウィルスの陽性者の推定生存率は以下の通りです。

  • 90歳以上:72.9%
  • 80代:81.5%
  • 70代:91.0%
  • 60代:97.6%
  • 50代:99.4%
  • 40代:99.86%
  • 30代:99.96%
  • 20代:99.99%
  • 10代以下:100.0%

全世代で、推定生存率が上昇しています。従来株と比較してデルタ株の毒性が弱まっていることがわかります。60代以上はワクチンの効果で推定生存率が高まっていますが、50代以下でも推定生存率が高まっていますから、ワクチンだけが死亡者数を減らしているのではありません。

現在は、50代の重症者数が多くなっているので、ワクチンは50代を優先して1回接種を進めた方が良いですね。若者がコロナを拡散していると言って、20代に優先的にワクチンを接種しても、重症化率が0.1%しかない世代ですから、医療に与える影響は大きくありません。

また、早く現在の指定感染症の取り扱いを変えないと、助かる命も助からなくなります。