朝食を抜いて運動すると老けるらしい

朝食を毎日とっていますか?

私は、朝は食欲がないのですが、タンパク質を補給するためにハムとチーズを食べています。野菜は気持ち悪くなるので食べません。どうも、寝起きは消化器官の稼働が悪いようです。

朝食を食べようが食べまいが、本人の好きにすれば良いと思うのですが、必ず食べないといけないと主張する人もいます。Women’s Healthの以下の記事でも、朝食を食べずに運動すると老けると書かれています。

フルマラソンを走るのなら、直前に食事をした方が良さそうですが、軽いジョギング程度なら運動後に食べたって問題なかろうと思うのですが。

血中の遊離脂肪酸濃度が高いのは中性脂肪が減っている証拠

上の記事を読むと、起床時は中性脂肪の分解が進むとか、アドレナリンが中性脂肪を分解するとか、正しいことが書かれています。

でも、結論で、糖をしっかりとって運動で糖をたくさん使えば代謝が良くなるとなっているのが、何だそれって感じです。

まず、血糖値が高い状態だと、中性脂肪の分解は起こらないことを知っておく必要があります。糖を摂ると血糖値が上がり、すい臓からインスリンが分泌されます。このインスリンが中性脂肪を分解するホルモン感受性リパーゼの働きを抑えてしまうのです。

一方、血糖値が低い状態、つまり、インスリンの分泌量が少ない状態だと、アドレナリン、グルカゴン、コルチゾール、成長ホルモンといったインスリン拮抗ホルモンの働きが活発になり、ホルモン感受性リパーゼの働きが促進されます。ホルモン感受性リパーゼによって分解された中性脂肪は、グリセロールと脂肪酸になり、脂肪酸は血中に放り込まれアルブミンとくっついて遊離脂肪酸となります。

遊離脂肪酸は、血液の中を泳ぎ、各組織に向かいます。そして、細胞が脂肪酸を受け取り、ミトコンドリアでβ酸化を経てアセチルCoAとなり、クエン酸回路が回り、多くのエネルギー(ATP)が作られます。

だから、遊離脂肪酸濃度が高いということは、中性脂肪の分解が進み、細胞で次々と脂肪酸がエネルギー利用されている状態を意味しています。

痩せることを中性脂肪が減ることと捉えれば、中性脂肪の分解が進んでいる起床後、朝食を摂る前のジョギングはダイエットに効果的です。さらに朝食でも、糖質を取らなければ、ホルモン感受性リパーゼの働きが抑制されないので、無駄な中性脂肪の分解が進みます。

遊離脂肪酸が細胞を溶かし老けにつながる?

上の記事で、特に疑問を感じたのが、遊離脂肪酸には界面活性作用があり、細胞を溶かして老けさせるといった内容です。

確かに遊離脂肪酸には、界面活性作用がありますが、余った遊離脂肪酸は、肝臓に運ばれて再びグリセロールとくっつき中性脂肪となりますから、人体に悪影響を与えるとは思えません。ちなみに遊離脂肪酸の詳しい説明については、厚木・森の里ホームズというウェブサイトの以下のページをご覧になってください。

中性脂肪の分解が進むと、グリセロールと脂肪酸が増えると先ほど述べました。このうちグリセロールは、肝臓や腎臓での糖新生によってグルコース(ブドウ糖)になります。

ここで疑問に思いませんか?

中性脂肪の分解が進めば進むほど、血中の遊離脂肪酸濃度が高まります。一方で、中性脂肪の分解が進めば、グリセロールもたくさん作られ、糖新生によって多くのブドウ糖が血中に放り込まれます。血中のブドウ糖濃度が高いことを血糖値が高いと表現しているわけですが、血糖値が上がるとどうなりましたか?

そう、すい臓からインスリンが分泌されるんでしたよね。

インスリンが分泌されると、ホルモン感受性リパーゼの働きが抑えられましたよね。ホルモン感受性リパーゼの働きが抑えられれば、中性脂肪の分解が進まなくなりますから、血中の遊離脂肪酸濃度は上がりません。各組織で脂肪酸がエネルギー利用されていますから、徐々に血中の遊離脂肪酸濃度は下がっていきます。

つまり、際限なく遊離脂肪酸濃度が高まる状況は、通常、起こりえないのです。

確かに遊離脂肪酸濃度が高くなりすぎて、細胞を溶かし始めると老けてしまうでしょう。しかし、我々の体の中では、常にインスリンとインスリン拮抗ホルモンが綱引きをしているので、遊離脂肪酸濃度がやたらと高い状態が持続する、あるいは、血糖値がやたらと高い状態が持続するといったことは、通常は起こりません。

したがって、遊離脂肪酸が細胞を溶かし老けさせるといったことも、まず起こらないのです。

糖尿病になると綱引きできなくなる

ところが、この綱引きが崩れる場合があります。それは、糖尿病になった場合です。

糖尿病は、血糖値が高くなって戻らない状態です。インスリンの効き目が悪くなり血糖値が下がらない場合もありますが、1型糖尿病や2型糖尿病が進行した場合は、インスリンの分泌量が極端に減ってしまいます。

インスリンが分泌されない状況では、インスリン拮抗ホルモンばかりが働き、ホルモン感受性リパーゼの働きが促進され、血中の遊離脂肪酸濃度や血糖値が上がっても、正常な状態に下げることができなくなります。

1型糖尿病は、自己免疫によってすい臓のインスリンを分泌するβ細胞が破壊されますが、2型糖尿病の場合も、糖質の過剰摂取を続けているとβ細胞に負担を与え壊してしまいます。

もしも、遊離脂肪酸によって細胞が溶かされるとすれば、それは、糖質過剰摂取がもたらしたインスリン分泌不全が原因でしょう。

冒頭で紹介した記事の結論が、「糖をしっかり摂りましょう」となっているのがおかしいと感じたのは、こういうことです。

老けたくなければ、糖質制限が正解。

参考文献