消費カロリーが摂取カロリーを上回っても計算上は痩せるとは限らない

ヒトが太るか痩せるかは、消費カロリーと摂取カロリーの関係で決まると信じられています。

「消費カロリー > 摂取カロリー」なら痩せる。
「摂取カロリー > 消費カロリー」なら太る。

では、本当にこの関係が成立するかどうかを簡単に計算して確かめてみましょう。

消費カロリーと摂取カロリーが同じ1,800kcalでも体重の増減はあり得る

計算の前提として、消費カロリーも摂取カロリーも1,800kcalと仮定します。

カロリーの理屈だと、消費カロリーと摂取カロリーが同じなら、体重の増減は起こりません。これが果たして本当かを考えてみましょう。

カロリーは、糖質、脂質、タンパク質から計算されます。それぞれの1グラム当たりのカロリーは以下の通りです。

  • 糖質=4kcal
  • 脂質=9kcal
  • タンパク質=4kcal

仮に摂取カロリーの1,800kcalを糖質で補給したとします。この場合、糖質摂取量は450グラムです。

  • 糖質摂取量=1,800kcal/4kcal=450グラム

次にエネルギーの全てを脂質で賄ったとします。つまり、消費カロリー1,800kcalの全てが脂質ということです。この場合、脂質の消費量は200グラムです。

  • 脂質の消費量=1,800kcal/9kcal=200グラム

よって、体重の増減は、糖質摂取量と脂質の消費量の差となるので、この場合、250グラムの増加となります。

  • 体重の増加=450グラム-200グラム=250グラム

消費カロリーも摂取カロリーも同じなのに体重が増加と計算されましたよね。

仮に消費カロリーの全てを糖質、摂取カロリーの全てを脂質とした場合には、体重が250グラムの減少と計算されます。

なぜ、このような結果になるのでしょうか?

カロリー理論は三大栄養素の摂取割合と消費割合を無視している

消費カロリーも摂取カロリーも同じなのに体重の増減が起こるのは、カロリーの理屈が、そもそも、糖質、脂質、タンパク質の三大栄養素がどのような割合でエネルギー利用されているかを無視しているからです。

現代の栄養学では、糖質、脂質、タンパク質の摂取カロリーは、以下の比率が望ましいとされています。

  • 糖質:脂質:タンパク質=6:2:2

しかし、ヒトの体が、上記の割合でエネルギーを作っているとは限りません。糖質を摂取した時には、糖質を優先的に消費しますし、糖質を摂取しなければ中性脂肪(脂質)がエネルギー利用されます。また、空腹時には、中性脂肪のエネルギー利用割合が高まります。

したがって、糖質、脂質、タンパク質をどのような割合でエネルギー利用するかは、その時の状況によって変わるので、上記の糖質、脂質、タンパク質の摂取割合とエネルギー利用の割合が同じになるかどうかはわかりません。

もしも、糖質、脂質、タンパク質の1グラム当たりのカロリーが4kcalで統一されていれば、体がどのような割合でエネルギーを作り出しても、体重の増減は同じになります。しかし、カロリー理論では、脂質は1グラム当たり9kcalとして計算するので、脂質の摂取割合が変化すると、摂取カロリーと消費カロリーが同じでも体重の増減が生じます

そして、カロリー理論からすると、摂取カロリーの全てを脂質で賄うと、消費カロリーと摂取カロリーが同じなら必ず体重が減少することになります。

例えば、糖質、脂質、タンパク質の消費カロリー1,800kcalの内訳が以下の通りだったとします。

  • 糖質=400kcal
  • 脂質=450kcal
  • タンパク質=950kcal

この場合、体重の減少は387.5グラムです。

  • 糖質=400kcal/4kcal=100グラム
  • 脂質=450kcal/9kcal=50グラム
  • タンパク質=950kcal/4kcal=237.5グラム
  • 合計=387.5グラム

先ほど、摂取カロリー1,800kcalの全てを脂質で賄った時の体重増加が200グラムと計算したので、上の割合で三大栄養素をエネルギー利用した場合には、187.5グラムの体重減少となります。

  • 体重減少=387.5グラム-200グラム=187.5グラム

このようにカロリー理論は、三大栄養素の摂取割合と消費割合を無視しているので、摂取カロリーと消費カロリーが同じでも計算上は体重の増減が生じることになります。

簡単な計算なのですが、実際に計算した人がほとんどいないから、カロリー理論はいつまでも信じられているのでしょう。

カロリー理論はクエン酸回路が解明される前にできた理論

現代のカロリー理論ができたのは、19世紀のことです。これについては、以下の記事で紹介しています。

ヒトは、細胞内のミトコンドリアがクエン酸回路を回してエネルギーを作っています。このクエン酸回路の仕組みが解明されたのは、20世紀前半です。

つまり、カロリー理論は、クエン酸回路が解明される前に提唱された仮説でしかないのです。クエン酸回路が解明された後にカロリー理論も見直しをするべきなのですが、どうも、それをやった人はいないようです。

細かくカロリー計算をしているのに太るのは、あなたが悪いのではありません。怪しいカロリー理論を正しいといつまでも言い続けている人がいることが、ダイエットがうまくいかない原因です。

太ることを体に脂肪が蓄積することと捉えると、糖質摂取こそが肥満の元凶です。

糖質を摂取すると、体内で脂肪に変換されて蓄積されていきます。糖質を過剰に食べ続けていれば、徐々に脂肪が増えていきます。脂肪の蓄積を防ぐためには、カロリー計算より糖質計算の方が重要です。

まずは、1日3食のうち1食だけでも、米やパンを食べず、代わりに肉、卵、魚を食べるところから試すと良いでしょう。これだけでも、お腹周りの脂肪が減るのを実感できますよ。