食品のカロリー計算がいい加減という話

お店で売られている食品には、栄養成分が表示されているものがありますよね。タンパク質が何グラム、脂質が何グラムといった形で表示されているあれです。そして、その中にはエネルギーが何カロリーかという表示もされています。

最近、このエネルギー、つまりカロリー表示がおかしいということに気づいたんですよね

バターピーナッツのカロリー計算

糖質制限を始めてから体重が減り始めたことから、最近は、これ以上体重が減少しないように間食にナッツ類を食べたりチーズやハムをつまんだりしています。

ある日、何気なくよく食べるバターピーナッツの栄養成分表示を見ました。

バタピーの栄養成分表示

現代栄養学では、カロリーは三大栄養素と言われる炭水化物、タンパク質、脂質から計算するようになっています。ここで重要となるのが炭水化物です。炭水化物は糖質と食物繊維の合計です。食物繊維は栄養として吸収できないものの総称なのでカロリーに影響を与えません。

なので、カロリーは、糖質、タンパク質、脂質から計算されます。糖質とタンパク質は1g=4kcal、脂質は1g=9kcalです。

それで、上記のバターピーナッツの栄養成分表示をもう一度見ていただきたいのですが、炭水化物という表示はあっても、それを細分した糖質と食物繊維の表示がありません。これでは、消費者はカロリー計算をできないですよね。でも、試しに炭水化物を4kcalとしてバターピーナッツ100gのカロリーを計算してみました。その結果は以下のとおりです。

  • 炭水化物=18.2g×4kcal=72.8kcal
  • タンパク質=23.7g×4kcal=94.8kcal
  • 脂質=52.7g×9kcal=474.3kcal
  • 合計=72.8kcal+94.8kcal+474.3kcal=641.9kcal→小数点以下を四捨五入して642kcal

このバターピーナッツのカロリーは642kcalとなりました。この数字は、栄養成分表示に記載されているカロリーとぴったり一致しています。

これはおかしいですね。通常、ピーナッツは100g当たり5gほどの食物繊維が含まれているので、これを炭水化物の総量から除外して糖質のカロリー計算をしなければなりません。でも、この計算結果を見ると、食物繊維を除外してカロリーを計算していないことがわかります。

食物繊維を除外してカロリー計算をしていないのは、バターピーナッツだけではありませんでした。その他の食品も試しに計算したのですが、炭水化物の量に4kcalを乗じた計算結果と食品に表示されているカロリーが同じになりました。

結構、いい加減なものですね。

体に付いた脂肪は何カロリー?

さて、ダイエットの基本的なやり方は、摂取カロリーと消費カロリーの管理ですよね。

消費カロリーが摂取カロリーを上回っていれば痩せていきますし、その逆だと太っていきます。これが、基本的な考え方です。しかし、上のバターピーナッツのように食品の栄養成分表示のカロリーがそもそも適当なので、正確に摂取カロリーを把握するのは困難です。食材を買ってきて自炊すれば計算は可能と言えますが、それでも、正しくカロリー計算できない理由が他にもあります。

それは摂取した糖質が4kcalなのか9kcalなのかがわからないからです。

さっき、糖質は4kcalだと述べたのに何を言っているんだと思う方もいらっしゃるでしょう。でも、糖質は4kcalなのか9kcalなのか明確に答えることができる人は、おそらく現代人の中にはいないはずです。

糖質は摂取すると、血液の中に入ります。これが血糖ですね。血糖値が上がると膵臓からインスリンが追加分泌され、血糖は血管の外に出されます。

血管の外に出された血糖は、一部が緊急用のエネルギーとして筋肉に取り込まれグリコーゲンとして貯蔵されます。そして、筋肉に取り込めなかった血糖は脂肪に変わります。

では、摂取した糖質は、自分の体の中でどれだけがグリコーゲンとなりどれだけが脂肪になるかわかりますか?そんなこと素人にわかるわけないですよね。でも、これがわからなければ摂取カロリーを計算することなんてできません。

スロトレ完全版では、3ヶ月間スロトレを行い筋肉量を増加させると基礎代謝が100kcal/日アップしたというデータが掲載されています。そして、そのデータが掲載されているページには、以下の記述があります。

100kcalは脂肪組織の量に換算すると13g程度。ふだんどおりの生活でも、毎日勝手に10g以上の脂肪が燃えていく計算に。(16ページ)

この文章からだと、脂肪は9kcalで計算されていることがうかがえます。

脂質のカロリーは1g当たり9kcalと先ほど述べたので、何も問題ないように思えますが、そんなことはありません。だって、スロトレでも有酸素運動でもどっちでもいいのですが、燃焼した脂肪が脂質を摂取して蓄えられたものなのか、糖質を摂取して蓄えられたものなのか、わからないじゃないですか。

摂取した糖質は全て4kcalで計算し、消費した脂肪は全て9kcalで計算したのでは、入りと出のカロリーが一致しません。収支を一致させるための正しい計算を行うためには、摂取した糖質のうちどれだけが脂肪に変わったかを把握しなければ不可能ですよね。

カロリー計算は腸内細菌の影響も受けている

以前にも紹介した医師の夏井睦先生の著書「炭水化物が人類を滅ぼす」の中で、現在のカロリーの測定法は、1883年にルブネルという科学者によって考案された方法だということが記述されていました。

糖質、タンパク質、脂質の1g当たりのカロリーが、それぞれ4kcal、4kcal、9kcalというのは、ルブネルが考えたわけですね。そして、それぞれのカロリー数を導いた計算式は以下のものだったようです。

  • 食物を空気中で燃やして発生した熱量=A
  • 同量の食物を食べて出た排泄物を燃やして発生した熱量=B
  • 食物の熱量(カロリー)=A-B

計算式を見ると、合理的なように思えますが、この計算式には見落とされているものがあります。それは、腸内常在菌の存在です。

人間の腸内には、大腸菌など様々な種類の細菌が棲んでいます。排便時には、これらの腸内常在菌も便に混ざって排泄されます。その量は排便中に半分から3分の2程度含まれていると言われています。だから、上記計算式の「B」の部分は、便に含まれている大腸菌などの細菌を除外して計算されなければなりません。

普通に考えると、そこまで考慮して食物のカロリーが計算されているのだろうと思いますが、おそらく、腸内常在菌の存在は無視されています。

Wikipwdiaで腸内細菌の歴史を調べてみると、1876年にコッホが炭疽菌を発見し、その後、1885年に大腸菌などの腸内細菌の存在がわかったようです。だから、我々の排便中に細菌が含まれているというのがわかったのもこの頃だと考えられます。

ところで、カロリー計算はいつ考案されたのでしたか?1883年ですよね。大腸菌の存在が確認されたのが1885年なのですから、カロリー計算に腸内常在菌は考慮されていないことになりませんか。

それなのに腸内常在菌が発見される以前に考案された計算法で現代もカロリーを計算しているんですよね。

カロリー計算にはインスリンも無視されている疑いがある

さらに言えば、現代のカロリー計算は、インスリンも無視している疑いがあります。

先ほども述べましたが、糖質が体内に入り血液の中に入ると、膵臓からインスリンが追加分泌され、血管の外に追い出されます。その一部は脂肪に変わるということでしたね。

ノボ ノルディスク ファーマ株式会社のウェブサイトの「発見までの道のり 死の病だった糖尿病と奇跡のホルモン、インスリン」というページには、1918年に「英国のE. シャーピー=シェーファーがランゲルハンス島からの内分泌ホルモンとして『インスリン』命名」と記述されています。(2015年6月4日追記:上記ページは削除されています)

つまり、1883年から35年も後にインスリンの働きがわかったわけですよね。この時にカロリー計算にだれも疑問を持たなかったのでしょうか。当時はわからなかったとしても、現代でも、疑問に思わずにルブネルのカロリー計算を盲信しているのはどう考えてもおかしいのではないでしょうか?

ルブネルは絶対に糖質を摂取するとインスリンが分泌されて、その一部が脂肪になるなんて事実を知らなかったはずです。インスリン発見前にカロリー計算を考えたのですから。

でも、こういったことは科学の世界ではよくあることでしょう。だから、後世の人間がルブネルの見落としを修正しなければならないわけです。しかし、誰も修正していないみたいなんですよね。

おそらく、私のようにカロリー計算に疑問を持っている人はたくさんいると思います。でも、大人の事情でそういうことを口にできないのでしょう。

特に食品メーカーやカロリーコントロールの重要性を説いている医師や栄養士は、今更カロリー計算は間違っていましたなんて、口が裂けても言えそうにないですね。

参考文献