アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」が、厚生労働省で承認されました。
アルツハイマー病は、脳にアミロイドβというタンパク質が蓄積していくことで、記憶障害が起こるとされています。でも、この説、本当なのでしょうか。
レカネマブは、アミロイドβに働きかけて取り除くらしいです。でも、アルツハイマー病の原因がインスリン抵抗性とも考えられているので、アミロイドβを取り除いたところで、インスリン抵抗性が改善されなければ、症状は良くならないように思います。
脳にインスリンが作用しなくなることが問題
以前にも紹介したことがある『アルツハイマー病は「脳の糖尿病」』という本では、脳で、インスリンが働かなくなることがアルツハイマー病の原因だと解説されています。
すい臓で作られたインスリンは、血液脳関門を通り脳に入ることができます。
インスリンは、細胞がブドウ糖を受け取るために必要なホルモンですが、何らかの原因で、インスリンの作用が落ち、細胞がブドウ糖を取り込めなくなることがあります。これが、インスリン抵抗性です。太っている人が糖尿病と診断される場合、インスリン抵抗性を惹き起こし、脂肪組織にブドウ糖を押し込めなくなっていることが多いです。この場合、痩せれば、脂肪組織にブドウ糖を押し込めるようになるので、インスリン抵抗性が改善します。
上の本のタイトルにもあるようにアルツハイマー病が脳の糖尿病であるのなら、インスリン抵抗性を改善することこそが大切だと思うんですよね。
脳がインスリン抵抗性を惹き起こすのは、血中のブドウ糖濃度が高くなり、これを下げるために大量にインスリンが分泌されるからです。インスリンが大量にある状態なら、脳までインスリンが届きそうですが、実際はその逆で、インスリン濃度が高すぎると渋滞を起こし、血液脳関門を通れなくなるそうです。
そうすると脳細胞はブドウ糖を受け取れなくなるので、エネルギー不足となります。これが、アルツハイマー病の原因だと考えられています。
インスリン抵抗性があるとアミロイドβを取り除けなくなる
インスリンには、ブドウ糖を細胞に届ける以外にも、アミロイドβを分解する作用もあります。しかし、インスリン抵抗性を惹き起こしていると、インスリンが血液脳関門を通りにくくなるので、脳にできてしまったアミロイドβを分解できなくなります。
また、インスリンを分解するインスリン分解酵素もアミロイドβの分解に関わっていますが、インスリン濃度が高い高インスリン血症の状態では、インスリン分解酵素がインスリンの分解にばかり使われ、アミロイドβの分解に回りにくくなります。
つまり、アミロイドβの蓄積は、インスリンとインスリン分解酵素が上手く働かなくなることが原因と考えられます。
このような状況で、アミロイドβを取り除く薬を使用したところで、インスリン抵抗性があると脳にブドウ糖を届けられないのですからエネルギー不足を解消できません。また、アミロイドβの蓄積がアルツハイマー病の原因だとしても、インスリンがしっかりと作用すれば、アミロイドβの蓄積を抑えられるのですから、まずはインスリン抵抗性の改善が必要ではないでしょうか。
ケトン体はインスリンなしで脳がエネルギー利用できる
インスリン抵抗性の改善は、高インスリン血症を改善することにあります。
インスリンは、糖質を摂取するとたくさん分泌されるので、まず糖質制限をすることがインスリン抵抗性の改善には重要でしょう。また、糖質を摂取しなければ、肝臓が、脂肪酸からケトン体を大量に作り出し、これを脳がエネルギー利用できるようになります。
ケトン体は、インスリンなしで脳細胞が受け取ることができます。インスリン抵抗性がある状況だと、脳はブドウ糖を受け取りにくくなりますから、この場合には、ケトン体を優先的に使える状況にすべきでしょう。このような観点からも、糖質制限をしてインスリンの分泌量を減らすことが、アルツハイマー病の予防には大切なのではないかと思います。
脳がインスリン抵抗性を起こしていることが、アルツハイマー病の原因だとわかっているのなら、それをどうするかを考えなければいけないのではないでしょうか。でも、アミロイドβにばかり意識が行っている医学界では、そのような発想にならないのでしょうね。