食事制限によるダイエット法を採用してもタンパク質摂取量は減らさない

痩身のためのダイエット法はいろいろありますが、体重を減らすために最も効果的な方法は絶食です。

絶食すれば、体の中に食べ物が入って来ないので、体重が減りやすいことは容易に想像できます。しかし、絶食は、体に必要な栄養素の補給を絶つ行為ですから、長期間続けると死の危険があります。

だから、痩せるためだけに絶食をするのは、好ましい行為とは言えません。痩せなければ死ぬかもしれないような状況になった場合には、絶食は必要かもしれませんけどね。

断食の欠点

分子栄養学の専門家の三石巌先生の「高タンパク健康法」を読んでいると、断食(絶食)の欠点に関する記述がありました。

同書によると、肥満を気にしていた6人の医学者が、自らの体を実験台として痩せる方法を研究していたそうです。彼らは、まず断食が最も確実な痩身法だという前提から研究を始めます。

しかし、6人の研究者は、断食の2つの欠点に気づきました。

1つは、断食すると同化よりも異化が優位となることです。人間の体は、タンパク質の分解と合成を繰り返しながら維持していますが、断食をすると異化、すなわち体タンパクの分解が進んでしまいます。

2つ目の欠点は、水と電解質の喪失です。断食でタンパク質が失われると、低タンパク血症となり浮腫を生じます。血液はタンパク濃度を維持しようとして、水分を血管の外に出し、結果として組織が水膨れになって浮腫を表します。その一方で尿量が増加し、水分の喪失につながります。同時に塩分などの電解質も外に出てしまいます。

この2つの欠点を乗り越えて健康的に痩せるためにはどうすれば良いのでしょうか?

タンパク質摂取量は制限しない

6人の研究者が、たどり着いたダイエットに最も効果的な食事制限は、高タンパクを維持したままで、糖質と脂質を制限する方法でした。

1日に70グラムのタンパク質と6グラムの食塩を摂取し、糖質と脂質は控える食事制限であれば、断食特有のマイナス面を克服できることを知った6人は、平常通りに日常活動ができたそうです。6人の1日の摂取カロリーは370kcalで、不足するカロリーは皮下脂肪の燃焼によって得られたとも紹介されていました。

日本では、1日の摂取カロリーを糖質で6割、脂質とタンパク質で2割にすることが好ましいとされています。しかし、この比率で総摂取カロリー減らす食事制限をすれば、タンパク質摂取量が減ってしまうので、断食特有の欠点を生じるのではないでしょうか?

いくらかでもタンパク質を摂取している点では断食より体へのダメージは少ないと思いますが、体タンパクの異化が同化を上回る可能性は否定できません。したがって、糖質、脂質、タンパク質の摂取比率を変えないで食事量を減らすダイエットも好ましい痩せ方とは言えないですね。

優先的に糖質を制限する

タンパク質摂取量を維持するためには、肉や卵などの動物性タンパク質を食べなければなりません。植物性タンパク質は、タンパク質の良質度を示すプロテインスコアが低いので、同じタンパク質摂取量でも動物性タンパク質よりも必須アミノ酸の摂取量が少なくなります。

プロテインスコアの高い動物性タンパク質を優先的に食べると、同時に脂質も摂取しやすくなります。良質なタンパク質補給を優先するためには、脂質摂取もやむを得ないでしょう。

そうすると、食事制限によるダイエットで真っ先に減らさなければならないのは糖質になります。

糖質制限をすればわかることですが、食事量を減らさなくても体脂肪は減ります。糖質制限を否定する人は、糖質制限で痩せるのは水分が体外に出るだけだと言いますが、どのような方法でも、痩せれば水分は外に出ます。人間の体は60%が水分ですから、その比率を維持するためには、減った体重の60%程度は水分でなければ、つじつまが合いません。

したがって、まずは食事量を減らさずに糖質摂取量を極力減らすダイエットを試してみましょう。

それで、体重が減らない場合は食事量を減らしていきます。その際も、高タンパクは維持しますから、減らすべきは脂質となります。

つまり、減らす順番は、第1が糖質、第2が脂質であり、タンパク質は減らしてはなりません

分子生物学者の福岡伸一先生も、タンパク質摂取が重要だと述べています。

分子生物学の立場からは、タンパク質摂取は減らしてはならないということのようですね。

参考文献