筋トレをしている人は、タンパク質を多く摂取していることと思います。
肉や卵をたくさん食べる人もいるでしょうし、手っ取り早くプロテインを飲んでタンパク質を補給している人もいるでしょう。
しかし、タンパク質をたくさん摂っているだけで良いわけではなく、タンパク質の量に応じてビタミンB₆も摂る必要があります。ビタミンB₆は、タンパク質を構成するアミノ酸の合成や分解に必要となる成分ですから、これなしには体作りはできません。
ビタミンB₆の種類
ビタミンB₆には、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンの3種類があります。
食事から摂取したビタミンB₆は、生体内では、ピリドキサールリン酸(PLP)やピリドキサミンリン酸(PMP)の形で存在します。ビタミンB₆の多くは、筋肉中のグリコーゲンホスホリラーゼと結合して貯蔵されます。
アミノ基転移反応に必要
PLPやPMPは、アミノ基転移反応や脱炭酸反応などのアミノ酸代謝に欠かせない酵素の補酵素として働きます。
タンパク質は、20種類のアミノ酸の集合体で、プロリンを除くアミノ酸はアミノ基(NH₂)を持っています。アミノ基転移反応は、あるアミノ酸が持っているアミノ基を他の物質に渡して、別のアミノ酸を作る反応のことです。
例えば、アラニンというアミノ酸が持つアミノ基をα-ケトグルタル酸に渡すと、グルタミン酸というアミノ酸が出来上がります。そして、アミノ基を失ったアラニンは、ピルビン酸に変化します。この時、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)という酵素が必要となりますが、その補酵素としてビタミンB₆が必要となります。
他にも、アスパラギン酸というアミノ酸が持つアミノ基をα-ケトグルタル酸に渡しても、グルタミン酸が作られます。その際、アミノ基を失ったアスパラギン酸は、オキサロ酢酸に変化します。この場合に必要となる酵素は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)で、その補酵素としてもビタミンB₆が働きます。
オキサロ酢酸は、アセチルCoA(コーエー)とくっついてクエン酸となり、クエン酸回路を回してアデノシン三リン酸(ATP)というエネルギーを作るために欠かせませんし、糖新生にも必要となります。
その他の働き
その他にも、ビタミンB₆は、トリプトファンというアミノ酸からナイアシンを合成するために必要となります。
アドレナリンやノルアドレナリンの前駆体であるドーパミンの合成、ストレスの軽減やリラックス効果があるとされるγ-アミノ酪酸(GABA)の合成にも、ビタミンB₆は関わっています。
また、タンパク質からアミノ酸への分解、アミノ酸からのピルビン酸やアセチルCoAの合成にビタミンB₆が必要であることから、ATPを産生する過程でもビタミンB₆は重要な働きをしています。
ビタミンB₆の1日の推奨量
ビタミンB₆の1日の推奨量は、成人男性で1.4mg、成人女性で1.1mgとされています。
より詳しく計算すると、タンパク質1グラムに対して0.019mgのビタミンB₆が必要と推定されていますから、普段の食事から摂取するタンパク質量を基準にビタミンB₆の摂取量を求めるのが良いでしょう。
1日のタンパク質の摂取量の目安は、体重1kgに対して1グラムとされています。筋トレをしている方は、体重1kgに対して2グラムが必要と言われていますから、筋トレをしている方のビタミンB₆の摂取量は、運動をしていない人よりも2倍くらい多くなる計算です。
例えば、体重が60kgで筋トレをしている人であれば、120グラムのタンパク質摂取が1日の目安となるので、以下の計算からビタミンB₆を1日に2.28mg摂る必要があります。
- 120グラム×0.019mg=2.28mg
ビタミンB₆の欠乏症と過剰症
ビタミンB₆が不足すると、脂漏性皮膚炎、湿疹、舌炎、口角炎、小赤血球貧血といった症状が出ます。
また、過剰症については、大量に摂取しても起こらないとされていますが、長期間に渡って過剰摂取した場合に末梢神経の痛みやしびれ、知覚障害などの報告があります。
なお、ビタミンB₆の1日の耐容上限量は、ピリドキシンとして、成人男性が60mg、成人女性が45mgとされています。
カロリーSlismで調べると、ビタミンB₆が多く含まれている食品(100グラム当たり)には以下のものがありました。
- ミナミマグロ=1.08mg
- マグロ=0.80mg
- 鶏ささみ=0.60mg
- 牛レバー=0.89mg
- 豚レバー=0.56mg
- 鶏レバー=0.65mg
他に肉類には、100グラム当たり0.2mg前後のビタミンB₆が含まれています。唐辛子、バジル粉末、ガーリックパウダー、にんにくなど、味付けに使う食材にも、ビタミンB₆が重量の割に多く含まれていますから、肉類の調理の際に活用すると良さそうです。
ボディビルダーは、やたらと鶏ささみを食べている印象がありますが、鶏ささみは、高タンパクでビタミンB₆が多く含まれている食材なので、筋肉を発達させるために理にかなった食事だったんですね。