動物性食品をたくさん食べていると健康に良くないと言われていますよね。
その理由として挙げられているのは、動物性脂肪の摂りすぎが心疾患の原因となるというもの。動物性脂肪には、飽和脂肪酸が多く含まれており、これが体の中で悪さをして心筋梗塞や脳梗塞になるということらしいです。だから、中年と呼ばれる年代になったら、健康のことを考えて飽和脂肪酸の摂取を控えることが大事ということみたいです。
でも、飽和脂肪酸を気にして摂取量を減らしても、糖質を摂取していては意味がないと思うんですよね。
脂肪酸合成の材料になるのは糖質
飽和脂肪酸を減らしても、糖質を摂取していては意味がないと思うのは、糖質(ブドウ糖)が体内で飽和脂肪酸になるからです。
摂取したブドウ糖が細胞に取り込まれると、解糖系でピルビン酸が合成されます。ピルビン酸は、ミトコンドリアに運ばれて、アセチルCoA(コーエー)となり、オキサロ酢酸とくっつきクエン酸となってからクエン酸回路に入り、アデノシン三リン酸(ATP)というエネルギーが取り出されます。ブドウ糖が、人体のエネルギー源となっているわけですね。
でも、エネルギー需要を超えてブドウ糖が細胞内に入って来ると、クエン酸回路に入ったクエン酸は、外に出され、アセチルCoAとオキサロ酢酸に戻ります。そして、アセチルCoAから脂肪酸が合成され、最終的に中性脂肪という形になって体に蓄えられます。
この仕組みを知っていれば、飽和脂肪酸の摂取量を減らすだけでは意味がないと気づきますよね。体内に入って来たブドウ糖も飽和脂肪酸となるのですから、糖質摂取量も控えなければなりません。
なぜ飽和脂肪酸を合成するのか
ところで、人体は、なぜブドウ糖から飽和脂肪酸を合成するのでしょうか。飽和脂肪酸が体に悪いのなら、ブドウ糖のまま保存すれば良いじゃないかと思いませんか?
血液中のブドウ糖濃度が高いことを血糖値が高いと言います。血糖値が高いと健康に良くないと聞いたことがありますよね。血糖値が高い状態が持続するのが糖尿病で、その状態が長く続くと、失明、腎機能の低下、足の壊疽といった合併症を惹き起こします。そして、足や腕を切断したり、人工透析を受けなければならなくなったりします。このような症状が出ないようにするために人体はブドウ糖を血中から捨て去り、中性脂肪という形で体内に保存しているんじゃないかと思うんですよね。
ブドウ糖を放置している方が人体にとって好ましくない結果になるから、ブドウ糖から飽和脂肪酸を合成していると考えるのであれば、飽和脂肪酸の摂取が悪だとは思えません。中性脂肪が体に溜まって行くのは、摂り過ぎたブドウ糖から体を守るためであって、飽和脂肪酸の摂り過ぎが原因ではないと思いますよ。
糖質を摂取して血糖値が上がり血管にダメージを与えながら飽和脂肪酸を合成するくらいなら、最初から飽和脂肪酸を摂取した方が良いですよね。飽和脂肪酸もクエン酸回路に入り、エネルギーが取り出されますから、ブドウ糖だけがエネルギー源ではありません。だから、糖質が含まれている食品を必ず食べる必要はなく、脂質が含まれている食品を食べていればエネルギー不足になりません。
人体にとっては、ブドウ糖のままより飽和脂肪酸にしてから体内に蓄える方が好都合だから、脂肪酸合成という仕組みが備わっているのでしょう。